301書き物。少年と少女の始点。8

海辺の酒場「溺れた海豚亭」

そのカウンターにて。

「なァ?どうやったらこうなるンだ?」
長い黒髪。控えめに観ても美少女で通るだろう。
ただ、見た目に反して、言葉使いがとても悪い。

そして。

目の前のプディングにもう一度、目を落とす。
少女の瞳は左右で色が違う「オッドアイ」
左の金色と右の黒色。
ただ、少女の質問は、少なからず賞賛とは言いがたい、のか。

味、としては問題なく美味しい。それは間違いない。
ただ・・。

「なんでこンなサイズなんだよ?」
少女は、2人前は軽く食べているはずだが、まだ半分にも達していない。
ちょっとしたバケツみたいなサイズのプディング。

横では、このスイーツを驕った少年が、声を殺して笑い転げている・・。

「あー。特製、つっただろ?」ヒゲの主人。
「こういう意味かヨ!」黒髪の少女は非難ごうごうだ。
「お皿に移すのが大変なの。食べきってね。」
製作者、エレゼンの女性ウルスリ。

うんざり顔の黒髪の少女は恨みがましくカウンターの面々を睨みつける。

「おい!お前!半分くらいは食えよ!」
隣にいる少年に、これでもか!というサイズのプディングを押し付ける。
「あ、おれは・・甘いの苦手なんだ・・。」クセ毛を押さえながら、こちらもウンザリ顔。
「なんだァ!それはあッ!」
皿に取り分けたプディングを少年の顔に押し付ける。

「もったいなーい。」製作者であるところの女性、ウルスリは冷めた目で非難を。

プディングまみれになった顔で、なんとも情けない表情の少年。

「そンじゃ、残りはその坊主にあげて。」
「おやおや。」手厳しいね、と付け加えるヒゲの主人。
「ミルクたっぷりなのに。」
「何が言いたイ?」
「そのまんま、だね。」黒髪の少女の胸元に目をやるヒゲ。

「イッペン、死んでみる?」金色の瞳に殺気が灯る。







「あ・・。もう朝か・・。」
明け方、といってもグリダニアの朝は遅い。
枕から顔を引き剥がす。

少女の朝は、かなり遅い。

枕に染みがついているが・・・。
口元を拭う。
「う。」
少なくとも涙ではなかったよう・・・。

「これはこれで、へこむんだけど・・。」
目元をこすり、起き上がる。

とりあえずは、湯浴みだろうか。
水の豊富なこの街では、宿の一室にも沐浴できる場所がついている。

「贅沢だよねー・・。」
ウルダハならば、身体を拭くくらいしかできない。

ここでパールから。
「マユ、起きた?」
「え、母さん?」
「あの夕べの話。」
「あ、あれ。何かわかったの?」
寝台からもそもそとシーツをのけて、ブレスレットのパールを握り締める。
「わかったんだけど・・・。あの子、スゴイっちゃすごいわね。」
「はい?」
「帝国の将軍とやりあったんだって。」
「はいいいい???」
「で、一緒に居たあの娘が移動術式でリムサまで飛んだみたい。」
「はあああいいいいい????」
「どういう経緯で同行したのか、まではわからないんだけど。」
「なんだ、それ・・。」
「たぶん、だけどね。現地で偶然じゃないかな?」
「もう、驚くのにつかれてきたわ・・。」
「まあ、そうね・・。今日はゆっくりしておけば?」
「うー。」
「そうそう。ちなみに彼は大事ないみたいよ。夕べ、バデロンの店でプリンの山に埋もれたみたい。」
「はぁ?」
「ウルスリがえらく怒ってたけどね。」
「もう、意味が・・・・・とりあえず、身体洗ってくる・・。」



「いろんな意味で成長してるといいんだけどね。」母は娘を案じるが。

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