243書き物。とある双子の日記。

ああ、見慣れた町並み。

そういえば、お兄ちゃんは今日も一人で森に行ってるのかな・・。


目が覚める。

「あれ?」

ゆるいウェーブの金髪を左右に振りながら

少女は自分の居場所について、少し思索すると・・・。
「あ、おはよー!」と。
赤い髪の(光の加減でオレンジ色にも見える)少女が声をかけてくる。

「ミー、おはよう。」
エレゼンの少女、ミーランはニコニコ笑いながら朝の挨拶をしてくるが。
基本的にお昼前。

「ああ、私ってこんなに寝坊してたっけ・・。」
少し自己嫌悪。

「兄さんは?」との質問に

「んー、お父さんと一緒にカフェに行ったけど、その後帰ってきてないね。」
「そっか。」
「なにかあった?」と心配げな少女に
「ううん。なんでもない。」
「じゃあ、なにか作っておくね。」
「え、待って。私もやるから。」
「えへへ、お客様をもてなすのは我が家の「家訓」なのです!」
あらら・・・。
キャンプ・リトルアラミゴでは、女子は基本的に家事が仕事。
自分みたいに武術をたしなむのは稀で、そんな余裕などなかった。
「じゃあ、お願い。」

ひとえに、剣術を学べたのには兄の恩恵としか言いようがない。
兄は普段、何もしていないようでいて、裏で色々とやっている、というのが自身の理解できる範囲。

双子の兄妹とはいえ、似ているのはゆるい金髪くらいか。性格はもとより、あれもこれも違う気がする。

「マリー?」

その声に我に返る。
「あ、え。」
「どうしたの?」
「あ、ちょっと考え事してて・・。」
「そうなの?とか言ってる間にシチューとパン、温めなおしたよ。」
「ありがとう。いただくね。」

「では、行ってきます。」
「いってらっしゃーい!」
エレゼンの少女に押し出されるように、街に出たのはいいのだけれど。
何をしていいのかが解らない。

(お兄ちゃん、いまどこ?)と指輪につけたパールを握り締める。
(外。)
んー。考える。
うーん。
子供の頃、お兄ちゃんはよく馬鹿にされてたけど。それを腕力で守ってきたつもりだったけど・・・。
こうなると、私は案外馬鹿なのか・・・?
「よし。」
開き直った者が勝ち。って誰かが言ってた。お兄ちゃんかもしれない。

いいじゃないか。馬鹿は馬鹿なりに開き直ってやろう。

そうね・・。まずは、あのカフェかな。

大きな水車を越え、坂道を降り下りる。



「いらっしゃいませ!」
エレゼンの少女、たしかカナルだったか。
が、カウンター席に案内してくれる。
「お飲み物と、そうですね。今日はリーブも色々ありそうですよ。」

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