1010外伝2 バルケッタ。

「えー・・・どうしよう・・?」
今朝は、なんだか気持ちが落ち着かない。
桃色の髪のミコッテは、とりあえず顔を洗いに・・・。


「えー・・・?どうしよう!」
今朝は、このトンデモな書類が一番上に乗っているのを見て・・
赤毛のヒューランは・・・とりあえず、見なかったことに・・してしまいたい。



ユキネの務める「旅行店」とは、冒険者含め、主に一般客を引き連れて、観光名所を巡る旅の斡旋役。
自前で大きな船を持つわけでもなく、チョコボを大量に飼育もしていない(仮にしていても、一般人に乗りこなせるはずもないが)
要するに「橋渡し」のサービス業である。
こんな業種が成り立つようになったのも、かのマンダヴィル氏の「遊興施設」が有効に機能することが判明したからだが・・。
とある依頼で、チャーター船を海賊に襲わせる、なんてまさしくトンデモな企画に無理やり参加&チーフ(責任を取るだけ)を任され・・。
その後、大富豪にヘッドハンティングまでされて。
「あーあ。あと2日・・かあ。」
そう、期日は「3日だ」と言われたものの。
まあ、なんだ。何はともあれ、出社はしないといけない。
なんだか、上司のファットチョコボと顔を会わす事は確実だが、あのツラを見ればいっそ決断はし易いのかもしれない。
ともかく、シャツに袖を通す・・・


「マジですか?」
レイ・ローウェルは、目の前の書類を見ながら・・。
独りごちる。
内容は。

「明後日より、モードゥナのドマ難民キャンプに資材を搬送する。クルザスのオルシュファン卿には話が通ってるので、とりあえずは人手を集めろ。」byマルス・ローウェル

はふ・・
「コレって、搬送はエリス先輩だよね・・?私は手配だけでいいんだよね・・?」
ただ・・。
問題はこの時期だ。
なにせ、つい先月あたりに蛮神がどうとかで、ややこしかった。
手練の冒険者ならともかく、駆け出しに毛の生えた連中じゃまずムリだろう。
「経費・・・どれくらい・・だろーなー・・・・」
クチから、シャボン玉みたいな泡が出てきて、割れたら解決。とはいかないよね・・

はふ・・・



「社長?どちらに?」
濃いグレーの髪の筆頭秘書。
「いや、まあ、頼まれごと、だよ。」
「ならば、私も。」
「いや。個人的なコトだ。少し打ち合わせ、というかな。」
「社用ですか?」
「個人的、と言ったよ。」
「分かりました。領収書は結構です。」 それでは。と、社内に戻っていく。

・・・「あ。社用にしとけば・・・狙ったな・・・せんちゃん・・・」

マルスはリムサ・ロミンサの街を特にアテもなく歩いて・・
「やあ。」と手を振る。
「ああ。」と返してくる女性。

公園の縁石に腰を落としているグレイの髪の女性は「悪いわね。」と、フルーツジュースの入った冷えたマグを。
「いいえ。でも、なんですか?」受け取り、冷たっ!と尻尾までピクっとしつつ・・
「まあ、なんだ。わがままっ子の、わがままを聞いてやりたくってね。」自身は、小さめなグラスに・・おそらくラムだろう。
「ほう。貴女らしいな。」「だろう?」
で。
「やっぱり、あいつか?」
切り出したのは社長。
「うん。ま、あたしが発端な「家」のコトだしね。」
魔女は涼やかに。
「因縁浅からないやつだけど・・まさかね。」
「ほんと。」

「婚儀の式をしてみたい、だなんてね。」二人揃って。

暗部に籍をおいて、なおかつ「抹殺」されたハズの娘。
本当なら、叶うはずもないが・・。

「しょうがないか。」「ああ。しょーがないね。てか、精一杯もてなしてやろうじゃないか?」
「・・・貴女にそう言われてしまったら、もうどうしようもない。頑張らせてもらうとしよう。」
「さっすが、しゃっちょー!よし、このままバデロンとこに行こうぜ!」「いや、待って。まだ業務がてんこ盛り・・」「気にすんな!」「・・・・(この人災め・・)」



