1011外伝2 バルケッタ。揺られるのは?

ん。

う・・・ん。


さして明るくもない日差しが窓を(勝手に)使って

「ごきげんよう。」

と偉そうに言ってくる。

僕は・・・

シーツを目深に被り、なんなんだよ、もう!と、枕を抱きしめながら寝返りをうつ。そして、そのまま惰眠を貪るべく・・・

そうはいかない、のはわかっている。
わかってはいるが、僕の意識は・・・
やはり、揺らぎながら・・・

「っせぇナ。」

木々を飛び回り、囀る小鳥達に文句を。

枕を放り投げ(とはいってもお気に入りなので、ぞんざいにはできない)
シーツをまくり上げる。

まずは・・・顔を洗いに。
洗面器と石鹸。
髪をとかすのに、櫛。
この一揃えを持って、「家」の裏手に。

「おはようございます。フネラーレ。」
銀髪、漆黒のエレゼンの女性が声を。
「あァ。ベッキィ。おはよう。」
寝ぼけながら、僕は。

そもそも、コイツがいなければ、ここまで早起きしなくていいのに。
特に「仕事」があると時には。


今更ながらだけど・・この「給仕モドキ」は、見た目はともかく、面倒ばっかり。
僕の仕事のサポートをすることはほとんど無く、大抵モメ事。

「あのさァ?ベッキィ?」
「はい。」
「今日の、僕ノ仕事・・知っテる?」
「いえ。」
「・・・・手伝う気あル?」
「もちろんですとも。」
「じゃァさ?僕は、この後出ルかラ。厄介事ヲもってくル、ショコラの相手を頼ム。」
「え?」
「そういウ話が進んでるンだ。」
「・・・承りました。」

全く。
面倒な話だ。

さてと・・・

下着だけのままとは、さすがにいくまい。
馴染みの・・いや・・。
黒いチュニックのいつもの装備、ってのもまあ・・いいんだけど。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


結局いつもの黒いチュニック。

「仕事」をするのに、コレ以外はないだろーなー。とは。
ここ最近、ショコラから、アレコレと着せ替え人形よろしく・・・
いや、今は言うまい。

「ショコラのやろー・・。」

愛弓コフィンメイカーと、ダガーを8本。
残りは薬品を2本。

まあ、薬品などに頼ることなど、僕からすればありえないが、保険は必要だ。
それはそれとして・・。

ブーツの紐をしっかり締めて・・・。

あいつの護衛とはね・・。
困った?さて?どうなんだか。



昨日。

「あの・・・フネラーレ?」
銀髪の青年。
「ンだヨ?ボンクラ。」
黒髪の女性はにべもない。
「いや、あの・。」
「さっさと言エ。」
「リムサ・ロミンサに行きたくない?」
にこにこ。
「僕にソレを聞くカ?」
「わああああ。いや、まったまった!弓はナシでお願い!」
「あン?」
そこに。
ドアを開けて、茶色いミコッテ。そして黒い給仕娘。
「あれ?キーさん?」「キーファー様?」
「助かったよ・・・君たち。」銀髪の青年はうなだれながら。


案件。

僕としてはどーでもいいんだが・・
なんだか、面倒?みたいな。
「剣士」のカップルを、リムサ・ロミンサまで連れて行くのに、護衛?だと。
確かに「家」繋がりがあるが・・所属も違えば、・・今回は「イレギュラー」だ。
しかも「しゃっちょー!」か。それに「魔女」
断りきれない、よなー・・・。
なんだか、面倒?じゃなくて、正真正銘の面倒だ。

「ァ?」


と言うわけで、いつもの黒装束。
コフィンメイカーを背負いつつ・・。

なんか・・おかしい。

裏がある?いや・・魔女がらみなら、悔しいけど「相手に損をさせる真似はしない」
このへんは海賊上がりの僕からすれば・・ちょっとわからないけど・・
でも、幾度かの戦いでソレは、わかってるから・・

じゃあ・・。

昼間にも関わらず・・この・・・
ヘンな空気は?
殺気でもない・・。

ま・・いいけど。でもなんだろう?
とりあえず・・
似合わない?衣装の黒髪と、その相方の青年は視認した。
元々「ターゲット」してあるので、確認だけ、っちゃそうなのだけど。
後は付いて行って、邪魔する連中を排除・・(してもいいの?おい?
魔物なら問答無用で排除対象だが、この二人なら手を出すまでもない・・ん?

バカか?こいつら。武装らしきものが一切ない。

ほう・・・

僕に・・ほう。護衛を丸投げ、ね。やってくれるじゃないか?ボンクラ!



