697セブンス。その後。

「ねえ?これどうしたらいいのかな?」
エレゼンの騎士。
「ミー、そらさっき言われたやろ?いいだしっぺに渡したらええんや。」
相棒に。
「せやな。辛気臭い事言うてんなや。」
小柄なハイランダーの少女。
「お姉ちゃん・・・ていうか、あんたらなんで素っ裸!?」
「なにって、一仕事の後に水浴びしたらあかんのけ?」
「うちかてしたいけど!」
「したらええやんけ?」

一番最初に服を脱ぎだし、小川の源流の滝に飛び込んだハイランダーの少女はそっけなく妹に。
その光景を見て、黒髪のヒューランのモンク、エレディタも「うちも!」
とさっさと服を脱ぐと飛び込み。
「あ、エリ!ちょっと!ずるい!」「ミーも来いや、気持ちええで!」と言われ、我慢できずに。
そしてハイランダー姉妹の妹は羞恥もあって、なかなか思い切れない。
「んじゃあ、ユーリはそこで見張り番な。」と姉から言われ。
「そんなあ!」情けない声と顔で。
きゃっきゃ、と3人で水をかけ合ったり、滝に打たれたり。
「ぐ。」
やはり、我慢ができない。
姉は頭脳労働だが、自分は肉体労働だ。
つまるところ、汗をかいてるのは自分であって、ザナラーンの辺境の故郷やウルダハなんぞ水浴びはかなりの贅沢だ。
確かにさっきの戦闘では、姉は重傷ともいえるくらいに負傷はした。
自分の役目ができていた、とはいえない。
だが。
やはり我慢できない。
革鎧を脱ぎ捨てると、川に飛び込む。
「お、やっとかユーリ。」
「うちかて水浴びしたいわ!」と心からの声。
きゃっきゃと楽しみながら。
「そういえば見張り番いないけど大丈夫かな?」
エレゼンの騎士。
今はただの素肌を晒した女性だが。
「まあ、見られたらぶっ殺せ。」と。過激な少女。現に下流に居た魔物の類は全て氷結されて流されていった。
そこに。
「おやおや。こんな場所でも通りかかるものだな。」
声が。
「殺・・あ・・。」
「久しぶりじゃないか。ユーニ。術式の構成はまあまあ、だね。だがもう少し、か。」
黒衣の男。
「あんた!」胸を隠しもせず、声を張り上げるエレディタ。
「エリ!胸くらい隠しなさいよっ!」こっちは両手で隠しながら腰から下は川の中。
「ミー!思い出した!この男!」
「おや、再会を約束はしたが。こういう場ではなく、てね。」
「魔魅夜先生!ドコにおらはったんや?いきなり消えてもうて!」術士の少女も隠すことも無く全身を晒している。
「年頃の女性はもう少し恥じらいを知るべきだな。」
「う!」慌てて胸と腰を隠し。
「あんた!マヤ、じゃなかったんか?」
こっちは気にしていない。
「知りたいのかい?」
「先生は、・・」
「僕の名は、魔魅夜(まみや)だよ。あの時は通称?かな?偽名だったのは詫びるよ。エレディタくん。」
「胡散臭い男やな。」
「エリ!」相棒が。
「まあ、そう言うなよ。目の保養にするには、もう少し足らないが。なかなかの腕前にはなったようだ。」
「なんやとっ!」
激昂するモンクの女性。
「やめときっ!」と制止する少女。
「アイツ、むかつく!」
「先生には勝てへん!無理や!」
「おや?」川のほとりで立つ黒衣は気にした風でもなく。
一瞬で術式を。
下流からやって来た魔物数匹を一瞬。一瞬で石の槍で串刺しにして、さらに水を膨らませ下流に押し流す。
「ひ・・・。」
腰が抜けるように。
「エリっ!」と胸を隠すのも忘れ、尻餅をついた相棒に駆け寄る。
あまりの構成の展開と緻密さに、畏怖をおぼえた。
「な、何者・・・。」
「まあ、そうだね。名前は明かしてしまったから。そう呼んでくれていいよ。それと、こんな場所で水浴びも悪くはないが、僕以外が来ればどうするつもりだったのかな?」
「・・・・・。」
「うちらのハダカの代償はちゃんと払ってもらうで。」
「はは。ユーニ。もうちょっと胸が育ってから言いたまへ。」
「先生っ!」
「まあ、人払いの術式もいつまでも、というより仕事があるからね。こう見えて僕も多忙なんだ。」
「先生!」
「では、お暇するよ。まだしばらくは人払いの結界がある。その内に服を着るといい。まあ、魔物の類はその限りじゃないから、なおさら、かな。」
トレードマークの黒いとんがり帽子を脱ぐと、一礼し黒衣の紳士は去っていく。
「なんやったんや?あれは・・・・。」
「先生、や。」
「お姉ちゃんに術式を教えやはったんや。」それまで無言で水の中に隠れていたユーリ。
「あの人が一番魔物やで・・・。」
「ユーリっ!」叱咤する姉。
「ごめん、お姉ちゃん・・。」
黒衣の男を崇拝する術士の少女は、見送りながら、いつの間にか森の影と重なり消えてしまった男を思い出し。
「まだ構成が残ってる。今のうちに服着よか・・・。」と。
人払いの構成、なんてものは一般には公開されていない。
そんなものをいつの間にか展開していた。
術式自体は理解ができないが、構成が残っているのは分る。
「とりあえず、報告にいきましょう!」ミーランは勤めて明るい声で。
「せやな。」


報告に行くと、鬼哭隊の衛視は驚いた顔で「こんなところにまで蛮族だと!」と。
報酬を受け取り、グリダニアへと。
「ほんまに濃い一日やったわ。」
「せやね。お姉ちゃん、ぶっ倒れた時はどないしよかおもたわ。」
「そうね、まさかあんな結界があるなんてね。」
「ほんまや、ミー、はよ寝よう。あ、その前にメシか。」
「ねえ、せっかくだし皆でご飯たべようよ!」
「そうしよか」

4人でカフェを目指す。








「ふう・・・・。」
黒衣の男。
目の前にはイクサルと呼ばれる蛮族の一団。
その数、十数。
「やれやれ。厄介払い、か。最近仕事の内容が無茶苦茶だな。」
クアアアアッ!
雄叫びを上げながら蛮族が突っ込んでくる。それも全て。
「興ざめだ。」
一瞬で小石達の群れにすりつぶされていく蛮族達。
「次回はもう少しマシな仕事がいいな。苦情の一つも言ってやらねばな。」
その場を後に。
「さて、クラにお菓子くらい買ってやるか・・。」

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