357書き物。ある家庭の事情としては。

「ふんふんふ~ん♪」

鼻歌まじりに洗濯物を干していく。

かなり家を空けていたので、それなりの量だが、幸い庭は広い上に、
ザナラーンの気候だと、晴れか、どしゃ降りか。今日は晴れだから問題ない。
潮風も吹くから、ちゃんと乾くだろう。

二日酔いの頭で、とりあえず何か仕事が残ってるかな?と考える。

しかし、こんな主婦業をしているのを、「天魔の魔女」とか自分を呼んでいるヤツラが見れば、さぞ驚くだろう。
「ぷっ!くくく。あはは。」
つい想像してわらってしまう。

まさに自分の職業は、主婦なのだから。

レティシアは洗濯物を干し終え、掃除をし、作り置きの料理を温めて遅めの昼食をとると。
「少し寝るか。」









「あ、かあさん?」

「ん・・・?トーラ?」

長男、ナトゥーラ。

「ただいま。」と答える息子に、「おかえり。」
どっちがただいまなのか、ちょっと微妙だが。
夕暮れになり、帰ってきたリムサ・ロミンサまでの定期便の船乗りをしている息子。
「父さんは?」
「さあ?今日はよらなかったから。」
「そう、んじゃ手伝いにでも行こうかしら。」
「大丈夫じゃないかなあ?」
「なんで?」
「最近また一人雇ったみたいだし。」
「どうせ女の子でしょ?」
「どうだったかな?」
「まあ、いいわ。それじゃあ、しばらくゆっくりしておくか。」
「いつもゆっくりだろ?」
「バカタレ。こう見えても母さんはハードな所で活躍しているのだ。」
「そんな話、いっつも言ってくれないじゃないか。」
息子は冒険者みたいな、そういう荒事はさせたくないと、夫と二人で決めたのだ。
ヘタにそんな話をすれば、冒険者になりたがる・・・。
「まあ、いいわ。あんたにも言っとかなければね。」
「何を?」
「いや、マユがね・・・。結婚までこぎつけたもしれない。」
「え?」
「まだわからない・・・けど、たぶん。」
「そりゃいい話だね!」
「そういうあんたは?」
「それがねえ、リムサ・ロミンサにいるんだよ・・。」
「ほう。で?」
「まだ2,3回くらいしか話してない・・・。」
「ダメじゃん。つれて来いよ。」
「え・・・。」
どうにも、この息子は・・・・・。
「さて、どうしようかなあ・・。」
「じゃあ、コンクエやろう、かあさん。」

(コンクエストとは、まあ、この世界でのチェスみたいなもの。)

「ほう、あたしにまたしても挑戦するか。」
「今回は負けない秘策がある。」
「どれどれ。」
盤に駒を配置していく。






10戦10勝を果たした魔女がワインを取り出した頃。
「ただいま。」
いかつい丸刈りの男が。
「おっかえりーサンドロ!マユが結婚するかもよー!」
「おかえり、父さん。」

負けたペナルティで洗濯物の片づけをしながら、ナトゥーラ。
「な。・・・。」
手には、余った食材や料理が入った担ぎかごが・・。
ぽろり・・・。
「おっと。」
レティシアが受け止める。今晩の食事だ。大事にしなければ。
「な・・・。」
あいかわらず声がでない。
「んー、クセのある坊主だけど・・・まあ、悪くはないかな。」
「知ってるのか!!!」
「知ってるけど・・どこまでかは、ね。ただ、あたしと同じアラミゴ人。くらいかなあ?」
「マユ・・・。オレのマユがああああああ!!!!!ゆるさねえ!!!!」
ドン!と壁を叩いて、吼える大男。
「うるせえよ、てめえ。」と蹴りが入る。
蹴りに悶絶しつつ、
「その坊主には決闘を申し付けるっ!!!!!」
「だから、るっせぇ。」
さらに蹴りが入る。近頃習得した、モンクの技、双龍脚。
斧使い、フライングマイスターとまで呼ばれた男はなす術も無い。
くたっ、と崩れ落ちながら・・。
「お前・・。最近容赦ないな・・・・。」
「可愛い娘のためよ。文句ある?」
「ありません・・・・・。」

ドサ。


家庭内のヒエラルキーは変わらない。


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久しぶりに読んだら父ちゃんがまた酷い事に;;
Bob Dalus (Hyperion) 2012年10月05日 10:29

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>ぼびー、いらはい。おひさ?w
ええ、この前の家庭編でも「殴り倒してでも」的な展開でしたがw
見事に蹴り殺されてますなあw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年10月05日 10:34

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