492書き物。少女たちの奮闘。

「ちょっとアンタ!突っ込みすぎやって!」
黒髪の少女は短いながらもその髪を大きく揺らし。
「もう!治せ!」と。
回復術式を編んでいく。
「たはは、ごめーん!でも、まだ一匹いる!」
オレンジだか赤だか光の加減で変る髪を持つ少女は、果敢にも剣を振り上げ魔物に突っ込んでいく。
「ああ!もうっ!オッサン、ウチなんで幻術だけやねん!」
「お前もあの子もこの技術に関してはド素人だろう?それに、
あの子は剣を選んだが、父親は術士としておいらに匹敵するくらいだからなあ。
そう考えたら、エレディタ。お前は少しこっちの修行も必要だろう?」
「クソ!あ! 治せ!」回復術式。
「クチ悪いなあ。」
「ほっとけ!術式に声さえ入れて魔力いれりゃあそんでいいんだろ!」
「まあ、そうなんだが・・。」
最後の敵を剣で屠った少女が帰ってくる。
「ふう。終了。でも。ほんとにクチ悪いよね。エリ。」
「オマエもか。治してやったんやで?文句言われる筋合いがあるなら、イチから言ってみろや。」
「ゴメンゴメン!ちょっとさっきの話が聞こえたから。」とエレゼンの少女は頭を下げる。
「まあ、許したるわ。」と仏頂面、だが少し照れくさいのか頬が赤い。


キャンプ・ベントブランチ。
黒衣森の一番グリダニアに近い。
そこで二人の少女の教育に取り組むルガディンの教授。
昼食を終え、二人に課題を出し、その答えをここのキャンプのリーヴで見ようとして。
その一つが、エレゼンの少女ミーランに、武器の扱いを教えること。
もう一つが、ヒューランの少女エレディタに、魔道を教えること。
ミーランは両親が優れた冒険者、それも父親は魔道(呪術、幻術)に精通しているため、
まずは体を使った訓練、それも自分でもって来た短剣があるならば、剣士としての訓練がいるだろうと。
エレディタは優れた体術を誇る格闘士だが、逆に魔道に関しては全く門外漢なところがある。
なので基礎を教え、「呪」と「精霊」について教えていたわけだが、今回が初の実戦となった。

剣の扱いはさることながら、どうにも突出してしまうミーランには、もう少し仲間のカバーと、
フォローすべき立場の後衛たる術士としては、なんとも危ういエレディタの二人は「暴走」と言ってもおかしくはない。

「まだまだ、これから、かね・・。」
一人溜め息をつく中、少女二人はお互いを非難し合っている。
「ウチの回復なかったら、アンタ死んでたで!」
「もっと早く回復してよね!超痛いんだから!」
「あんなの、さっさと避けえや。トロいっちゅーねん!」
「うるさいわね、エリの術式、構成が見えたけど雑すぎ!」
「なんやねん、オマエ、やってみいや!」
「いいわよ。父さん仕込みの高度な術式、見せてあげようか?」
「うそこけっ!」
「ぐ・・。まだできないけどねっ!ちゃんと鍛錬すれば、父さんみたいな術式をちゃんと組めるんだから!」
「へへーん、だ。」
「何よ。もう!」


あの戦闘の最中に相棒の術式構成まで見て取る、とはね。
頭が下がるよ。
教授は全くの初心者であるはずの少女に驚くばかりだ。


「さて、最後のリーヴ、受けに行こうか。」
「はい!」「あいよ。」


夕暮れを過ぎ。
カーラインカフェへ。
「おっつかれさまー!」と、ミコッテの少女が出迎えてくれる。
「はは、ありがとう。」と教授。
「もう、ホント疲れたー!」と、剣帯をぽんぽんと叩き、言葉とは逆に満足な笑みのエレゼンの少女。
店内の灯りだと、オレンジ色の髪が燃え立つようだ。
「ミーはええけどな。ウチはなんかイマイチやなー。」
こっちはヒューランの少女。深い黒の髪がエレゼンの少女とは対になって印象的だ。
普段着の彼女は、革鎧の少女ともそういう意味では対照的ではある。
「まあ何か適当にお腹のふくれるものを頼むよ。」とルガディンの教授はミコッテの給仕に伝え、席に着く。
「ユパ様!」とエレゼンの少女。
「どうかしたかなあ?」
「そこは、美味しいオススメを!て言わなきゃ!」
「おい、ミー、オマエ、オッサンからたかる気か?」
「とんでもない!必然的に出てくる言葉よ!」
「稼いでから言えよ、このチンチクリン。」確かにエレゼンとしては少し背が・・。
「うっさーい!このペタ胸ひょろひょろ!」
「やるか?おい。」
「いつでも。」
「おいおい。君たち?ケンカは外でな。まったく。連携はすごく上手なんだけどなあ。」

食事の後の模擬戦で。

「ふん。やーっぱ、百年先やねー?オジョウサマ?」
「絶対、絶対にぶったおす!」
「やってみぃ。」
黒髪の少女は倒れて動けない少女に手を貸し、宿に引き上げる。


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微笑ましい。
二人の成長もですが教授の親心もどんどん育ちそうw
Fizz Delight (Hyperion) 2013年03月06日 13:53

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>フィズさん。うんw青春?だねーw
今回、里親になっちゃってるユパさんにはアレだけどw
確かに親心が出て来そうw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年03月07日 00:45

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