ん。
夜空を見上げる。
「にゃん。」
最近飼い始めたクァールの子。
首に鈴が付けてあり、ちりんちりん、と音をたてながらあっちこっちをイタズラするために走り回る。
が、夜になると自身のもとに寄り添うのが好きらしく、座っていれば膝元に、寝ていれば枕元に寄り添って来る。
黒雪は、この子に「ヨル」と名づけ、独りの夜も寂しくないよ、と。
今宵は。
いい月だ。
「魔女の家」の裏庭。小川のせせらぎに。
そう、あの夜。妹が嫁ぐ決意を話して。
自分が舞い。
妹が吟じた歌が、雪月花。
いい感性だな。
私の妹だけの事はある。
とけ、落ち、散る。
ゆえに、「今」愛でるのだ。
「私は・・な?」傍らのヨルを撫でる。にゃあん・・
・・・・「月はいいな・・・満ちては欠け、また満ちる。落ちてはまた昇る。」少し欠けた十六夜。
「ヨル、わかる?」頭をなでてやると、にゃぁん!と元気よく。
「よし。私も少し吟じてみるか。白ほどにはうまくないがな。」ヨルを撫でる。にゃぁん。
「花は散り、その散り際を魅せ・・
鳥は舞い、其の様を空から謳う・・・
風は踊り、鳥達の宴を・・・
月は満ち、その姿を皆に魅せる・・・・」
「ふ。柄でもない、か。」
ヨルを抱きしめる。
そこに。
「いい歌だったよ。黒雪。」
後ろから抱きしめられ。
「あ。」
「うん、ありがと。」
抱きしめられた手を抱きしめ返す。
月は恋人達の逢瀬を見守る・・・・・・・