818セブンス。少し先の話・・・昼餉の後のさらに後。

「は?」
待て待て待て。
おかしい。
まず、対戦として真剣勝負。ここまではいい。
人災と対戦するのは初めてではない。かつてコロセウムでやりあった。
その時は不覚を・・・
だが、弟子ともいえる恋人が、かの人災の娘にあっさりと負け、なおかつ「やる?」って挑戦すら受けた。
受けて立たねば、道からは外れる。
が。
「いちにいさんぽん」な、冗談めいた開始の合図を勝手に。
誰が自分の都合で勝負を始めるか!

この時点で人災、ないしは魔女と呼ばれる女性の舞台に立ってしまったが、理解が遅れる。
なぜなら。
いきなり飛びかかってくるのを予想して、抜刀したのだが当の魔女は後ろに退いて、いや逃げ出したともいえる。自分で勝負を提案しておきながら。
「許不(ゆるさず)」
慌てて追いかける。

だが。

そこで思い知らされる。
ここは「魔女の家」なのだ。

視界から消えた魔女は、いきなり降ってきた。
とっさの事で顔を多い、何事かと。

単純な回答としては、手直にある木に駆け上がり、飛び降りざまにそのまま蹴りを繰り出してきた。そして突然の事態に顔を覆う事を見越して、腹に蹴り。

小柄な黒雪は、同じく小柄な魔女の蹴りごときは受けきれる、と思っていたが。
落下の速度をそのまま威力に転嫁させた蹴りは想像以上に・・・
「がふ!」
「読み、甘いんじゃない?」
「っざっけるなあ!」
村正を振るう。
この刀は、「天の村雲」と違い、重心が明らかにおかしい。
普通、刀は全体のバランスをとって柄よりに重心があるが。
この刀は、切っ先に一番の重心が。
振るうたびに、こっちが振り回される。
そんな感じ。
だが、中てれば。
問答無用の切れ味で、鉄板(鎧で試し切りをした)すら、易々と切り裂いた。
だが、まだ少し慣れていないため少々手間取るが・・・魔女相手にそんな言い訳もできまい。
(壱之太刀、燕飛・・)刃を振り抜き、返す刀を突きに向ける。
「やるじゃない。」軽々とかわされる。
「この!」(五之太刀、陣風)暴風をまとわりつかせた刃が魔女に。
でも。
「お前、その刀。まだ扱いきれてないだろ?」
至近距離まで接近されて、完全に後手に回されてしまった。
(見抜かれた?)
「この立ち位置。抜刀術なら十八番だろ?なぜしない?理由は使い慣れていない武具に振り回されているから。違うか?」
「そ、そんな!」
「もう遅い。」
蹴りが。
側頭部に回し蹴りが入る。
吹き飛ばされ、立ち上がる事も難しいのか、僅かに動くだけ。
「黒!」青年が駆け寄り、抱き起こす。
「はいはい、あたしの勝ちってことね。」
「母さん・・エグ・・・。」
「ちゃんと加減はしたわよ?」
「そうじゃなくって・・・」
「あの、レティシアさん?」母娘の会話に。
「ぼくも、その・・・ちゃんと仕込んでもらえますか?」
「いいわよ。その代わり。殺しはナシ、ね。キーファーとか抜かす奴の依頼、殺しがメインだと思うけど。受けちゃダメ。それが条件。」
「・・・・・分かりました。」
「じゃあ、弟子にしてやろうか。」納得顔の魔女。
「よろしくお願いします。」青年は頭を垂れる。


「母さんってば、本当に安請け合いばっか。」マユがボヤいているが、実は一番安請合いしているのが自分だと・・・気づいてない。

<<前の話 目次 次の話>>

マユリさんの元ページ