エーアガイツ、両親から受け継いだ旧式な造りの帆船だが、
この船は私達の移動手段であり商売道具であり、
そして大切な「家」でもあった。
「ただいま~。戻ったわよ。」
「あっ、お帰りお姉ちゃん。」
今戻ってきたのが、私のお姉ちゃん。 幼い頃に両親を失った私達を
支えてくれた頼れる姉である。
「さっき外ですごい音がしたけど何かあったの?」
「あぁ、帝国の追っ手5人に囲まれてね。」
「そいつらと戦ったときのじゃないかな。」
「ちょっ、そんな大事をサラッと・・・」
「んー、まぁ結果良ければ全て良し。でしょ?」
「こんな仕事やってるともう慣れっこだし。」
「そ、それはそうだけど。」
うん、この無茶苦茶な所もある意味平常運転。
確かに「クリムゾン=アイ」と呼ばれるようになってから
大怪我をして帰ってきたことなどほとんど無いが。
「それだって心配に決まって…ひゃっう!」
お姉ちゃんが私の尻尾をモフモフしてくる。
ミコッテにとっては性感帯ともいえる敏感な場所。
思わず声が上擦ってしまう。
「はぁ、お、お姉ちゃん…くっ、くすぐったぁぁ~…」
「そんな難しい顔してたらダーメ。もっとリラックスしなくちゃ。」
「ふふふ、今回は心配かけたお詫びってとこかな♪」
「に、にゃぁぁ…お姉ちゃん、いつもよりも、んんっ!」
「でも、心配してくれてありがとうね。」
「レイのそういうところは昔から変わらないね。」
「まぁ、その優しさが貴方のいいところだけど。」
お姉ちゃんが、ラストスパートをかけた後にすっと手を離す。
私は体に力が入らずそのままぺたんと床に座り込む。
「はぁ、はぁ…お姉ちゃん最近さらに上手くなってるんじゃ…」
「でもいい気分転換になったでしょ?」
「それは…そう、なんだけどさ。」
気持いのは良いのだが、どうにも嬌声をあげてしまうのが気恥ずかしい。
昔はいたずら程度だったのに、最近はどうも危ない…色々な意味で。
「さぁ、今日はもう寝るわよ。」
「朝一で取引を済ませたら私は例のコロセウムに行かないといけないからね。」
「あれ、あそこでの仕事って終わったんじゃないの?」
「それが追加のお仕事を依頼されてね~。」
「内容は秘密♪ あなた達は予定通りグリダニアに物資を運んでね。」
「心配しなくても、今回のは安全な場所での仕事なんだから。」
「はいはい、了解です。」
「お姉サマはどうせ心配しても無駄ですものね。」
「あら、まだモフり足りないかしら?」
「!!」
「ふふ、冗談よ。」
仲のいい姉妹のやり取りも終わり、船内は静けさを取り戻す。
時折打ち付けるさざ波の音を聞きながら、一家は眠りへとついたのであった。