「あ・・。」
唇を離されて。
少女はかすかに残る体温をいつまでも忘れないと決めた。
クルザス。
帝国軍や、そこらへんの魔物でも十分脅威になる、アルデナード地方。
その怖さに反して牧歌的な草原は、リムサ・ロミンサのあるラノシア地方にも似ている。
そうして、似たような。いわゆる草食系の動物が多い。
もちろん、魔物並みの強さを持った獣もいる。
が。
中には、大人しく、見た目も和めるやつらも居るわけで。
「そうそう。」
金髪のクセッ毛の少年は、一つの袋を取り出し。
「こういうのが出てきたんだよ。」
NM ノートリアスモンスター。悪名高い魔物。
それが、ついさっき現れたのだ。
モコモコの羊に混ざって。
一体だけ黒いのですぐにわかるその羊は、見た目はともかく十分に悪名高い。
だれが取り付けたのか、その羊には首に袋が提げられていて。
それを撃破した少年が。
「え?」
あたしは、ワケがわからず・・。
ナンだそれ?
「うん。これがお土産。」
満面の笑みの少年。
「あ・・。ありがとう・・。」
何が入っているのか全く予想がつかない。
そもそも、これがNMの品なんて、想像すら出来ていない。後から聞いたのだが。
取り出す。
胸元にフリルのついた、かわいいジャケット。
少し、胸元開きすぎじゃないかな・・・?
んー・・・。
紺色に、白いフリル。あとはいろいろとお洒落な細工が。
とりあえず、今の胸元を見て、ジャケットを見る。
うーん・・・・・。かわいいんだけど・・・。その・・。少し自信が・・・。
「着替えてごらん。」
目の前の少年は屈託無く、そう言った。
「うん。・・・」
そう言われると、着たくなってしまう。
革のジャケットのリベットボタンを外し始める。
半分以上ボタンを外し、下着が見え始め・・・。
「おいおい。まあ、おれはいいんだけど。」
少年の言葉に。
「あ!!!!」
慌てて胸元を押さえ、岩陰に行く。
見られた・・・。
「うー、あああー。」
うめきながらも、着替えは済ます。
どうかな・・?少し、おもった以上に積極的なデザイン?
そして、胸元以上に、腰周りがスースーしているのに気がつく。
しまった・・・。
脚の装備はサブリガしかない・・・。
でも・・・。ここでお披露目しなければ・・・。
ヘンな義務感を覚えつつ、裾だけはしっかり両手で押さえながら。
岩場の影から顔を出す。
目の前の彼は、にっこりと。
「かわいいよ。」と。
顔が赤くなるのが一瞬にして分かる。
むああああ!はずかしいい!!!!!
「マユ?」
少年の声に
「見ないで・・・。」
もう顔が爆発寸前にまで赤くなっている。ボムが居たら対決したいくらい。
「もう・・・。」かろうじて声に出す。
「じゃ、な。」
え?
えええ?
少年は剣を携えて、また違う場所に行こうとする。
さっきのキスと抱擁はなんだったの!
「え!!!そんな!!」
頭の中が混乱する。
そうだ。カナルから買ったサンドイッチがあるじゃないか。
とりあえずはコレでのりきるんだ!
「サンドイッチ!用意してきたの!一緒に食べよ?」
昼前の昼食。こういうのもいいよね!
一人頷きながら、彼の顔を見る。
しょうがないなあ、と言いたげだが。
「そっか。いいよ。」
二人の時間は過ぎていく。