キャンプ・ナインアイビー。
グリダニアから東に。黒衣森の程中にあるキャンプ。
ここはメンバーにとっても少し思い入れのある場所。
特に銀髪のミコッテの少女にとっては。
独り、ただ呆然とするしか。
いや、一生懸命に。
ただ叫び続けたのだ。
だが、次々とPTができていく中、取り残されて。
それでもひたすら叫び。
もう、これまでか。今夜中にギルを用意できなければ宿を放り出される。
しかも借金があるから、そのカタに身を売る事になるだろう。
「うう・・。」
一瞬。そんな過去が蘇ってきた。白魔道士ル・シュペヒトは此処に来るとつい。だが。
この場所は運命の出会いと言っていいメンバーが。
「ここはベルと出会えた場所なのにゃ・・。」
と思いながら。
しばらくするとキャンプだが、ふと一人。ふわふわした金髪の剣士、おそらく女性だろう。ただ一人ぼう、っとしているように見える。
もしかして私と同じくPTに入れず、呆然としているのだろうか?
前衛は確かにあぶれやすい。
これは。
「ね、ベル!」
「ん?ルー?」
「あの女の人、LSに誘っちゃおうにゃっ!」
「へ?」
「私達のLS、「盾役」っていないからにゃっ!」
「まあ、そうだけど・・。」
「おう。」
剣士は鞘に剣を納め、一人物憂げに。剣を引き抜き、斬撃を空撃ちさせては鞘に納め。
ふぅ。
という溜め息も聞こえてしまった。
やはり、かつての自分と重なってしまったミコッテの少女は、どうしても。
「ベル!早くいくにゃ!」
ふわふわした金髪に赤いカチューシャの少女は自分より幾分か年下だろうか?
シュナーベルは「あ、キミ。もしよかったら狩りに行くんだ。リーブがあるなら使っちゃっていいから一緒に行かない?」
青年は若干遠慮がちに。
「え、あ。その。リーブのカード、使い切ったんで・・。」
と、申し訳なさげに。
カチューシャに触れながら、首を横に振る。
「いいじゃねえか。儲かる仕事は儲けようぜ。」と赤毛のルガディンの青年が少女の肩を叩く。
少女はいきなりの事に前に突っ伏しそうになるが。
「だにゃー!」と前からミコッテの少女に抱きとめられ。
そういえばお金に困りまくっていた時期もあるので・・・。と。マルグリットは思いなおし。でも・・。お兄ちゃんの面倒はいいか。と思いなおす。
(実はお金の工面は兄が一手に引き受けていたのだが。)
この後、正式にLSに加入したマルグリットは、宿「とまり木」の向かい部屋にルー、こと銀髪の白魔道士のミコッテの少女と暮らす事に。
そして。一件の依頼。
ギルドを通さずに。
一人の青年を護衛すること。それも3日間。
「策を練るにゃ!」ル・シュペヒトは張り切って。「グリュック、死んでほしいにゃ!」と。
おいおい、と返事があったが。
そして、結果としては青年を護りきり、名も上がり、アリティア産業とかいう大企業の社長とも知り合ってしまい。二人で始めた悪ガキLS風見鶏も。
「なあ、グリュック。新メンバーも入ってすげえな、なんて思ってたけど。ココまで名が売れるとはな?」
「おう。」
「もうちょっと言えよ。」
「おう。」
「私もはいるにゃー!おう。」
「そっちかよ。」
「あはは、あなたたちってホント仲良しなのね。」
「おう。」
「君も仲良しLSの一員なんだぜ?」
「あ、ベル。こっち見て言ってにゃ!」
そんな日常に。
「よ。俺も入れてくれ。」と。こげ茶色の髪の青年、ファーネ。先の護衛対象であったのだが。
フリューゲル家というグリダニアの豪商の後継問題で当主に遺言で任命されたのだが。
「後は任せた。」の、ひと言スピーチで弟に丸投げし、無一文でやってきたのだ。
着ていた服で多少の金額は、とは本人談ではあるが。
そのあまりの破天荒というか、無軌道というか、行動に。
「一分当主(ワンミニッツオフ)」という非常に不名誉なふたつ名を頂戴した彼ではあるが、当の本人は飄々としたものである。
「なあ?俺ってもしかして有名人?」と。これまた飄々と言うだけに始末が悪い。
「何故ここに?」というリーダー、シュナーベルにも「いや、惚れた女がいてな。」と。
「ふうん。」とだけ。朴念仁の彼には二人しかいない女性陣のどちらか、とかそんなコトは思いもよらなかったらしい。
「ま、よろしく。」
この後、二人の仲は近まり。「強引な人。お兄ちゃんみたい。」と後日談のマリー。
「なんとなく?じゃなくってすごく構いたくなったんだ。」と後日談のファーネ。
やがて戦乱のためにシュナーベルは鬼哭隊に呼び出され・・