517書き物。二人。そして?

荒野の都市ウルダハ。
多少の誤解があるが、「荒野」と「砂漠」では。さらに「砂丘」
その全てが違う物であり、知らない人は混同してしまう。
「荒野」とは。読んで字のごとく、荒れ果てた野。誰の手も介在せず、ただ自然に任せた結果、余人の許す価値のない土地。
「砂漠」とは。
荒野と変わりないが、基本的に乾燥し、その大半を砂と巨岩、そしていくばくかの水源を。
「砂丘」とは。
荒野や砂漠と一線を画す、自然の猛威溢れる地。砂しかない。ただそれだけ。
温度差も激しく、日中は体温をはるかに上回る気温だが、その熱を保持する土壌ではないため、夜間は零下をはるく下回る。

そして、誰が始めたのかそんな荒野の大都市。ウルダハ。

その酒場には・・・

「なあ?モモディ。この酒うまいな。どこのだ?」
こげ茶色の髪の青年。
「あら~別料金よ~?」
「弟に紹介しておくよ。」
「それなら~。」濃いピンク色のララフェルの女将は、瓶をドンっ!と目の前に。
「ええと・・・。デリリウム・トレメンス、ね。」
「おいおい、酔っ払い中毒患者、か。物騒な名前だな・・。おい。」
「可愛い彼女を連れてのご来店、このくらいがいいんじゃないのお~?」
「まあ、そうなんだが・・。」悪びれない。
「お部屋は彼女と一緒でよかったのよね~?」
「いや、さすがにね。俺はここでくたばるまで飲んでるよ。」
「それは彼女に失礼だとおもうけど?」
「いろいろあるんだよ。まずは彼女の案件をなんとかしないとね。」
「へ~以外と紳士なのねえ。」
「失敬だな。こう見えても1分だけは大富豪の当主だったんだぜ?」
「あれだけのパフォーマンスをしたんだから、他に何か狙ってない~?」
「それこそお代をもらわないとな?取引するかい?」
「おもしろそうね~。いいわ。おいくら?」
「そうだな、出し惜しみをしよう。どこから始める?」
「そうね~1万、からかしら。」
「けっこう張るね。いいだろう。俺はとあるスジと密約をかわしている。こんなところかな?」
「おもしろそうね~。じゃあ、追加で10万。」
「いきなりだなあ。でも言えないところは言えないからその辺は。」
「承知、よ~。情報屋としての不文律は決して破らないと誓うわよ~。」
「さる御方から援助?かな。今の立場はこの関係あってのものだ。弟には不便を強いるが、なにこっちの方が不便極まりない。」皮肉気に。
「だが、楽しい毎日だよ。彼女もできたしね。」
「ほう。「さる御方」ね~。確かにこれはお値段に見合う情報だわ~。」
「ああ。そしてこの情報が彼女の耳に入らないよう便宜をはかってくれ。彼女にはこんな社会の闇を見せたくない。」
「お代は?」
「先の10万、だ。悪くないだろう?」
「お金の使い方を十分承知だことね~。いいわよ。この情報は極秘にしか出さない。そして相手も選ぶから、安心してね。」
「ま、なんだ。コレおかわり。」グラスを置く。
「はいはい~。テージ、もってきて~。」

「ああ、今夜は中毒患者になりたいね。」
「それは彼女の寝台に潜り込んでから言うといいわよ~。」

「それができれば苦労しないさ。」
グラスのエールを煽る。

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