519書き物。天魔の魔女。

「まあったく。スゥったら。いくら右翼だからって、いの一番に先陣かよ。」
モードゥナまでの進軍。
渓谷のあちこちには魔物がウジャウジャといる。
近くにキャンプ・ブルーフォグがあるため、そこでの一泊休憩を挟んでの進軍。
とはいえ、人数が人数なのでとてもキャンプに全軍ではとまりこめない。しかし進軍スピードを上げたい。が、休息も必要だ。士気にも影響する。
だが。
「そりゃ、こんだけ魔物ども打払ってたら時間も体力もつかうわね、っと ッラぁ!」
愛用の長爪を振るってグレイの髪をなびかせて魔物を切り払う。
「こりゃ夜になっちゃうわね・・。」
「大丈夫ですか?義母さん?」
「年寄りナメんなよ?若造が。」と、娘婿の頭をなでる。
隣で剣を振るう彼はとても頼もしい。
二人の関係は、義理の親子であるが、傍目には兄妹にしか見えない。
自身の肩ほどしかない身長の義母になでられ、「おれは・・一応副隊長ですよね?一般兵の前でコレはどうかなあと・・・。」
「気にするな。あたし自慢の息子になったんだろ?」
「ええ・・。」
「戦地じゃ、どうなるか分からない。今のうちさ。」
「・・・。」

「いよおっし。みんな。キャンプはもうすぐだ!ゆっくりしたかったら、その分足を早めな!ゆっくりしてるとキャンプは見学だけで終わっちまうからね!」
「応!!!」

さてと・・。ここらであぶり出しでもしておくか。
斥候の(まさか、アルと呪眼コンビだとはおもわなかったが)二人からの報告で密偵、ないしは裏切り者が潜んでいる、との事。
正規軍の中から出てきたため、かなり慎重な行動が必要となる。
「この先にあたしと数名で偵察に出る。志願者はいるか?」
「はい!」と金髪の青年ウルラ。「お前、アホか?あたしが出るのに副長のお前がここに居なくてどうする?・・・・・・・まあ、うれしいけどね。」
「はい!」「はい。」「はい!!」「・・・・・・」十数名の志願者。
「よろしい。では、ウルラ。後は任す。このままキャンプに向かい、各自休息を。志願者はあたしについて来い。先行して様子を見る。」
ポーチから水筒を取り出し、一口水を飲んでから部隊から離れる。

「隊長!」ララフェルの少女?
(ララフェルはヒゲでも生えていない限り、いや剃っていれば関係ないが、女子に限っては年齢が全くわからない。
まあ、他人から言わせれば自分もそうらしい、のだが。)
「え?えらっ!」思わずクチを押さえる。
見知った冒険者のララフェル。
しー・・・・。と一指し指をクチにあてて、だまってて、と。
こくん、とうなづく。
使っていない?パールをぽいっと渡されて。
「えへへ。きたんだよ。」とらしくない?イタズラめいた伝心が。
「あ、あなた・・。左翼担当でしょ?」と困惑気味の魔女。まさにこの顔が見たくて来たのかもしれない。
「んー、まなんに聞いたら、「いいよ。」って即答されたし。」
「はあ、彼女にも困ったものね。もちろんあなたにも。」
「うれしいくせにー。」
「まあ、助かるわ。この先行偵察の意味、それじゃわかってて来たのね?」
つかれた足でも早足に峡谷を抜けていく。
「もちろんー。あ。でも今は白だからー。」
傍目には黙って並んで歩く二人。

