130書き物。幕間。

グリダニアのカフェ、カーラインカフェは夜でも営業している。
冒険者には、昼も夜も無いのだからある意味当然とも言える。
なにせ、冒険者ギルドも兼任しているのだから。

「レティ、むぐ。いっつもありえ、んぐ。ないし!」
栗色の髪を短く刈っていた少女は、最近は気になりだしたのだろうか?伸ばし始めている。
「スーゥ?食べるか喋るか、どっちかにしたら?」とはグレイの長い髪を最近は後ろで束ねている少女。


鬼哭隊。グリダニアの自警団。その隊長の娘、スウェシーナと、とある?事情で知り合った少女、レティシア。
二人は歳も近いこともあり、意気投合したのだが、鍛錬の時だけはライバルである。

「まあまあ、二人とも。スープができましたよ。」と、エレゼンの少女。

「ミュー、レティってどうよ?」と。
「ええと?それってどういう意味ですか?」と困惑する少女は、
彼女達より少し年下ではあるものの、看板娘としてカフェに貢献してはいるのだが。
いかんせん、この二人には、なんとも頭が上がらない。

「ミュー、スゥがあたしに勝てないからって、ヒガんでるだけなの。気にしちゃだめよ。」
「そうなんですか?」と首をかしげ。
「うっわ、ムカつく!」と握りこぶし。
「勝ってから言うならね。」と挑戦的。

火花が散る卓から、大急ぎで避難してきた少女は「次のオーダー、はいってましたっけ?」と。
「いいや、今ので終わり、待ちだな。」の声に・・・。「うわー・・。」
「ところで・・。」と少し沈んだ声で、「ウルスリの行方、分かりましたか?」と。
「いや、聞いてないな。冒険者にも聞いてはいるんだがな。」とキッチンから。
「そう・・・。」
「まあ、そう心配するな。」と慰めの声がかかるが聞いてはいない様子。

船でウルダハまで行く、とは聞いたが、どうにも安易な発想らしく、事故も絶えない航海に従妹が行ったらしい。
叔父と叔母も行方が知れない。暗い顔では看板娘としては失格だが見られない今なら許されるだろう。

「おーい!ミューヌちゃーん!」常連の冒険者が呼びかける。
「はーい!」


「なあ、スゥ。」
「なによ?」
「あのね。もしかしたら。ね。」
「なに?」
「その。ウルスリの居場所だけどさ。」
「その話題はヤメとこう?」
「いや、もしかしたら、あたし、分かるかもしれない。」
「ええええっっ!!」叫ぶ。
「声でかいっての!!!」と口どころか顔面をスープの皿にねじ込む。
「ぶびゃびゃびゃあ!!!」
「騒ぐなあ!!!」

「あの・・。レティさんも相当すごいですよ・・・?」とミューヌ。
「あれ?そう?」と真顔で答えるレティシア。
「・・・・・・・・。」完全に沈黙しているスウェシーナ。スープ皿で溺れているのかもしれない。栗色の髪を押さえつけながら。

「や、そのさ。ミュー。まあ、あんまり期待させるとナンだから。今度分かったら、ちゃんと言うからさ。」と、珍しく歯切れの悪い答え。
「はい?」なんの事だかわからないエレゼンの少女。
「ぶくぶくぶくぶく・・・・。」とは・・・・。

あ。

栗色の髪から手をどけると。
「コロス気かぁ!」と意外と元気そう。具を前髪に絡ませつつ。しっかり口には鶏肉が入ってる。
「元気じゃん。」
「あの、タオル持ってきますね・・。」

「で、なによ?」と、うろんげな目つきで鶏肉を飲み込む友人。
「つぎのお仕事でね、ちょうどその辺に居る海賊を〆てこいって、聞いているの。もしかしたら、情報を持ってるかも。ってこと。」
「それなら!」
「だーかーらー。まだ分からないって言ってるでしょ?今、ミューに言えば、期待させてまたガッカリ、てことになるから。」
「うー、そうね・・・。叔父さん達は?」
「未確認だけど・・。船が座礁してる、って情報があるから正直どうなんだかわからないわ。」
「そっか・・。」
「あ、一応いまの情報は誰にも言っちゃダメよ?あたしも固く口止めされてるんだから。」
「レティ、あなた、何やってるの?」
「ナイショ。」




二日後、海賊船強襲作戦で、確かにウルスリを見た気がしたけど・・
一瞬の事だったから、黙っておこう。違っていたら、それこそ悲惨だ・・。

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