「壱之太刀から・・五之太刀、陣風。」
全く。
何が「家」からは「死者」扱いなんだか。(この先に本当に死者扱いされるわけだが・・)
イクサル族を屠っていく。
「もうちょっと骨のある相手が欲しいところよね!」
黒髪。東風の「着流し」という着物を少し着崩した女性。
愛刀「雨の村雲」
そこに滴る蛮族の血を振って払い、鞘に収める。
幾つかの名前を持ち、東方随一、とも謂われる名剣を携え、一人で蛮族の集落を襲いに。
理由は明らかにしてもらえなかったが、なんでも「蛮神」関係で「イクサル族を皆殺しにしてきてください。」なんて。あの銀髪の注文はいつも頭に来る。
「できるかってーの。」
実際問題として、たった一人で蛮族の領域に乗り込んで、一人残らずブチ殺せ?できるわけがない。
まずは理由すら明らかにせずに、そんな事も。ついでに言えば、蛮族とはいえ、赤子すら手にかけろと言うわけだ。冗談ではない。
「不笑(笑わず)」
目の前に。
「我らが!”集落を#Q”%攻め入った!YSニンゲン!」
イクサル族の中でも名のある一人であろう、彼は高らかに宣言し。
「零之太刀、回天。」
銀光が。
名乗りすら許さず、刃を鞘に収める黒雪。
(今夜の夕餉はなんだろうな・・)双子の妹と、何故かはわからない理由で連れ帰った子供。
そんな取り留めのない話題というか・・・なんということもない、のか、あるのか?
ちん。
鞘走る刃を収める音。
向かってくる相手に。
抜刀術と剣術。奥義を極めたに等しい彼女の天賦の才。
「不知(しらず)」感情は押し殺し、任務?をこなす。
蛮神の顕現、ね・・そっちは、あのいけ好かない面々が行ってるんだっけか。
こっちはその尻拭いって、ねっ!(やっぱり、ムカついた。)
抜刀。
もはや返り血を浴びる事にどうでもよくなってきた剣士が疾る。
「わ・・・。」
言葉を・・白い髪の妹。
「洗濯、お願いしていい?わたしは沐浴してくる・・・。」べっとりとした黒髪をかきむしりながら。
「・・・うん。」
妹の声に甘えながら・・・
「あー・・・ハクに血を見せたくなかったのになあ・・」
自身にも切り傷がいくつもある。
ただ、返り血の付いた着物で妹には気づかせていない、いや。気付いているだろう。あの子は聡い。その気遣いを悟らせないように気づかないフリをしているだけだ。
このグリダニアに着いてから身につけた術式でとりあえず、傷は(見た目だけでも)癒しておいて。故郷に想いを。
「土魔の里もどうなってるのかしら・・」
自分達の里の近くにあった「忍びの里」が帝国に見つかるのも・・・
「夕霧、如月・・」
親友でもあった二人に想いを馳せる。
自分達姉妹二人だけで密航し、なんとかこの街で居場所を得たわけだが・・
やはり、背が痛い。
いや、重いのか。
背負ったもの、背負わせられて、それを「苦痛」と言い訳してきたもの。
だけど、耐えなければならない。
そうでないと・・・・・
免罪にすらなない。
「やる気出てきたわー!」
頭に桶から水を一気に。頭の芯が冷えるどころか、燃えてくるような意思が出てくる。
「お姉ちゃん?大丈夫?」
白髪の妹が心配そうに。ここは?
寝台で寝かされている。
「もう。時間が経っても出てこないものだから、見に行ったらぶっ倒れてたんだよ?体も冷えすぎてて・・もう!心配させないでよ!」
「そか。ハク。すまない。」
二人の体温を確かめ合う。
「ココかにゃ~ん?」土魔一族に連なるミコッテの少女。如月(キサラギ)は新天地にて。