そこに。
「隊長!敵襲です!」と、若い男。冒険者だろうか?剣を携え走ってきて。
「どこだっ!」
「ココです!」と剣を魔女の腹に食い込ませるように勢いをつける。

黙ってその剣を受ける。



その瞬間、ゆらっと影がブレるようにして剣は虚空を突く。
「え?」
男の顔は硬直したまま。
「おいおい。ちゃんと狙えよ?いいか?ココだ。ココ。ここが致命傷になる一点だ。」胸に手をあてる。
「はぁ?アンタ、何言ってるんだ?って、なんだ?さっきのは。」
「気にするな。ただの冗談。せっかくここまで来たんだ。綺麗な渓谷でもゆっくり鑑賞してくるといい。」
後ろ回し蹴り、そこからの上段蹴り。さらに突きを入れてからの回し蹴り。
男は体を「く」の字に折りたたまれたまま、渓谷の川底に落ちていった。
「えらっち。ごめん。残りの連中選別できた?」
傍らのララフェルに。
「んー、、、8人、かしらー。あとは本隊にもいるんじゃー?」
「そっちは息子がなんとかしてるわ。」
残った隊員は10。うち、8か。
「はい!この中で帝国からお金もらったひとー!」
もちろん誰も手を挙げないが。
表情でわかる。
「えらっち、残りの二人、カバーしといて!あたしは!」まず一人を爪の一撃で黙らせる。
「こいつらの相手しなきゃね。」と、返り血も拭かずににっこりと笑う。

「さて!反逆者諸君!よく聞きたまえ!君達は投降も弁護も許されない。あるのは罰、だけだ。」
グレイの髪と、どこか幼い少女のような容貌からは考えられないような台詞と音声に、震え上がる。
その血が滴る爪。顔を引き裂かれた仲間。
誰かが口にした。
「魔女・・・・。」
「魔女だ・・・。コイツ、本当に魔女だ!」
「いやだあ!」
「た、たすけてえええ・・・。」
「天魔の魔女って、本当にいたんだあああ!」

「うっさいわねー。」とララフェル。この内に二人の内通者ではない冒険者をかくまって離れる。「いまごろなによー。有名人じゃないー。ばか?」

「えらっち、さんきゅー!」
走り出す魔女。
そして。
一旦、ためをつくって、とび蹴りと見せかけて、そのまま地面を踏み抜く。
小柄な彼女は、さらに姿勢を低めてがら空きの胴に一薙ぎ、そして勢いを殺さずそのまま前方に倒れこむようにして、両足を広げて回転脚。二人を巻き込む。
さらに崩した姿勢を利用してもういちど転んで刃をかわしながら、起き上がりざまに爪を凪ぐ。

すでに4人が戦闘不能、というか、志が折れてしまっている。残る複数人なら、と思っていたのだろうが、最初の奇襲でコレ。この後どうなるのかはもう分かってしまう。
「はいはい?どう?やるの?やらないの?」魔女は荒い息一つつかずに聞いてくる。
「い・・・いえ・・・すみません・・・・。」異口同音。
「あ、そう。じゃあ、飛び込め。」峡谷の底にある川を指差す。
ひっ!という悲鳴。
「えらっち。最初の4人、放り込むの手伝って。」
「はあい。」小さな体だが、ずりずり、と一人を放り込む。
ぁぁぁぁぁぁ!と、悲鳴を上げながら、ドポン。と。
「あ、言っとくけどさあ?わたし、わるくないから。」
かわいいが、どこか澄ました笑顔の少女に言われ。そして今も二人目が放り込まれている。
「で?お前らどーすんの?」
「いや、お助けを。」
「だからさ。投降も弁護も無い、ってさっき言ったじゃないの。
そのくらい覚えてもらわないと、作戦指示したときについてこれないでしょ?いらない子はせめて2択をあげるわ。自分で落ちるか、落とされるか。どっち?」

ひええええ!と悲鳴が上がる中
4人目が渓谷に引きずり落とされる。このタイミングはさすがである。
「わ、わああああ!」一人がヤケクソに落ちていく。 ガッ   ごっ

「あーあー。言い忘れたけど。こういうトコ落ちるときってさ。気をつけないと崖に体ぶつけまくって、まず助からないんだよ。
一直線に水に落ちれば五分五分、かしら?どう?自分で落ちてみる?」
「あああ・・・・」
じゃあ。

