「なあ、お姉ちゃん。ほんまにこっち?」
「ウゼ。ユーリがマップ無くしたりせえへんかったら、ええ話やんか。」
「せやかてー・・・グリダニアなんてわからへんて。」
「せやったらなんでマップ落すんや?アホか?バカか?」
「お姉ちゃん・・・。」
一度見ただけのマップを完全に記憶している姉はてくてくと。
小川のほとりに。
「この先やな。」
先ほど練兵所なるところで聞いた話。
恐らくこの先に広場があって、問題のものがある。
その「問題」が何かは分らない。
「不審者」と呼ばれる件の人物とは思えない。
基本的に。不審者だろうがナンだろうが、「人」であれば。
特に何も無い所にずっと居るわけも無いし、まさかキャンプでもしているわけでもないだろう。その足跡を探れ、ということだろうが、鬼哭隊や神勇隊でも足跡がつかめていないのだ。
まったく。
ウルダハからチョコボを使って遊覧と。(せっかくなので)しゃれ込もうとしたら、バカ妹のユーリがグリダニアに着いてすぐ、宿を取る前に「ちょっと出ようや。」なんて言い出し。
まだ陽も高いもんだからつい散歩がてら出てみたらコレだ。
ユーニはこめかみを押さえながら。
魔法じかけのマップには、目的の場所が印字される。
ちらっと見て記憶したユーニは長い金髪を揺らしながら「はよ来い。」と妹に。
小川の先には小さな滝があった。「この奥か。あとで水浴びでもしよか。」
「お姉ちゃん、その、他の冒険者に丸見えやで?」
「氷にしたらええんやろ?」
「それ、犯罪ちゃうん?」
「人の裸眺めるほうが犯罪やろが。」
「でも・・お姉ちゃん・・・。」
「なんや?」
「その、胸のボリュームがたらへんで?」
「お前。まずは死にたいんやな?」一瞬で構成が展開される。
見慣れた構成。
氷属性。
しかも、その術式からして初級の術ではなく、高等のもの。
本気で殺す、と。
「や、お姉ちゃん!そんなつもりやあらへんかったんや!堪忍や!」
そこに。
「なにしてるの?」と。
エレゼンの女性。同年代の女性はのんびりとした声で。
この必殺の術式構成を見ての事だろうが、相手が姉妹だと知っているので。
じゃれているのだと。
「ミー・・・。」と相棒?の黒髪の女性がツッコミを入れるが、エレゼンの騎士は「?」マーク満載で振り返るだけ。
ユーリは命拾いした、と心のなかで天然ボケ騎士に感謝する。
「お前ら、あれか?練兵所いうところでなんか言われたんか?」
術式を霧散させて姉の方が。
「あれ?ユーニさん達も?」とはミーラン。
「そうや。この阿呆が勝手に聞いてきよってな。」と術式を編み、最後の「な」で開放。
長身の女性の右足が氷に染まる。
あまりにも一瞬の出来事に息が止まる。
「ひゃあ!お姉ちゃんゴメン!ほんま堪忍して!」とユーリは大声で謝りたおし。
よくこんなの相手に打ち勝ったなあ、とコロセウムを思い出し。
「再戦するか?うちはかまへんで?」
と。恐ろしい文句を告げてくる。
あの時は、なんというか。この相棒の助けと、愛剣となったジュワユースがあればこそ。
そこにタイミングやその他があっての事。普通に対戦すれば勝てるとは思えない。
ましてや、今はあの結界が無い。という事は敗北イコール死亡につながる。
もしも勝ったとしても、それは彼女を殺すということになる。
とんでもない話だ。
「ご遠慮させてもらうわね。」
「ふん、つまらん奴だな。」
「さっきから聞いてたら、あんた等何様やねん?」
「エリっ!」
「改めて名乗らせていただこうやないか。うちは、ユーニ・ロアー。妹はユーリ。ロアー姉妹や。名乗ったで?そっちもちゃんと名乗りいや。」
「あ、あのミー・・や、私はミーラン・ロートス。」
「うちは、エレディタや。」
「なんや、家名も無しか。」
「いろいろ都合ってモンがあるんや。」と。拳を振り上げ
「エリッ!」制止する。
「ほう?」膨大な術式を霧散させる。
「この後どうする気なんや?」ヒューランの術士はもう一度膨大な構成術式を展開してみせる。全てを巻き込む規模の。
「ひ。」とは妹の悲鳴。対象には自分も入っている。
この氷結の術式が発動すれば、一度には死にはしないだろうが。
それでも発動して、同じような一瞬で繰り返されればその限りではない。
3回も繰り返されれば、氷柱になるのは確定だろう。
それができる、と彼女は目で語っている。
「うちに対しての侮辱を下げてもらえたらかまわへん。」
「そうか、それは失礼した。」頭を下げ、構成も消す。
ふう・・・とは、妹と騎士。
「あ、あのさ。こういったらなんだけどね。」ミーランは。
「せっかくなんだし、一緒にこのクエストやっちゃおう?」
「まあ、ええけどな。」ハイランダーの女性はあきれ顔で後ろ首をかきながら。
「ミー、ええんか?」
「この方が効率的でしょ?」
「そうやな・・・。」
「いい相棒に恵まれてるやんか?」
「あんたには言われたくはないわ!」
「ふうん、うちの妹がダメなように聞こえたけんやけどなあ?」
「それはうちが言い過ぎやった。ゴメンやで。」頭を下げる。
「ほんなら、まあ共闘、といこか。」
「よっし!がんばろう!エリ!えーと、ユーニ、ユーリさん!」
「まあ、よろしゅうな。」