森の奥。
「おい、クソ坊主。」
「なんだよ、黒。」
「なんでもない・・。」
「はあ?意味わかんねえ。」青年は居間に。

書簡と一緒に届いたのは「服」
それも、特別なものでは無い・・むしろ地味な色合い。
だが・・・
東方の着物しか着たことがないので、どうやって着ればいいのかがわからない。
黒雪は、誰かに着方を聞きたいが・・・男に聞いてもムダだと、今更ながらに思いついて・・

「どーしろってー・・・?」


「よっし。後は午後の事務整理だけ。」
頬を、ぴしゃん!と叩いて事務室から出ると・・・
ファット・チョコボ・・いや、ルガディンの上司、バルバ。
「あ。今、事務終わったんで、お昼休憩に・・」ユキネは、愛想笑いを浮かべながら、出来る限り流れるように通りすぎようと・・
「ああ。待ち給え。ほら。例の。パイプは繋げれた?」尊大な態度。
「え?(ソコか・・)」
「ファルベ商会からの件。おそらく、君では拙いだろうから、俺が直接行こうと思っているんだ。で?」
(はぁ?で? だったら、自分で独断で行けよ、取ってこいよ商談。)
「あはは、まだ、なんとも・・。」
「やっぱり、君ではまだまだ頼りないねユキネ君。俺がちゃんと手本を見せてやるから、君もついてくるといい。では、またあとで。」

・・・ホンキで転職しようかなあ・・。
事務所から出てすぐ・・

「あっ!」
誰かにぶつかってしまった。
少し物思いに耽っていたせいかもしれない。
「すみません!」
が、相手は。
「いえ。大丈夫です。貴女こそ大丈夫ですか?」
声をかけてきたのは、黒にも見えるグレイの髪のミコッテの女性。
「あ。はい!」
(もしかして・・この人・・アリティア産業の・・)

「私の顔に何か?」小首をかしげるミコッテの女性。サマースーツを着こなし、いかにもデキる女性だ。
ううん!
シャツにシワが無いかと、一瞬視線を落としてから。
「もしかして、その・・。アリティア産業の、セネリオ様でしょうか?」

「はい。ご存知でしたか。様、と呼ばれるのは面映いです。ユキネ様。」
(え!?)
「あの・・?」
「はい。貴女のご活躍は、当社にも耳に届いております。もし、よろしければ食事がてら、歓談などいかがですか?」
にっこり笑顔の「デキる」女性からの申し出に断る理由もない。もしかすれば・・

「では、こちらに。」
海を見渡せるテラスへ。



「あー。エリス先輩!聞いてくれてます?」
「そりゃ、聞いてるよ。」
「その・・」
「アッチ方面はね、陸路だとグリダニア経由が近いんだよ?だから、人員はそっちで確保って話でしょ?」
「そうなんですけどお・・」
「もう・・レイ。今更泣き言いってないで、やることやんなさいよ。愚痴は後で聞いてあげるから。」
「はい・・。」

やれやれ。この後輩は手を焼かせてくれるし、突拍子も無いことで驚かせてくれるし。
エリスは、とりあえず「臨時」ということで、桃色の髪の青年を資材搬送隊に入れて送り出した。
「えー。僕今度はどこなの?」
「きれいなトコ。」
「やった!」

うん。問題はない。
エリスは、書類の整理に手を付ける。



館の中。
「アドルフォ?」
老執事に。
「はい。」
「彼女はどうするだろうね?」
「私には、到底わかりかねます。」
「そうか。」
「申し訳ございません。」
「気にするな。戯れだ。許せ。」
「とんでもございません、クォ様。」
「・・・」