「あたしが執行するわね。隊長だもん。」とにっこり笑顔の魔女。
「う、うれしくないです・・・。」


残りを蹴りだし、本隊に帰還するなか。
「やー、えらっち。助かったわー。」とにこやかの魔女。
「レティシアさんが言うと本気で嬉しいけどー。やることはエグイわねー。」
「あら、今回は片棒担いだんじゃない?」
「パンツさんとかで実験はしてるから、崖からなら落とすのに慣れてるだけー。」
「そりゃなんとも言えないけど、まあ、死人が少ないてのはいい事よ。」
「よく言う。」
「聞いてるわよ?カフェで某剣士を雷術系でバンバン撃ったんだって?あはは。せめて外でやりなさいよ。」
「あれは、おうさまが悪いの。ミューから食い逃げされたとき、すきにしていいって。」
「あのひともねー。悪い人じゃないんだけど。」
「まなんといっしょのときは、まなんがフレアを撃とうとしたから、わたしもフレアの準備したけどー。」
「あなた達、どんだけカフェに被害出す気だ。」大笑い。

よっし
「本隊が見えてきた。息子もそれなりに成果を出してるだろうしね。食事の後、進軍!」





「なあ?」「あん?」「この人達って、すげえな?」「頼りない隊長よかいいんじゃねえ?」「そういやそっか。」
「魔女、か。噂だけだとおもってたぜ。」「ああ、てっきり魔法バンバン、ただのマジックホリックかと思ってたが。」
「この人なら隊長だって、安心できるな。」「ああ。なんせ、天魔の魔女だからな。」
残った二人の冒険者の会話。


----------コメント----------

「パンツさんとかで実験はしてるから、崖からなら落とすのに慣れてるだけー。」

パンツさん(´;ω;`)ブワッ
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月23日 11:29

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>マルスCEO。彼は・・そういう・・
実験、というからには、一回や二回じゃない・・・はず・・・。
瀕死の重傷でも、蘇生術式+高位回復術式で治されて、また放り投げられる・・・・・。
エンドレス・ノーロープ・ジャンプ。(すでにバンジーじゃねえw)
ジェットコースターなんて、っメじゃねえぜw
あたしは絶対にやりたくないですがw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月23日 11:54

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お、お助けぇ~~!
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月23日 17:40

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「魔女・・・・。」
「魔女だ・・・。コイツ、本当に魔女だ!」
「いやだあ!」
「た、たすけてえええ・・・。」
「天魔の魔女って、本当にいたんだあああ!」
「いやぁぁぁ!!こーろーさーれーるーwww」
Eraru Control (Hyperion) 2013年03月23日 22:25

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天満(空手道場)の魔女だけあって、格闘50まで上げてるな。確実に。
うまいこと言っちゃったw まあ、さんしだしねw
Sanshi Katsula (Hyperion) 2013年03月23日 23:29

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>フィズさんw安心をwww
ヌッ殺されるときは帝国便ですw
あ、あとフネラーレの流れ矢できたり・・・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 06:02

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>えらっちw活躍してるでしょ?w
ちゃんと白としてwwwwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 06:05

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>三枝ししょー。格闘は50ッスw
天満橋は学生時代に通っていましたけどw
うまいこといわれちゃたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 06:05

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流れ弾で死亡とかやだなw、フレンドリーファイアかw
「貴様は祖(母)国を裏切った!!」
CODでFFしたときのメッセージw
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月24日 08:46

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お尻に被弾だけは避けたい。。。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月24日 08:49

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一人でクロスボンバーできそうだな・・・
Bob Dalus (Hyperion) 2013年03月24日 10:42

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>マルスCEOたしかにw
ベトナム戦だと米兵の死者のかなりが味方の同士撃ちだったそうです。
オンドゥルルラギッタンディスカ!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 21:06

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>フィズさん、ルツですねwわかりますw
ヨルムンガンド、おもしろかったなw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 21:07

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>ぼびー。クロスボーンバンガードじゃないよね?
一人、かあ・・・。どんなんだろ?
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 21:08

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分からない人向け、勝手に補足w
オンドゥル語「オンドゥルルラギッタンディスカー!」
日本語「本当に裏切ったんですか」
Marth Lowell (Durandal) 2013年03月24日 22:24

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>マルスCEO、捕捉感謝w
ひさしぶりに使った気がするwオンドゥル語www
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月24日 23:38

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