901セブンス。大団円の裏に・・

「よお。姉ちゃん。今は酒場は貸切だぜ?」
ルガディン、禿頭の海賊は目の前のミコッテの女性に。
「なにかあったの?」
小麦色の肌、金髪のミコッテは「えー?なんで?」と苦い表情。
海賊が言うには「なんでも祝勝会、だそうだ。」
「は?誰の?なんか大物でも落としたの?」怪訝な表情も彼女の魅力かもしれない。
「ああ。聞いたところじゃ、帝国に一泡吹かせたそうだぜ?しかもメンツがトンでもないらしい。かの魔女に、機工士シド、アリティア社長と、
二つ名持ちのVIPのオンパレードらしいからな。」
「シド?」
「ああ。今、工房で艇の修理をしてる連中から聞いたぜ。艇のドテッ腹にデカイ傷があって、その修復だそうだ。
ただ、機関部あたりは「触るな」って言われて、手をつけてないらしいが・・興味本位で見に行ったら、とても自分達じゃイジれるレベルじゃないってな。
コレだけでも「シド」本人だって言う話だ。」
「・・・・ふうん。」
「なあ、姉ちゃん。あぶれた者同士、どっかでメシとかどうだ?」
「わたしを口説くには、少し物足らないわ。悪いけど。情報ありがと。コレはお代よ。」クリスタルを一つ放り投げる。
「つれねえな!姉ちゃん。」ルガディンの男が手を壁につけて行く手を阻む。
「手篭めにでもする?クォが黙ってるかしらね?」
「!?クォ・・だと?お前・・・」
「ああ、名乗るのが遅かったわね。わたしはシックス。もう意味は分かったかしら?」
「・・・・悪かった。今のは忘れてくれ。」
「あら?見た目程でもないのね。」
「勘弁してくれ・・・」
「いいえ。貴重な情報、ありがとね。クォに伝えておくわ。」
「・・いや、勘弁してくれ・・・あの人に睨まれたらこの街で生きていけねえ。頼む。」
「そう。じゃあ、一つ。頼まれ事をよろしく。いい?」
「できる範囲でお願いします。」
「シドを此処に呼んできて。その後は自由にしてくれていいわ。」
「だ・・だから、今は・・魔女達の居る中には・・」
「行け。」一瞬で銃を抜き出すと、ルガディンのこめかみに当てる。
「・・・・・はい。」

酒場は混沌の様相を呈している。まさしく「ウィッチ・ケイオス」そのものかもしれない。
そこかしこで爆笑や、カボチャが転がっていたり、従業員であるはずのエレゼンの女性も一緒に魔女と祝杯を挙げていたり、と。
(まいった・・・)ルガディンの海賊はどうしようもない混沌の中で・・
(アリティアのマルスさんか・・クォさんとは犬猿の仲だしな・・さらに困る・・)
ん?
機工士のルガディンが、多少ノリが悪いのか少し離れた所に。同族のよしみってところでなんとかしてみるか。
コインを一枚、10ギル銅貨。
ピンっと弾いて注意を引く。
向こうも何か飛んできたのでこちらを振り向く。
確か聞いた話だと、このルガディンが「艇」の修理依頼をしたらしいので、報告待ちだったのかもしれない。
静かに近づいてくる彼に「済まない。じつはシド船長に話があるんだ。席を外してこちらまできてもらえないか?」頼んでみる。
「?あんた、工房にいなかったよな?」
「ああ。頼まれ事はこっちもなんだ。シド船長の旧知の人が会いたがっててな。シックス、と言えば通じるはずだ。礼はこれしかできねえ。」先程のクリスタル。
「まあ、言うだけは言ってみるが。シックス、ねえ・・(なんか聞いたことあるな・・!?まさか!)」


「シド親方。じつは・・・」「なんだと!?」

「盛り上がりのところ済まない。俺は少し用事ができた。艇の調子を見に来て欲しいってよ。」
「そうか。命の恩人だからな、いや、恩艇?まあ、しっかりチューニングしてきておくれ。」
「ああ済まないな、魔女殿。」
(ややこしい相手ならいつでも合図を出してくれ。すぐに駆けつける。)
(ああ。すまん。アンタなら気づいてると思ったよ。)
「ビッグス、ウェッジ。まあ、楽しんでおいてくれ。これは俺しか直せないみたいだ。」
「ッス!」「はい!」


「シド・・・」ミコッテの女性は表情を緩める。
「シックス・・・久しぶりだな。」シドも。
「こっちに来てから、行方がわからないって・・・」
「ああ・・あの大戦のおかげで記憶がしばらく無くなってな。教会でお世話になってたよ。お前、今はあの大商人、クォの所に居るんだって?」
「ええ・・・・。」
「お前の人生だ。好きに使えばいいさ。」
「・・・うん。・・・・でね。本題なんだけど。」
「どうした?」
シックスは恋人のように首に腕を回し「コッチに来てくれないかな?」その手には銃。
「条件次第だな。話くらいは聞くとしよう。それと。弾の入ってない銃で脅しをかけても意味ないぞ?」
「!?」
「コッキングすらしてないだろ?それに肩にかかった重さ。銃に一発でも弾があればもう少し重い。ちがうか?」
「・・・・・さすがね・・シド。確かにこの銃はフェイクよ?でも。」腰に手を当てる。
「こっちはちゃんと装填してるからね。」シックスが微笑む。
「ああ。俺は一発しか入れてないけどな。」リボルバーの銃を彼女の後頭部に突きつけ。
「6分の1ね。わたしの事、分かってる。」ダイスを投げる。出目は・・・3
カチリ。撃鉄が引かれる。
「どうする?」
「こうする。」自分でシドの銃のトリガーを引く。
カチン。
「ふふ。わたしの勝ち。来てもらうわ。」
「ああ。」

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