(それにしても、いい人材が出揃って来ているな。幕開けも近い、ということか。)
漆黒に金色の双眸のミコッテの青年。
「さて。イシュガルドの愚民共。お前たちが空を駆ける英雄でいられるのは、一体何時までかな?」

手元には、書簡。
内容は・・・・




「おい、バデロン!コイツにやさしいのを一杯だ。」
グレイの髪の少女めいた女性は、向かいに座るミコッテの女性の肩に右手を乗せ。
「もうちょい、いいだろ?」と囁く。
「あの・・。」
すでに、ほろ酔いを通り越して、ふらっと・・
マルス社長は、このままではマズイとは思いながら・・

「せんちゃんが・・きたら・・・」
「大丈夫だって!」
「なにが・・?です?」
「だって、彼女を巻き込むためなんだから、来てもらわないと困る。」
「はぁ?」
「ああ、もし来ないなら、お叱りを受けるのは貴女だけだしね。あたしに損害はない。」
「・・・?」
「自費なんでしょ?」
!!!!
「もう・・・この・・・!」
「お姉さま、かな?」
「人災。」


む。
やはり・・・。
このリストランテの近くに。
ということは。
「魔女」か。
セネリオは、テラスではなく、大きな尖塔の中に居を構える酒場に。
そして、目的の物を見つけ。

「こんにちは。魔女殿。」と腰を折る。
「ああ。座りながらでごめんね。こんにちは。」魔女がにっこり。
「せんちゃん・・・。」社長は顔を突っ伏しながら・・
「いえ、社長。自費!!!ですから!!!問題はありません。もちろん、午後の業務もこなしていただかないと。」
「まあまあ。セネリオさんも。そこまで言わないでほしいな。あたしのお願いで付きあわせたのだし。」
「・・・レティシア殿が、そう仰るのでしたら。」

「あの?」
完全に取り残されたユキネ。

「ああ。申し訳ありません。彼女は、ユキネ・クリス嬢です。」セネリオが紹介を。

「ああ。その。はい。ええっと・・?」
正直、VIPだらけの場に・・。先日の黒猫氏こと、クォ・シュバルツ氏も相当だが、この面々も相当だ。

「ふうん。クォも見る目あるわね。」とは、天魔の魔女。
「あー。私が先にツバつけときたかった・・というか、コッチに乗り換えない?」社長が。
「私的に言えば・・そうですね。金銭的には、クォ氏、面白さで言えば、魔女殿。中間が我が社、でしょうか。」筆頭秘書が締めくくる。

「え?」

いきなり転職?
ちょっとまったーーー!!!!

「あと・・2日。ください。」
とりあえず、それだけは言えた。



「クォの奴も、ほんと。食えないわね。」
「あー。その話は・・まあ、あんたならいいか。」
人災にラムのおかわりを注いで、ため息。バデロンはまたひとつ、幸せの妖精を大釜にぶち込んで。


「あー。せんちゃん?」
「はい?」
「さっきの案件さ。」
「彼女のことですか?」
「どう思う?」
「それを決めるのが社長の仕事でしょう?参考意見なら言わせていただきますが、責任は取りませんので。」
「そりゃそっか。でも、彼女いいよね。」
「どの辺が、ですか?」
「カウル、似合いそう・・」
「はぁ?」


「うーん。どうしよう・・。」
午後の仕事も終わり、後実質1日半。
ユキネは身の振り方を・・・。

黒猫氏のところだと、現状維持にボーナスが出る感じ(休みはほぼ無くなる・・)
魔女のところだと、面白い?のか知らないけど収入は未知数。
産業だと、仕事もアリで、かつあのクソむかつく上司とオサラバ。

「これは・・・」
うん。
決めた。



「あー・・・。」
人員配備に、学校、その他。
正直、しんどい。
レイは、目の下にクマを作りながら、ようやっと寝台で休息を・・・

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