「せねっち。あのカップルって、どうやってリムサまで来るんだ?」
「社長。今更ですが・・あの二人に飛空艇の乗船許可なんて、下りるワケ無いじゃないですか。」
「・・・・じゃ、あれか?陸路の海路?」
「ソレ以外にありえないでしょう?」
「移動術式は?」
「・・・・ええと、レイの学校に入学します?」
「え?」
「移動術式は!エーテライトに触れて、認識が必要なんですよ!?おわかり?」
「・・・はい。」
確かに、あの二人はリムサ・ロミンサのエーテライトには触れていない。
「じゃあ・・あの・・。」
「フネラーレ、ですか?」
「うん。」
「彼女はもちろん、飛べますが・・。そもそも、グリダニアのエーテライトにすら感応してない二人ですからね?リムサのエーテライトとか、もう、それ以前の話でしょう?」
「・・・だね。」


(目標を確認・・・)
可愛いわね・・・

仲睦まじい?二人を見て・・・

まテ?おい。
森を出るまでは・・まあ。仕事。いいよ。それはいい。
この後は?


「おイこら!キーファー!」
パールを握りしめる。あのボンクラめ・・・
「僕の仕事は確かニ、この二人ヲ連れて行くコトだけどネ!まさか徒歩とハ聞いテなかッタぞ!」
「あ、いや。そのフネラーレ?怒ってます?」
オドオドとした声に・・
「ッたりまエだッ!!この、ボンクラっ!!帰ったラ、てンめえ、裁縫ギルドにあル、針山の見本みたいにしテやル。」
「・・・・すみません・・・」
ちっ

「あー。お前ラ?ホンキで武装ナシか?」

「やー・・その・・。フネラーレさん。ええと。はい。短刀くらいの護身用はありますけど。」
少し抜けたような青年。
連れ添いの黒髪の女性はなんだか着慣れない服装らしく(そりゃ、そうだろう。あのサムライ?からすれば、町娘の格好なんて。仮に武装しててもロクに動けないのは明らかだ。)
「わかッタ。」
あー・・。ダルい。
そろそろ、森を抜けるが・・その前に野宿にするべきか、少し押してキャンプまで行くか。
湿気が満ちてくる・・・。
あんまし好きじゃないんだけどね。

二人組に聞いておくか。
「この先に沼地、ンでキャンプ・トランキルがあル。ソコで一泊?まだ陽が高いかラ、ザナラーンに進ンでから野宿?」
「黒、どーする?」「野宿させる気?」
(あー・・はいはい・・)
「じゃァ、トランキルだネ。ちょっと待ってナ。話付けてくル。」


面倒な奴らだ・・チョコボでも借りてくるか・・。

目についたエレゼンの青年?おっさん。
「ランドゥネル。」
「おお、嬢ちゃん。久しぶりじゃねえか。どうかしたのかい?」
「まァ、厄介事だヨ。」
「それ以外は聞いたことないぜ?」
「そりゃ便利だナ。」
「で?」
「実はネ・・」
「ああ、了解。宿は任せとけ。ただ・・チョコボはわからんな。ポーターは国内に限るからな・・。ザナラーンまで行くならレンタルできないかもな。」
「そっカ。」

まあ、仕方ない。突然だし、ましてや「厄介事」でもない。彼には感謝こそすれ、文句も出ないが・・

「えー?ココ?ジメジメしてるー!」「まあまあ、黒。此処はそういう場所だし仕方ないよ。」
「うるせー!ミッター、何様だ?」「ああ、ソコ言うのかよ・・・」「・・・ふん。」

こいつらもうざいな・・。
もうちょいと大人しくしてればいいんだけど・・・。
!?
そうだ。
(なァ、魔女?)


先ほどの青年(おっさん)に・・・
「おい、いいのかい?」
「おもしろイだロ?」
「まあ・・な。が、キャンプの守衛をやってる身からすりゃあ、ちっとばっかし気が引ける。」
「そう言うナって。魔女サンは喜ンで来るらしいからサ。」
「ち、迷惑来訪者のご来場、か。仕方ねえな・・。」
「頼むゼ?オッサン。」
「うるさい。お兄さんと呼べ。」
「へいへい。」


さーてと・・・この後は。

「なァ。とりあえずは安宿だけどネ。荷物の整理だケはしっかりナ?」
笑いを堪えるのが大変だが・・このくらいは許してもらおう。

「ああ。何か問題があるのか?」青年が、護身用の短刀の確かめる。
「どーなってんだ?」黒髪の女性が突っかかる。

「僕がついてるンだ。護衛は任せておきなヨ。」と、ここでやっと堪えた笑い声を出せる。


(葬儀屋?)パールから。
(あー、助かル。魔女。)
(確かに愉快だけどさー?あたしに凄くマイナスじゃない?)
(面白いノ、好きなンだロ?)
(まあね。)
(なラ、楽シめば?)
(・・・被害総額はできるだけ抑えるけど・・・請求書は「アリティア産業」に廻しておくわよ。)
(ソコまで、僕はしらないヨ。)
(そりゃ、そっか。じゃあ、始めるわよ!)
(早くなイ?)
(そのくらいがいい。)と同時に爆音。

「はぁ!?」
我ながら、マヌケな声を・・
なんだ?僕の指示待ちって話だったのに・・・あんの野郎!いや、魔女め!

