「なァ、アル?」
黒髪の少女はウンザリしながら隣のエレゼンの黒魔道士に声をかけた。
「どうかしたのか?手洗いなら先にすませとけよ。」
「ブっ殺ス!」
背中の大弓に手をかける。
此処は瘴気の漂う古戦場。モードゥナ。
二人はこの地での偵察、および反乱分子、密偵の始末を任務としてやってきた。
もうじき始まるであろう、帝国との戦闘を前に情報収集に来たのだが、
敵の方が一枚上手だったらしく、金銭での篭絡、密偵を潜り込ませているようだ。
現に味方であるはずの正規部隊のメンバーが篭絡されていた。
始末はしたものの、この先の塹壕陣地設置隊にも紛れ込んでいる可能性は高いと判断し、
なんとかしようと偵察よりは密偵狩りに移行したのだが。
長い黒髪を真っ直ぐに伸ばした、白磁のような肌の少女。黒いチュニックに革の胸当て。
そして黒いロングブーツ。チュニックからブーツまでは白い素足が見えているため、白と黒のコントラストがどこか非現実的にも見える。
白磁のような肌と、美貌で人形のようにしか見えない。黒髪は漆黒に染めた絹のようでもあり、さらにそう思える。
ただし前髪だけは不自然に斜めにカットされ、左眼だけが髪に隠れてしまっている。
その奥に金色の光を宿して。
隣を行くのは、同じく黒髪を少し長めに適当に切りそろえた感のある中年のエレゼンの男性。
ぼさっとした髪とは裏腹に、表情は引き締まっている。背中には長い杖を背負い、暗い赤色のローブを着ている。
正直なところ、似合っているとは言いがたいが、知る者が見れば、それは今は亡き師と同じ色のローブだと分かる。
少女の行動におどけた振りをして、「冗談だよフネラーレ。場を和ますウィットに富んだジョークだよ。」
「今度言ったラ、本気で殺スぞ!」
少女はその外見にふさわしくない言葉使いと独特のイントネーションのセリフを相棒にたたきつけ、ジロリ、と睨んでいる。
「はいはい。気をつけるよ。コワいからそんなに睨まないでくれ。」
「ふン。」
二人は戦地を駆けながら。
「で?さっきの呼びかけは?」とエレゼン。
「あァ。ざっと見た限りダと、陣地まデは敵は居なイ。だけド陣地まデ行けば、内通者や密偵がいルだろウ。数が多イ。どうしタもンだろうナ?」
数百メートルは先であろう陣地までのほぼ全てを見渡した少女は、「オッドアイ」を駆使して偵察したわけだが。(まさにうってつけだな)とエレゼンは内心。
「まあ、まさにソコだが・・一人づつ尋問も無理だろうしなあ。」
「ン?あはは。面白いヤツがいタ。」
「あん?」足を止める。
「ははは!社長だヨ!」
「社長?」
「あァ、教授の一人サ。僕の矢を至近距離かラ切り飛ばして防ぎやがっタ。あンな芸当ができルのは、魔女くらイかと思ってタ。」
「ん?」
「アリ・・なンだっけか。ノ社長らしイぜ。」
「アリティア産業か!確かに凄腕の社長とは聞いていたが。経営だけじゃなくそちらも達者だったとは。若くして起業した新興の会社だとは知っていたが。で?」
「アイツ、巻き込もうゼ。」
「どうやって?」
「考えがあル。」
「ん?」煙草をふかしながら資材に背を預けながらぼぅっとしていたら、一本の矢が飛んできて。
咥えていた煙草の先端を切り飛ばして地面にある資材に突き立った。
「あん?」
無骨な作業用のヘルメットは頭ではなく背中にぶら下げるようにしていて、
黒髪のミコッテは耳を動かし、この狼藉を犯した不届きモノの居場所を探ったが。
「居ないな・・。」
矢を見る。この矢・・・。
いや、耳で捉えられる範囲に人は。居るにはいるが、人足連中ばかり。とても弓矢を扱えるとは思えない。それにこの精度。もしかして。
もう一度矢を見る。鏃の近くに紙が巻きつけてある。
ん?紙を外し、広げてみる。
「話がある。矢の飛んできた方向に来られたし。フネラーレ」とあった。
「はん!リベンジ、ってヤツかね?いいさ。ツルハシがどんだけ重いか教えてやろうじゃないか。」ふっ。
「ちょっくらトイレ休憩に行ってくる!見にくるなよ!」
「おい?フネラーレ?さすがに今のは大丈夫か?なんか当たったように見えたが。」
「大丈夫だヨ、おっさン。後はちゃンと書いテくれてるよナ?」
「ああ。それは。しかし君が字が書けないとは知らなかったな。」
「うっせェ。そんなンできナくってもどうとでもなル。」
「さすがは元海賊ってわけか。」
「ルせェ!っと、社長、やって来ルゼ。」
「一流企業の社長の接待をするには少々テーブルセットとお茶が足らないな。」
「テメエが四つんばいニなって、テーブル代わりになれヨ。」
「いいプランだが、ソファが足りないね。お茶くらいは出せそうだが。」
「ふン。」
ツルハシを肩に担いでミコッテの女社長が二人の前に。
「何の用?こちとら仕事があるんだ。この前のケリつけようってんなら。」
担いだツルハシを片手でブン!と振るって。「コイツで風通しをよくしてあげるけど?」
この挑発に、「おゥ!上等ダ!」と弓を取り出しかけ。
「マテマテ待った!社長、待ってください!フネラーレ!君もそのために呼んだんじゃないだろう!落ち着け!」
「あんた、誰?」と訝しげな社長。耳が動いて些細な会話も聞き逃すまいとしている。
「ああ、すまない。グリダニアは双蛇党の党員、アルフレートといいます。高名なマルス社長とお会いでき、
光栄です・・が、場合が場合だけに、ざっくばらんにさせていただきます、失礼。」
後ろで子猫が威勢を張るようにフー!フー!と息巻いている黒髪の少女を隠すように。
「あら?そうなの?で?」
「はい。まずは報告として、我等は塹壕工事開始の告知に来ました。それと。」
「それと?」
「はい、帝国の密偵や、裏切り者が相当数紛れ込んでいると思われます。現に正規メンバーにすら。」
「あらま。おっかないわね。そんで工事開始はわかった。でもその密偵はどうすんの?」
「処分はこちらでします。そのあぶり出しに少し協力をいただけないかと。」
「おもしろそうね。で、具体的には?」
「なんとか全員を一まとめにしてもらって・・。点呼でもなんでもいいです。
「帝国語なまり」さえわかれば、その連中を連れ出していただければ。」
「はァ。これまた悠長な作戦だね?」
「他に方法は?」
「ふん、今は第二塹壕施設だ。第一塹壕施設に伴う人員を募ればいい。
第一塹壕は一部の人間にしか明かされていない。連中にとったらオイシイ情報だろうさ。」
「なるほど。しかし、そんな権限がおありで?」
「ここの人員そろえたのはウチの会社だよ?カヌ・エ様もお認めだ。心配ない。」
「では、よろしくお願いします。」
「ああ。だが必ずしも全員が密偵じゃないだろう?その選別はそっちに任せる。」
「はい。」
「じゃあね。トイレが長引いたら何言われてるか分かったモンじゃないからね。これで。」
「じゃあ、フネラーレ。仕事にはいるとしよう。」「あァ。」
----------コメント----------
1発だけなら誤射かもしれない。
を思い出したw
さっき別記事にも書いちゃったけど、ミコッテの種族特徴は嗅覚なんですよねw
聴力も高いと思いますがw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 08:56
