潮風が昼下がりの曇り空に清々しい。
リムサ・ロミンサの夕暮れにはさらに清々しい風が吹く。
「まあ、しょうがないな。」
金髪のクセ毛はまだ湿ったままだが、とりあえずの腹ごしらえは必要だ。
碧眼の少年は、階段を降りながら。
どうしても気まずい。
ため息混じりに階段を降りる。
「あ~。」
酒場の手前まで来た少女は、一度振り返り、また来た道を戻る。
後ろ手に組んだ手をそのままに、海を観に行く。
港に見える帆船。
「はぁ。」
塔を繋ぐ橋の上で潮風になじむ。
右手で髪に手をやる。ブルーグレイの髪は短いながら、風に遊ばれる。
「うん。」
気持ちに整理はついていないが・・。
階段を降りて、カウンターに挨拶に行く。
あの・・。と、どうやるんだろうな?
「あの・・。」
「おう!坊主!プディングヘッドの名はお前のモンだぜ。」
バンダナにヒゲの店主は陽気そのものだ。先のトラブルなど気にした風でもない。
「はあ?」
「マスターのご厚意に少しは感謝すればいいのに・・・。」
横にいるエレゼンの女性は・・。
「あー。まあ、なんだか。その。アレはその、おれが悪いんですか?」
金髪の少年は、黒髪の少女とのやり取りについて聞いてみた。
「そうだな、坊主。女の扱い、ってのには、お前、慣れてねぇだろ?」
「マスター。」
「ああ、ウルスリ。ここは、ホラ、男の語らいだ。ちょっとその・・、お使いにでも行ってくれねえかな?」
「はい。マスター。 覚えてやがれ、コンチクショウ。」
「え?」
「うーん。」
なんだか数歩で行けそうな酒場の距離が遠い。
居ても。
居なくても。
酒場に通じる桟橋の縁に、肘を預ける。
両手で頬を挟むようにした顔は、果たして目的の少年に見せれるのだろうか?
トントン。
「うぇっ!」
不意に肩を叩かれ、振り返る。
「マユ。あなた、何をしているの?」
「え?え?え?ウルスリさん!?」
褐色の肌のエレゼンの女性。
「まあ、いいけどね。主役を張りたいのなら、アッチよ。」と、酒場を指す。
「えええええ?」
「じゃあね。わたしはお使いがあるから。」
そのまま歩き出す。
「あの、マスター?」
「なんだ?坊主。」
カウンター越しに二人の男。
「その、もし、もしも。好きになった相手がいたとして。その子は「待ってくれ」で、本当に待ってくれるでしょうか?」
「坊主。それは無い、な。ま、相手によるがな。」
「わかりました。」
「いい女でも捕まえたか?」
「そうですね、多分。」
「あの黒髪だけはやめとけよ?」
「言われなくても・・。」
「ちなみに、だ。だれだ?」
「それは・・。」
「まあ、いいさ。」
「あと、昼メシが食べたいんですが・・。」
「ああ、ウチには酒とツマミしかねぇ。食いたきゃ下にある「ビスマルク」ってメシ屋に行って来い。
ギルドが運営してるメシ屋だ。マズイってコトはねぇはずだ。」
「わかりました。どうも。」
「あーうー。」
橋の手すりに両手を預け、その上に顎をのせ。
潮風に髪がなぶられるのにまかせる。
そろそろ、夕暮れも近い。
こちら側だと夕日がとても綺麗だ。
「夕日観て。帰ろうかなあ。」
両手と顎を手すりからどけ、酒場の方を見る。
「もう・・。なによ。」
「なにが?」
不意に声がかかる。
「なにが?」
酒場から出てすぐのところに、見知った少女が。
通り過ぎるところだったが、独り言につい、声をかけてしまった。
突然の声に、少女は振り返るが言葉は無い。ただ、ブルーグレイの髪が風にあおられるだけ。
「マユちゃん?」
振り返ると。
今、一番逢いたかった顔が目の前に。
「・・・。」
声が出ない。
「マユちゃん?」
少年の声に反応できない。
ただ、しがみつくように、抱きしめる。
声にはならない。
いきなりの抱擁に、ウルラ自身、どうしていいかわからない。
「その・・。」
「・・・ばか。」
少女の暴言にとりあえず黙っておく。
「あたしには、興味無いですって?」
「い、いや・・その・・。」
こうなると、形無し・・・。
「あたしは、興味ありますよ、そうですよ、好きなの。しかも、なんで死にかけで、
しかも別の女に助けてもらってるのよ!意味わかんない!」
「マユちゃん。少し落ち着こう?」
目の前の少女は、眼に涙をいっぱい貯めて、想いの程を語っている。この大衆の面前で。
これは・・。おれも、言わないとな。
「すまない。その言葉におれは応えられない。」
顔を上げる。
気がついたら、体が動いていた。
とにかく抱きしめたかった。
「・・・ばか。」
沈黙の後に怒りも湧き上がってくる。
心配させやがって。やきもきさせやがって。しかも興味が無いだなんて。
「あたしには、興味無いですって?」
顔を見る。涙でにじんでいるが、金髪碧眼の顔は見なくても分かる。
この後は、もう、言葉にできることは言い切った。かもしれない。
ただ・・。
「すまない。その言葉にはおれは応えられない。」
耳に届いた。
そして、心には届いて欲しくない言葉。
目の前の少女が固まるように動きが止まった。
ああ。
女心、ってやつをわからない自分のせいだ。
「ああ、その。さ。マユちゃん?」ぎこちない、自分でもそう思う。
「はい。」機械仕掛けのような返事。
「おれは。」
「もう、いいんだよね。あたしもすっきりした。」
離れていく体を抱きしめ返す。
「え?」
「もう少し。待っててくれるかな?」
「え?」
「おれは、まだまだなんだよ。でも。」
「君の事は、とても好きだ。」
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どうもw別の女ですwww
Eraru Control (Hyperion) 2012年09月07日 08:39
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>えらっちwやっほいw
レイズさんきゅーwwwwwwwww
恋愛ネタ、ご堪能いただけましたか?w
シーンを変えながらの演出、少しムズかしかったですw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年09月07日 08:54
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とても好きだ。
キャーーーーーーw青春じゃよ~w
しかも夕日をバックにじゃと~!?
なんて羨ましい状況なんじゃろか~?w
Syakunage Ise (Hyperion) 2012年09月07日 15:32
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>しゃくなげさん、青春っすw
一応、〆なんでw
このタイトルの「始点」はここからなのですw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年09月08日 01:19
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ハッピーエンド?スタート?で良かったです(*'-')
ブルーグレイの髪の少女が変わらず「あーうー」言っていそう・・w
今度は落ち込みじゃなく、ノロけでw
Jonathan Jones (Masamune) 2012年09月08日 01:54
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>ジョジョさん、いらっしゃいw
この子は「あー」とか「うー。」しか言いませんw
ノロケ・・・ることが、さてできることやらw
スタートに行くまでが、えらく大変でしたけどねw
正直、書いていてココまでどうやってもっていこうかとw
ぶっちゃけ、1話増えましたw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2012年09月08日 04:02