「ここか。」
黒髪のミコッテ。
「はい。CEO」傍らには右腕と信ずるグレーの髪のミコッテ。
「殺風景だなあ。」心底、思うがあまり言葉に出すものではない。ただ。
わかっちゃいるけど、どうも・・・
東ザナラーン郊外。
少し先には高級別荘地があるとはいえ、この殺風景振りには予想外?だったと言わざるを得ない。
まあ、言い換えれば、だからこその立地と。
そこに。
「ああ、いい場所じゃないか。」ヒゲの機工士、シドは悠長に景色を眺めている。
一行はザナラーン郊外にて、テーマパークの敷地の視察に。
メンバーとしては、出資兼工事として「アリティア」グループ。そして「ガーロンドアイアンワークス」そしてウルダハの商業の要として。砂蠍衆。
ついでに、もうひと組。にこにことした少女然とした女性と、ララフェルの少女とその祖父。
「シド殿?ここに敷地を儲ける予定ではあるのだが。どの程度を所望される?」グレーの髪のミコッテの騎士が問う。
「んー、そうさな。逆に問うぜ?「ドコまでやる気」なんだ?」
意地悪な表情でCEOの右腕をからかうように。
「この!」
「待て。セネリオ。せっかくお膳立てをしてくれた皆様に恥をかかせるな。控えろ。」
「・・・はい。申し訳ありません。」
「シド殿、部下の躾がなっていなかった無礼は私が代わってお詫び申し上げる。」頭を下げるCEO
「あー、だーいじょうぶだって!うちの親方、そのへんはフランクだしー。」
黒髪の半ばを紫に染めたミコッテの女性、カレン。
「ああ。まあ。その、なんだ。こいつの言うとおり、と認めるのも癪だが、その通りだ。気にしないでくれ。そして、ドコまでなんだ?」
ヒゲの機工士は真顔で。
「それには、わら・・いえ、わたしも聞いてみたいのです・・」桃色の髪を揺らし、ララフェルの少女が尋ねて。
「へい・・や、リリラお嬢・・や、リリラ。おねだりも大概にすべき、ですぞ・・いや、しなさい。」
「爺・・うん。」
ぱんぱん。
手を打ち鳴らす音。
「はいはい、そのへんでね。」
グレイの髪の少女のような、清楚さと、妖艶なアヤカシのような女性が。
「な、レティシア殿?」マルスCEOとセネリオ筆頭秘書、そして発言すらできなかったイドゥン。
「おや?もうタネばらしかい?」お気楽な機工士とそのお付のミコッテ「あらまあ。」
「この場所を選んだ理由はご承知だと思ったんだけど?」と悪びれない魔女。
「確かに、な。」ララフェルの王族、ナナモ・ウル・ナモ女王は、その威厳を厳かに。
「そなたの功績は十分承知しておる。砂蠍衆とのパイプも、わらわを通して敵味方の振り分けをしておったのじゃろ?」
「おっしゃるとおり。賢明なる陛下。」
「よさぬか。今はわらわは「リリラ」なる一市井民だ。レティシア殿。」
「さてと。」束ねた髪をゆらし、そっと手を添えながら・・・「ここなら、誰にも聞かれることなく相談もできれば、計画もたてれるでしょ。」
「まったくだな。」シドがヒゲをしごきながら頷く。
「ですね~」カレンものんきに。
「では、本題、でいいのかな?」CEOがまずは・・・
「ですね。社長。」秘書が書類を取り出す。
「拝聴させて頂こう。」ララフェルの女王。
「・・・。」黙って頷く元近衛騎士。
「ひとつ、砂蠍衆からの援助は無いが、この土地に限り自由にして良い、とのこと。ふたつ・・・」
幾つかの条件と交換に、正式にこの周辺の土地を「借りる」という名目で売上の2割を差し出すという事でケリは着いたのだ。
「それでは、改めて紹介させていただこう。」マルスは連れてきたエレゼンの女性を引っ張り出すと
「イドゥン・ローウェルだ。この度の企画の責任者として、新会社の社長として任命した。どうか、皆様方、盛り立ててあげてほしい。」
耳の先まで真っ赤にしながらエレゼンの女性はペコリと頭を下げる。「・・・しく・・します。」
(ふふ、かわいいなあ)魔女がにこやかに。
「そして・・・」CEOが一枚のカードを取り出す。
そこには・・・「リリラ」と名前が記入してあり、マルスのサインと「Free!」の字が。
「これをどうぞ。リリラちゃん。」女王陛下に差し出す。
シリアルナンバーはもちろん「0001」だ。
「きゃああああああああ!!!!!」驚き、はしゃぎまくる彼女を、爺が抑えるが、効き目は全く効果がない。
「さて、シド殿。早速だが・・・・」
「ああ。」
二人で具体的なプランをもう一度確認しあう。
「じゃ、あたしはこのへんで、ね。」魔女が微笑みながら移動術式を・・・
「ああ、ご苦労様だった。」「元気でね~」「でわな!」「次はまたどこかで飲もう!」「もう!社長!あ、では!」「お疲れ様でした!」
「んー、いい話に落ち着いてよかったわ。ね、ミュー?」
「はい?なんですか?レティさん。」
「もうじき楽しい物ができるわよ?」
「へ?いつですか?」
「あたし達が死ぬ前には楽しめるトコロ。」
「意味深ですね~、では、楽しみに待ってます。」
「うん。」