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追記
黄金の鉄の塊で出来ているルミナリーピックは破壊力ばつ牛ンです。
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 09:01
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ガテン系姐御ですな社長。
黄金かぁ・・・重量やばいな・・・w片手か・・・w
アルフレートさん大変そうだァなw
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月27日 09:07
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アルフレートの師といえばシ・ヴェテックト導師か、レティの師でもある。
過去作調べたけど、ローブの色確かに同じねw
(ロドストだと過去作が見にくいのでローカルテキストから参照w、
連番と話毎に別けて保存してます。)
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 10:01
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>マルスCEO、ミコッテの耳がピコピコ動くのが可愛いなあとおもいw
黄金の鉄の塊・・・もしかしてブ■ント語録!?w
ばつ牛ンそうですw
ローブの色に込められた覚悟といいますか。師からの想いを御守りとして参じてきたわけです。
ローカルテキストに保存、とかやり方がわかんにゃいwでも、そこまであたしのお話にお付き合い頂き、ありがとうございます!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月27日 10:12
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耳がピコピコ動くの良いよねw
( ゚Д゚)<ニャフニャフ
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 10:13
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>フィズさん、社長いやさCEOは頼れるガテン系w
ただ、さすがにこの重量は片手で振り回すには限度があるので、恐らく示威行為とおもわれますwやったるどー、なw
そしてソレを悟らせないよう細心の注意と、効果を考えての行為かしら。このへんの計算をしっかりしながらが「暴君」を支えているかとw
アルフレートは今回、出だしから貧乏くじ引きまくりだからw
女傑二人に右往左往しそうねw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月27日 10:19
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社長も昔はアマジナ鉱山社(採掘ギルド)で下積みしてそこから独立したんでしょうねw。
今では取引先ですがw
社長のヒストリーとか考えてみるかぁw(小説ベースでw)
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 10:26
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>マルスCEO、ぜひw
できれば、セネリオ嬢との邂逅もお願いしますw
取引先として、新興企業のアリティアとのパイプがあるのはその辺じゃないでしょうか?と想像してみるw
今回、一般工兵の何割かはアマジナ社からの出向でしょうし。レイ女史も無関係ではないでしょうねw
若くして異例の抜擢ですしw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月27日 10:31
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>まゆりさん
文章を書くのは苦手なので期待はしないでくださいねw
ふと思ったこと、社長はツルハシ持つと性格変わってる気がするw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 10:35
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追記
多分、書けても箇条書きかなぁ、作文なんて数年書いてないしw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 10:44
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>マルスCEO、わっかりましたw期待してまってますw
ツルハシもつと、ガテン系時代に戻るのかも?wってそう考えてましたw
オフィスだとやっぱり「社長」の顔じゃないとダメですしw
男勝りなトコがないとダメな職場とはおもいますしねーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月27日 11:12
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プロット書いて、書き手にまるなg
Eraru Control (Hyperion) 2013年03月27日 12:40
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使うか決めるのは作者次第でしょうw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 13:02
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追記
う~む、やはり企画倒れかなー。
自分には一から書くなんて不可能だった(箇条書きでも)。
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月27日 18:14
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>えらっち、まるなげワッセローイw
問題なすですwむしろその方が自由度高いんでw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月28日 00:39
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>マルスCEO、大丈夫w
脳内で色々と加工していきますゆえ。げへへへへへ(´_ゝ`)
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月28日 00:40