187書き物。ある日常の一コマ。あるいは誰かの決意。

早朝のグリダニア。
霧が多く、かつ陽が射しにくい街ゆえ、薄暗いというか「白い」

「みんな遅いなあ・・。」茶色の髪、細面の少年はボヤく。
予定していた集合場所。
魔法石エーテライト。
ここからキャンプ・トランキルに飛ぼう、という話で昨日は落ち着いたのだが・・。

「あたしはネルケより先に来てたけどー。」
少女の声は少しトゲがある。


「私も居ますが?」と声がかかる。
ソーサラーのミコッテ。


「えっ?」と少年はうろたえる。
朝霧の向うから二人の少女が。

「偶然にも同じ時間に着いちゃったのよね。偶然ってあるのね。」
「そうですね。」
(このネコ、あたしを見張ってるのは確実・・、か。)
(この娘、やはり気づいてる、な。)

少し陽が見え出した頃。
「ごめんにゃあああああ!寝坊しちゃったのにゃああああ!!!」
明るいオレンジ色の髪のミコッテが走ってくる。
「先輩・・。」
「あー・・・。どうしたらいいのかしら?」
「待ちました。」

二人の少女はにべもない。

「で。誰がリーダーかにゃ?」とミコッテの先輩。

「こいつ。」
「彼。」
「ネルケ君?」
「え?」
「仕切りたそうだし。」
「適任。」
「別にいいけどにゃ・・。何か・・。」
「え?え?僕なんですか?」

じゃあ飛びますね。テレポ。アニマを使う移動術式は制限がある。
アニマの数や発動までの時間など。そして飛べる場所。基本的にエーテライトといわれる魔石の場所。
キャンプや、それ以外にも飛ぶことはできるが、基本「行った事がある」が条件だ。
が、「行った事がない」人も、「行った事がある」人のテレポについていけば問題は無い。
元鬼哭隊のネルケは幸いにも行った事がある。
(あー、よかったあ・・・。)

「アニマさんきゅー!」
「どうも。」
「ネルケ君、ありがとー。」

ここからは町まで徒歩になる。



呪術士アイリスは表情を曇らせる。
「これは・・。」
「不浄なる印形」だが形は無い。これを取り除くのは時間がかかる。
やっと見つけたこの地での「印形」彼女は町の片隅にあったのを二日ばかりの時間をかけて見つけたのだが。
さらに時間がかかるだろう。
疲労はあるが、やらねばならない。
急がなければ、グリダニアからの追撃が来る。
「はあ、全く。わたくしの責任じゃないのだけれど。」
グチの一つも出るというものだ。
「言い訳して、なんとかしようかしら?」
本音。
(呪術士ギルドもやっかいな仕事をくれたものね・・・。)

「賢者」

このひと言に反応したのが呪術士ギルド。
彼女はその件で仕事を引き受けたのだが。
アッチコッチで「不浄なる印形」という術式。これの破棄。
どういった物かはわからない、というあたりが探すのに手間をかける。
「貧乏クジ、だったかしら・・。」
背後に気配を感じる。


「見つけたぞっ!」少年から声がかかり、身構える。
なんとか「印形」の廃棄は出来たが・・。4人か。まず勝てないな。
どうやって逃げるか?真相を話せば戦いは避けられそうだが・・。


町の一角で怪しい風体の術士を見つけ、少年は(コイツだ!)と確信した。
「見つけたぞっ!」
まず槍での一撃。
呪術士はなんとか避けて、呪を紡ぐ。
炎の魔法をばら撒いて、自身に防護の呪を紡ぐ。
その間にミコッテの槍が来るがそちらは避け損ねて腕に。
格闘の少女は何故か構えるだけ。
ソーサラーのミコッテは風の魔法で攻撃してくる。


「待って。あたくしは!」言い訳を考える。
「なに?」と少年。
「本当に、何もしていない。「不浄なる印形」なるものを破棄しているだけだ。コレを置いている者こそ、討伐されるべきだろう?」
「なんだと?」と少年は槍を引き上げる。
「呪術士ギルドからの依頼だ。「賢者」の足跡を消せ、とな。これは・・。」

いきなり女性が殴り倒される。

「うるさいな。お前。」
白いローブ。目にはゴーグルだろうか。
エレゼンの男性は表情を見せない。
横殴りにされた女性は倒れたまま動かない。
いきなり現れた術士に皆が固まる・・。

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