はあ。
なんでこんな場面になったのか、自分でもイマイチつかめていない。
過去に確かに訪れた事もあるし、娘も来たと言っていた。「カニうまー。」とか。
だからと言って。
目の前の蛮族、サハギンがコレだけわらわらと。
「ち、スゥも連れて来ればよかった・・・。」
天魔の魔女、レティシアは、愛用のデッドハートバグナウ(冷たい心の爪)を振るう。
ここは、漁村に程近い砂浜。
たまたま、立ち寄ったのだが、最近またぞろサハギン族がやってくるようになったので、何とかしてほしい、と頼まれたので。
カニ食い放題を条件に、準備していたのだが。
当初、2,3匹だと思っていたら、これがぞろぞろ。
夕方には待ち構えていて、「来ないなー」なんって言っていたらとんでもない。
ずらずらと。
「なんじゃこら!?」といわんばかりのサハギン族。
一匹でも町に入れたらダメとばかりに、最初っから本気モード。
「我は歌う!風の祭りよっ!」
広範囲に真空を伴う暴風が吹き荒れる。
「風切りよっ!」
さらに。
6体ほどのサハギンが自分目指して突っ込んでくる。
長爪を取り出し、振るう。
最初の一体が斬撃に血を振りまき倒れると、他のものも気が立って襲い掛かる。
「くっそー、これ、まだいやがるな・・・・。」
蹴りを放ち、距離をこちらの間合いにすると長爪で急所をえぐる。
「ぎしゃあっ!」
威嚇の雄叫びと共に、魚人達が襲い掛かる。
「テメエらがいくら来たってしれてるんだよっ!」
「ぎああっ!」
「我は放つ!風神!」
風の術式が蛮族に襲い掛かり、「邪魔だ、お前ら。」爪で切り刻んでいく。
「ほら、こっちだよ?ベイビー?遊んでやる。」
残りのサハギン族は12体ほど。
きしゃああああああ!!!!!
叫びながら突っ込んでくる。
「我は歌う!風の祭りよ!」
真空が切り刻む。
「我は放つ!風神!」
連続して術式を放つ。
ズタズタにされた蛮族達に、長爪に持ち替え、突っ込んでいく。
20体近くの蛮族達を制圧し、漁村へ。
「やっつけてきたー。」
「え、お姉さん、ホントに?」
「見に行く?」
浜には・・・・
「いや、やめておきます。」ミコッテの女性は、さすがに。
レティシアは、あー疲れた。とか言いながら、そんなそぶりも無く。
久しぶりに暴れることができて満足している。
つい先日暴れたばかりだが。
なんだか、リーダーっぽいのもいたが、風の術式に巻き込んで、蹴りと爪で蹂躙して、なんだか、ぎゃあぎゃあ喚いていたのを黙らせたので、しばらくは被害は無いだろう。
「あ、あの・・食事の方はご用意させてもらってますので。」
ミコッテの申し出に。
「おー、カニね!」
「はい。自慢の料理ですので。どうか存分に。」
カニを堪能して、ついでに寝所も借りれた。
パールで。
「マユ、ここのカニウマイな。」
「え?母さん?ドコ?」
「お前が前に行った漁村。今はエールポートは少し離れたみたいだからね。」
「あー。あそこのカニは最高。」
「サハギン共をぶちのめして、食べ放題って寸法さ。」
「げ。どんだけ?」
「さあ?20くらい?」
「20?20って、カニじゃないよね?」
「ああ。サハギンを、だ。」
「一人で?」
「当たり前だろ。スゥも連れて来ればよかったな。」
「・・・・・母さん・・いつもながら無茶苦茶だね・・・。」
「そう?」
「うん。相当無茶・・・。」
「まあいいわ。ターシャは元気にしてる?」
「あの子は大丈夫。なんだか友達もできた、のかな?いつもその子の話題が出るから。」
「ふうん。」
「少し寂しい、とか?」
「まあね。可愛い娘と孫が近くにいないからね。」
「自分はあっちこっち飛び回ってるくせに・・・。」
「まあ、トーラもいるし、ターシャ、マユと家族には恵まれているわ。」
「お父さんがはいってない!」
「ああ、あいつはいいのよ。でくの坊だし。」
「あと、ウルラも入れて。それと、順番であたし最後だったんだけど?」
「あんたは、ほったらかしても大丈夫でしょ?ウルラ君はあんた以上にタフだから問題ない。」
「言ってくれるわね・・まあ、ホメ言葉、って事にしておくわ。」
「そういうわけで、ヒト仕事終えて寝床も確保したから。そろそろ寝るわね。」
「はあい。おつかれさま。」
「おやすみ。」
親子の会話は大体、こんな感じ。