500書き物。兄妹・・。

「あ、マリー?食事は?」銀髪を伸ばし、普段は後ろに束ねているミコッテの少女が向かいの
部屋に間借りをしているヒューランの少女にドア越しに問いかけてきた。
「あ、ちょっと待って。すぐ行くから。先に下りておいて。」

グリダニアのカフェの二階にある宿「とまり木」その一室。
ふわふわした金髪のヒューランの少女は、普段着に着替え夕食の誘いを少しだけ先延べに。
「お兄ちゃん。本当なの?マユちゃんに赤ちゃんができたって。」
「ああ。といってもまだ本人は多分、とか言ってたが・・。」
「わあ!おめでとう!」
「ありがとう。マリー。」
「これはちゃんとお祝いしなくちゃね。」
「そうだな、マユも喜ぶだろう。」
「あ、じゃあお兄ちゃん、ちょっと今人を待たせてるの。また連絡するからね。」
「ああ。わかった。じゃあな。」

親友の懐妊に顔をほころばせ、伝心を切る。
「そっかあ。マユちゃんがママになるんだ・・・・。いいなあ。」
と、そこでふと気がつく。
「あ・・・。わたし、叔母さんになっちゃうんだ・・・・。ぐ。マユちゃんとこの子には、お姉さん、と呼ばそう・・・。」支度をしながら。

コンコンとノック。「おーい、マリー?メシ行こうぜ。」とは同じく宿に間借りをしている青年ファーネ。
「なんかベルから話もあるらしいからよ。先に行くぜ?」
「あ、ちょっと待って。今出るから。」
ドアを開けるとこげ茶色の髪を伸ばした青年が、ふわあとアクビをしながら出迎えてくれた。
「ルーは?」
「あ。先に下りたわ。じゃあ行きましょう。」青年と並んで階段を下りて行く。

「おう!こっちだ!」
カフェのテーブル。壁側なので見つけるのに暇がかかると思ったのか、
赤毛のルガディンが大柄な体を見せて二人を呼ぶ。まあ、基本的に大柄だが。
「最近仲がいいな。お二人。」と、がはは!笑い声もデカイ。
「ちょ、ちょっとお!」と反論しようとし、ちらり、と横の青年を見るが彼は何食わぬ顔で「そうだね。」と返している。
なぜだか無性に顔が赤くなっていく気がするが、ごまかすように。
「ね。ベルは?」とLSのリーダーが不在なのを気に止めて。
「んー。なんだか鬼哭隊のほうのミーティングで遅れるみたいだにゃ。」とルー。
「ふうん、珍しいわね。ベルが遅れるって。」
「おう。その役は常にマリーだからな!」がはは!
別の意味で顔が赤くなってくる。
「もう!グリュックきらい!」つん、と顔を背け、そちらに居る青年とつい目が合ってしまい、
照れ隠しか、さらに反対側に顔を向けると、ミコッテの少女が耐えれなくなったのか、クスクスと笑いだした。
「ベルは先に食事をしておいてくれってにゃ。」お腹を抱えながら。
「もう・・ルーまで・・・。」憤懣やるかたない少女は、別の話題を。
「じゃあ、適当に頼んでおくか。」と青年はミコッテの給仕を捕まえ、それこそ適当にオーダーしていく。

「へぇ。そうかあ。あの子がなあ。」とルガディンの青年がうんうん。と。
「私もほしーにゃあ、赤ちゃん・・。」ルーは夢見るようなほわん、とした顔でサラダをつついている。
「そうかあ、そいつはめでたい話じゃないか。お祝いしてあげないとな。」と青年も肉を切り分けながら。
「そうなのよー。」と金髪の少女は満面の笑みで。
夕食は進んで行き



