933セブンス。少女たちの日常的な・・・。(少し過去、 追憶 2

一日目の、寮での朝を迎えた。
まず鐘が鳴り、時刻を伝えてくれる。うっすらと目を開けると、窓から朝日が目を射し眠気を追いやってくれる。
寝台は上下のある二段式で、自分は下の段に寝ていた。反対側の寝台には、ミコッテの少女姉妹が。
そして、上の寝台には「主席」の少女が寝ているはずだ。
とりあえず、むくりと起き上がり目を擦る。肩まで伸ばした髪は早めにクシを通さないと、なんて思い、洗面台に。

ヴァイオレットは上級クラスの生徒の女子寮住まいになったワケだが、未だその希望は果たせていない。エレゼンの彼女は、漆黒の髪をすきながら、
鏡に映った自分を見る。おそらく、鏡なんて高級品が置いてある寮で暮らせていること自体に、親族達に「ざまあみろ!」と言いたいところだが。
まだまだ、先がある。

「主席」の座。

「早くしなさいよ。でないと、あの二人が洗面所使えないでしょ?」
鏡に映る赤毛の少女はすでに身支度を終えて、教科書の詰まったカバンすら。
後ろから声がかかった。
「あ、ごめん!」
慌てて洗面台から遠ざかる。
だが、その二人は未だに寝台で寝転がっている。あるいはイヤガラセの一環なのだろうか?
そこに。
「さっさと起きろっ!」と二階建ての寝台を蹴り飛ばす委員長。
「みゃあ!」「ひゃう!」と飛び起きて、二人揃って洗面台の取り合いを始める。
「毎朝のことよ。気にしないで。」
などと言われても・・・・
「あ!今日のパンツあれだね!」「うん、可愛いとおもうよー!男子イチコロだね!」
へ?
姉妹のセリフに、未だ顔を洗い、髪をすいただけの自分は確かに下着しか着けていない。
「ぬあっ!」
慌てて制服をバッグから取り出そうとしたものの、先日にこの姉妹に荒らされたおかげでバッグの中身は滅茶苦茶にされており、
やっと見つけた制服はシワだらけになっていた。

溜息混じりに制服を纏うと、双子の姉妹は綺麗なシワのない制服に身を包んで。
「いってくるねー」ねー。」とさっさと出て行ってしまった。
もちろん、委員長は居ない。

はあ。登校二日目にして、こんなハメになるとは。


上履きを履き、廊下を走らないように(寮規則)できるだけ速やかに教室に行く。
しかしながら、未だ慣れない位置なので、他の生徒達に聞くが何とはなしにイヤな視線と「あっち」と無愛想な答えばかり。
やはり・・・どうにも「問題児」として、早くも噂が広まったようだ。
(仕方ないか。)初めから、あんな自己紹介をしたのだ。色々と話題に上るだろう事は計算づくではあった。
しかし、まさかの今朝からとは。少し自分の思惑は甘かったようだ。
とりあえず、昨日案内された方向には向いているので、少し足早に教室に向かう。
そこでベルが鳴り響く。
ドアまでもう一歩、というところ。
「これって・・・」頭の中でたしか「鐘が鳴ると授業開始」と、説明があった。
これに遅れると、確か何らかの懲罰があったはずだ。掃除や、昼食抜きなど。
うなだれる・・・あれだけ派手に登場したのに、いきなりコレか。
しかし。

「おはようございます。」
毅然とした、というよりも悠々自適にドアを開け、朝礼が済んで席に着こうとした生徒達の間を縫って、ミオの隣の自分の席に。
教師は唖然とした顔で、他の生徒も呆然としているのが楽しくなって、つい笑ってしまう。
「私、ヴァイオレット・シール、少し遅れてしまいましたが、懲罰はなんでしょう?」
「い・・いえ・・・まだ二日目なのですし、学内に不案内だったのでしょう?次回からは遅れないように。」かろうじて女性教師が。
(ふう。)なんとかやり過ごせたようだ。やはり「最初の一撃」は効果があったみたい。
そこに
(あんなので、今の自分を過大評価しないことね。)隣から声が。
赤毛の少女を見る。彼女は前を見ながら、教科書を取り出し、教師の解説を待つ。

そんなこんなで、昼食休み。このあと実技もあるらしい。

食堂はなんだかんだで賑わっている。
ほとんどが寮生で、実家から通うのは金持ちの子息だけだ。
その中で、ヴァイオレットは以外にもミオと双子を見つけた。彼女達は離れて座っていたが、明らかに「食堂の定食」らしきものを食べていて。
もちろん、自分も同じものをトレーに乗せて席を探していたところなのだが・・・
「ねえ!君、新入生なんだって?」「ああ!聞いたそれ!いきなり上級クラスだって?」「へー、可愛いんじゃない。」など。男子達が絡んでくる。

どうしたものかと悩む前に、構成を編む。
「え!?」「どうした?」「ちょっと!」「なーに女の子相手に浮ついてるの?こっち来ない?キミ。」

パチ。

少し青白い雷光が少女の周りを駆け巡り。

「そこまでよ!」赤毛の少女が声をあげる。
ミコッテの双子は食事そっちのけでニヤニヤと成り行きを見ていたのだけど。

彼女の構成を理解できたのは、数人程度。同室の3人は当然、他に居た上級クラスの4人ほどか。それと一般クラスで、一人かそこら。

そして、学年主席の少女の一声で、全員が・・ヴァイオレットを含む全員が黙った。
「こっちに来なさい。ヴァイオレット。」
エレゼンの少女を睨みつけ、赤毛の少女は空いている向かいの席に座れ、と指示する。
「ふう。」と一息。赤毛の少女は食べかけの食事に目をやると、冷めかけたスープを一口。
そして、向かいに座った少女に「あなたねえ?」睨みつける。
「私、悪くないから。」
ある意味、傲慢とも取れる少女に「ここは公共の場よ?上級生もいれば、一般生も居る。年も違えば、性別だって違う。あの二人みたいな問題児だって。
貴女もその「問題児」に認定されたも同然なのよ?もう少し、社交性ってものを知りなさい。」
その言葉を最後に、冷め切ったスープを飲み干し、仕上げのサラダを頬張る主席。

次の瞬間、信じられないモノを
モソモソと慣れない味付けの食事を摂りながら、いきなり目の前の委員長が立ち上がり。

「お前ら!」この一言で範囲火炎術式が発動した。
驚いて振り返る。
継いで、氷の範囲術式。
委員長は、単に気弱そうな男子生徒に絡んでいる数人に声を上げただけだった。注意を促す分には十分な音量だった。
だが、その後に一瞬で構成を展開させた術式は、実際に発動した。
「燃えろにゃーん。」「凍れにゃ~ん。」
姉妹が楽しそうに、ことの成り行きを。
「サラ!ウラ!」ミオが叫ぶ。
髪の毛を燃えカスにされ、消火に氷で頭を固められた男子生徒達は慌てて逃げていったが・・
「全く、お前たちは!」怒髪天を衝く勢いのミオは、二人の座る席まで行き、テーブルを叩く。
「なんでにゃーん?」「あの子助けたにゃ~。」全く悪気がない。
「その件に関しては、評価に値します。が。学院内での術式行使は、授業、試験以外では禁止されています。・・・委員長権限で、二人の本日の夕食を不可とします。」
「え~」え~」泣きそうな二人。
「今のうちに食べておくか、部屋に持ち込みなさい。そのくらいは見逃してあげるから。」

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