441書き物。それからの・・2

潮騒が遠く聞こえる中。
いつもの夜が始まる・・。ハズなのだが。
浮かない顔で。
「なあ?ウルスリ?」
ヒゲのマスターは長年連れ添った、というか腐れ縁というか。エレゼンの女性に声をかける。
「はい?マスター?」
浅黒い肌の女性は、赤のインナーめいた軽装で大人の艶のあるスタイル。
「いや、ほら。あっちのテーブルがだな、4人、て聞いてるだろ?」
「はい。そうですね。あとカウンターにお二人、とお伺いしています。」
「まあ、カウンターはご当人と、貢物だろ?残りの4人はどういう面子かね?」
「さあ?サクセサー(魔女の後継者)は来るでしょう。あとはその夫のブラディナイト(血まみれの騎士)様でしょうかね。
そうなると・・。供物というか、貢物というか、魔女の相方のご子息でしょうか?」
「ひでぇ例えだなあ。」ヒゲをしごきながら。おっと。

「おまちどー!バデロン、席は?」
「ああ、いらっしゃい、どうも。見てのとおりガラガラさ。好きに腰掛けてくれよ。」
「これで儲かってるのか?」
「いや、疫病神御一行サマが来るって話でみんな逃げ出したのさ。」
「上客に対してエライ文句のつけようじゃないか。」
「じゃあ、その上客ぶりを遺憾なく発揮してくれよ、魔女サマ。」
「言われなくても、な。」ニヤリ。
「ああ、期待してるぜ。」ニヤリ。

カウンターに座るレティシアとスウェシーナ。そして、カウンターに程近いテーブルに4人。
ぼそ・・「ああ言ってますがね、マスター。皆様の邪魔にならないように追っ払ったんです。」と、ウェルカムドリンクのワインを皆に。
こっそり内情を言う女性の表情は少し嬉しそうだ。

まずは皆で乾杯。カウンター組は最初からラムのようだ。

「なぁ、バデロン?」「ああ?」「ウルスリとはその後は?」「いきなりかっ!」
「あの、その・・。」と頬を赤らめ「籍は入れていませんが・・」とウルスリ。
「ほー。」「ちょ、おい、ウルスリ!」「いいじゃねーか、男の見せ時だぜ?な?スゥ?」
「そうだね・・ココが見せ場!」「変なテンションあげてるんじゃねーよ、隊長サン!」
「マスター・・・。」潤んだ瞳で見つめるエレゼンの女性。
「・・・。」溜め息一つ。「こんな身の上だ、おおっぴらにもできねえんでな。」
「なるほど、だから客を放り出したか。」あははと笑う魔女。
「ち、気づくと思ったぜ。」
「で、この後はどうされるんです?レティさん。スゥさん。」頬に少し赤みの差したエレゼンの女性、ウルスリ。
「今日はお泊り、明日は・・ピクニック。」
「へえ、珍しいですね。そういえばスゥさんの息子さんは見たことほとんどないですけど、あのミコッテの子がお嫁さんですか?こちらは初めてかな?」
「ええ、たぶん。息子の3倍くらいはよくできる子で。」
「それはそれは。期待大ですね。」と微笑む。
「うちの息子はそういえば初見でいきなり血まみれで登場だったから、ブラディなの?」と魔女。
「あー、それは・・俺が言い出したんじゃねえぞ?あの、なんだ、フネラーレ。
ヤツがエーテライトで血まみれの坊主を抱えて叫んでた、アレが一番でかいんじゃねえ?」
「あー、そういう事あったな・・。」振り返り、「おい!ウルラっ!」
びくっと姿勢をただし、「はい?義母さん?」「ブラディナイト、ってふたつ名に覚えある?」
「え?無い・・とおもいます・・。」「ちょっと!母さん!いきなりなによ!」「ならよし。」 
夫婦そろって、なんの事やら。顔を見合し、向かいの夫婦にもサッパリのゼスチャー。

「あ。そうだ。この子。」と目線でミコッテの少女。槍使いの少年の妻となった少女に狙いを定め。
「シャン、ちょっとこっちにおいで。」と促す。
「はいにゃあ。」とオレンジ色の髪を短くしたミコッテの少女をカウンターに召し上げ。
「なんでもスキなの注文して。」と魔女からの誘い。
「ちょ、レティ!悪の道に誘うなー!」と、隣の魔女に。 うふ。 と笑顔で応える魔女。
テーブルでは。
「あ。堕ちたな・・。」と冷静に金髪クセ毛の少年。
「だよね・・。」その妻。
「はぁ・・確かに楽しみにしてたから・・。」とアキラメの夫。

しばらくして、ウルラにお呼びがかかる。シャンと交代だが・・「はぁ、おいしかったにゃあ。」と、
席に着くなり、頭をネルケの肩に預ける。「おいおい、大丈夫なの?」と聞いてみるが。
「ああ、たぶん。」と、ネルケ
シャン、ネルケ相手で大丈夫かなあ・・。などといらぬ考えを。

なんだかんだで夜も更け。

「さあて。今日の一番は!」
「え?そんなのあった?母さん。」
「うん、バデロンとの絡みで一番は・・・。」
「えー?」「今から、ですか?レティシアさん。」「ちょっと眠いかもにゃ・・。」
「おれじゃ無いとおもう・・。」「あたし、今回絡んでないし・・。」

「シャンで決定!」
「はにゃああ!?」
「で、特別に。」
「はにゃ・・。」
「プリン。」
「あ、おいしそうにゃ。」尻尾ふりふり。
「どうぞ。ウルスリ特製ぷりん。」
「え?」尻尾が逆立つ。
バケツサイズのプリンが出てきて、「どうぞ、お召しあれ。」と言われると。
「む・・・むり・・にゃ・・・。」耳と尻尾が限界まで逆立っている。


結局、6人がかりで制覇しましたとさ。ちゃんちゃん。



「あ、明日のプラン、サッパリじゃないのー?」とはマユの弁。

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