この後、どん底のような話を聞かされる。



「あ、ベルが来たにゃ!」と、彼に想いを寄せるミコッテ。
黒髪を短くまとめ、青い染料で少し染めた青年は、しかし顔に生気がない。
「どうかしたのか?」もう一人の青年、ファーネが仕上げのグラタンを食べかけながら聞いてくる。
「ああ。いい話と悪い話がある。」だが声は沈痛だ。
「む?」と少女が続きを促す。
それに青年が応え。
「まずはいい話からだな。」慣例として、冒険者は「いい話」から始める。
「おう。」
皆、神妙にうなづく。
「そう遠くない次期に、帝国と一戦を交えることが決まった。
そして、カヌ・エ様のもと、鬼哭隊の優秀な人員はグランド・カンパニーの名において、左翼部隊に配属される事となった。」
「おいおい。それって。」
「ああ。俺もその部隊に割り振りがされるだろう。
だが、この部隊は戦場の花形だ。十分な栄誉と言っていい。
スウェシーナ隊長が陣頭指揮を執り、今回の戦にあたるという。」
「ふむ。それで?」続きをうながす青年に。
「LS風見鶏としては、傭兵部隊として参戦するかどうかが問われる。」
「参戦すればどうなる?」
「LSで同じ部隊に配属されるだろう。戦場の栄誉が示される、と言い換えてもいい。」
「おう。」
「だが、これは自由意志として確認をしたい。皆が各自で決めてくれ。明日返事を聞こう。」
「おう。俺はベル。お前についていく。それだけだ。」ルガディンの青年は即答してしまった。
「ありがとう。だが皆はよく考えてから答えてくれ。」
各自は沈黙でもってそれにこたえた。
「で?」「うん。悪いほうだ。」
「今のがいい話、ってんなら、コッチはスゴいかもな。」
と皮肉と共にスプーンでグラタンをすくいあげ、口にほうばる。
冷めたグラタンの味はイマイチだったが、青年は気にせず続きを促す。
「マリー。君に関係する話だ。」と金髪の少女を見る。
「え?わたし?」「ああ。」
「軍は3隊に分かれ、作戦を開始する。中央はもちろんスウェシーナ隊長だ。
左翼には、以前このカフェで盛大な魔法を放ったララフェルの女史二人が指揮を。
そして、右翼・・・敵の精鋭がそろう左翼の指揮を受け持つのは、かの魔女らしい。」
「ほー。だが魔女なら安心じゃないのか?」グリュックの問いに。
「こればかりはわからん。だが、マリーにとっては兄君の義理の母でもある。一番危険な前線を任されるわけだが・・。」言いよどむ。
「どうしたにゃ?ベル。」
「マリー。君の兄君が同じく右翼で魔女の副官として志願してきている。」
「え?」
自分は何か聞き間違いをしたのでは?だって、兄は子供に恵まれて、
最愛の妻が待つ家に居るべきではないのか?何かが間違っている。そう。これは間違いなのだ。
「あはは、ベル。いやだわ。お兄ちゃん、お父さんになるんだよ。マユちゃんに子供ができて。
それが、どうして戦争の、それも一番危ない部隊に自ら志願なんてするの?ベルったら、聞き間違いでしょ?」
自分の声が、なぜだかどこか遠くから発せられている、そんな錯覚が。ありえない。
あってはならないことだ。だって、来年には親子3人でどこかの街で暮らしているはずだ。
それがグリダニアだといいな、と、妄想じみた考えが浮かぶ。
「マリー。これは本当だ。スウェシーナ隊長から直々に聞いた。
身内がLSにいるから、とは言っておられたが。本来なら伏せておくべき情報、とも。」
「ウソ。ウソよ・・・。そんなこと・・。あっちゃダメよ。」
先ほど伝心していたリンクパールを取り出し、兄に伝心を。
(お兄ちゃん!ウソでしょ?軍に参戦するなんて。なにかの間違いだよ!?ね!)
(マリー・・。聞いたのか。おれは、自分の意思でアラミゴ奪還のために、この身を投じる。)
(え?今、なんて?わけがわからない!)
(マリー。お前はそこに残って、おれをマユと一緒に待って居てくれ。)
(そう!マユちゃんと、お腹の子はどうするの!)
(マユは・・。彼女は強い。万が一おれに何かがあっても、彼女は立派に子を育ててくれるだろう。
そして、マリー。お前にマユのサポートを頼みたい。任されてくれるな?)
(ちょっと!勝手よ!勝手すぎるわ!)
(いつもお前のわがままに付き合ってるんだ。今回は付き合ってもらうぞ。じゃあな。)
(おにいちゃん!ちょっと!ねえ!ちょっと!!!・・・・・)伝心は途切れてしまった。
「マリー?」気遣わしげなメンバーの声。誰の声だかわからなくなっている・・。
「ベル。ごめんなさい。わたし、参戦できなくなっちゃった・・・。」
「そうか。気にするなよ。もともと俺だけが参戦するはずだったんだ。」
「じゃあ、私は参戦するにゃ。ベルの横に居たいのにゃ。」
「そうか。ありがとうルー。」
「俺は今回は辞退させてもらう。いいかな?」ファーネの発言に無言でベルはうなづき、
うつむき、涙している金髪の少女に目を向け「よろしく頼む。」と。
「ああ。」
「それでは、今日をもってLSウェッターハーンはしばらく休業する。再会の時まで各自、自分を磨いておいてくれ。」

「おう。」「にゃ。」「ああ。」「・・・・。」


「おにいちゃんのばか・・・・・。」


----------コメント----------

きっと、パパはパパなりにパパだからこそ、パパらしく
将来の子供のことを思って、パパとして戦に挑むんでしょうね・・・。
登場人物の故郷であるアラミゴ奪還にかける思いは旧版でも凄まじかったしな
・・・とは別の話になるのかな?

まぁどちらにせよ、いい兄貴でありパパさんであり男だ。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月10日 20:33

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>フィズさん、どうも。
そうですね、やはり故郷を追われた、そしてその際に大切な人達をたくさん亡くしてしまった、この二人。そして魔女。
しかしながら、過去を清算できる機会があるのなら、指をくわえて座しているわけにはいかないんですよね。
内に秘めた想いが強いからこそ、魔女とウルラは参戦にあたって、一番過酷な戦場を選んでいます。
そして、妹には背負わせたくないとも考えていますので、少し矛盾していますが・・・。(先手を取って、マリーに参戦させない理由を作っています。)
こういう男にホレたら苦労するけど・・・し甲斐があるわねーw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月11日 00:04

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まゆの小説に・・・いや、なんでもないw
多分大丈夫なんじゃないかなとか思ったけど
会えなくなるのは寂しいからね・ω・
Crystal Mana (Hyperion) 2013年03月11日 00:58

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>まなん、どもんw
まなんがエンドロールでdeadリストに・・・・(`;ω;´)ブワッ
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月11日 03:55

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