まずは・・
「おイ!なんだか、怪しい!」最初のセリフだけは言えた・・・けど。

「なんだ?」黒髪の女性。
「黒、様子を見よう。」青年が女性の肩をつかむ。
いい感じだ。
なんだか、海賊時代を思い出す。

「あっちノオッサンのトコに行け!」エレゼンの青年?を指さす。
楽しめそうだ。
(やるじゃなイ?魔女。)パールに。
(早い方がいいんでしょ?寝てるヒマあるなら、走る走る!)
(いいネ。)

見た方向には・・。
二人がエレゼンの指示に従って、チョコボ屋に向かうのが見てとれる。
計画どおり、か。

マトモに商談すればダメ。と、くれば。
非常事態。コレならチョコボも無料で開放される。
あとは・・乗り手の腕次第だが・・あの二人でどうにかなってるのだろうか?
「うーん?」
僕としては・・ここに預けてある自分のチョコボに乗って追いかけるだけ、なんだけど・・
あいつら、大丈夫?

の前に。

ダガーを投げる。

それを弾く音。

「うン?誰かナ?」
ターゲットにはない・・・新たにターゲットする。
「お前こそ誰だ?」
「あァ。僕を知らないンだ?」
「誰だ?いきなり短剣を投げつけやがって。」

キャンプを少し出てから。

「挨拶、だヨ。」
「物騒だな。」
「世知辛いよネ?」もう一投。
「だな。で?名乗りは無いのかね?」
「聞いたら・・。」
「?」
「生かして帰せないンだヨ?それでモ聞きたイ?」
「楽しくない話題だな。」
「なラ、さっさとお帰リ。」
「そうもしたいが。なかなかね。」男は
「・・・」
ダガーではなく、弓を構え、速射する。
(死ネ。)

「おわっ!すげえ!!!死ねる!」男は回避したようだが・・

ち。

「いや、済まない!俺は「魔女」に雇われたんだ。」
は?
「あんたの足止めをしろって。だから、命のやりとりはゴメンだし、あんたの名前も、俺の名前もゴメンだ。これで契約は終了だから、キャンプに帰る。
全く。あんたみたいなの相手にするなら、
もっと弾んでくれてもいいもんだが・・。いや、気にしないでくれ。もし、パーティで出会ったら、よろしく頼むぜ。じゃあな。」
男は声だけを残し、去っていく。

なんだ、それ?

ん?

護衛、ね・・
あれか。あいつめ・・。
グレイの髪の女性を・・・

ナイトノッカーめ。

ただ、予定通り二人をチョコボに乗せることには成功したが・・
夜中のザナラーンを走らせろ、ってか。
僕だって、ザナラーンは不慣れなのに・・・。

パールを取り出し。「おいボンクラ!」

しばし・・

「はい?フネラーレ?」
「死ネ。」
「・・・もう少し、寿命について考えてもいいですか?」

全く、この男は・・
のらりくらりと・・
ただ、額面通りの男ではない・・
が、便利なのは確かだ。

「あのサ。「日程」に、間違いはないノ?」
「ええ。多少の誤差はあるでしょうけど・・」
「アー。今、まさにそノ誤差のまっただ中なンだ?オイ?」
「あはは、現場に居ないから、わかりません。逐次、報告してもらえます?」
「死ネ。」

ダメだ、コイツ。
僕だけだと・・先行したバカカップル・・バカップル?まあいい。の誘導も難しい。
先行された以上、追い抜くのは不可能だし。
そこに。
(先行して飛べよ。)と、パールから思念。
(うっせェ・・ドライ・ボーンだろウ?それ。橋に行きゃイイんだロ!?)
(わかってるじゃん。ガンバレ。)
(死ネ!!!!)

僕はチョコボから降りて・・「よくやった。お帰り。」
沼を抜けたところで。

そして・・思念を込めて。
移動術式。

ドライボーンのエーテライトに。

ああ。魔力を込めた通貨も消費されるが・・・仕方ない。
さすがに此処には自前のチョコボも居ないので、借りる事に。
「経費は・・倍がけしとくか。」

「ブリッジ」と呼ばれるデカイ橋に向かう。もう夕暮も過ぎ、月明かりだけでは心もとない・・
が・・。
あのエレゼンのオッサンなら、ちゃんと根回ししてるだろう。

”国境越えのチョコボを2頭、帰還用に取っておいて”

だから、夜目の効かないチョコボだろうが、手綱が効かないとかじゃなく。
乗せればコッチに向いてくる。

帰巣本能に従って、二人はやってくる。
が・・
寝場所は「大橋」だな、と。お気の毒。

ふん。
この後は本当に面倒だ。
僕は・・
こういう依頼って、合って無い。とおもうんだよ・・

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