181書き物。ある日常の一コマ。あるいは少年の憂鬱。

鬼哭隊本部。

精霊の加護を得る街、グリダニア。その北に位置する槍術士ギルドでもある。
もともと自警のために創設されたが、今はギルドとしての色も強い。
冒険者が槍を習いに来るからだが、もちろん隊員達も常に鍛錬している。

そこで一人の少年は槍の鍛錬をしながら少し考え事をしていた。

(う~ん。。どうしようかな。。母さんに言うとダメって言われ・・・。)
ガスっ。

一撃がみぞおちに入る。

思考が止まる。
ついでに息も止まりかけた。

「ぶふっ!」っと後ろに倒れ掛かる。

「ネルケ君、鍛錬に集中できてないにゃあ。考え事は後でやるにゃ?」
先輩のミコッテだ。
「すみません。」と一礼。

茶色い髪、少し細面の少年は一度休憩をもらうと、もう一度考えを巡らせる。
(カヌ・エ・センナ様の方針はすばらしいんだけど・・。
カンパニーに所属するとか言い出すと、母さん絶対反対だろうからなあ・・。父さんは賛成してくれたけど・・。)
と。
「なーに考えてるにゃ?」と先の先輩のミコッテが隣りに座る。
「わっ!」といきなりの声に驚く少年。
「ネルケ君、考え出すと顔に出るからダメなのにゃ。」
「先輩。聞いてくださいます?」
「今はダメなのにゃ。お仕事中なのにゃ。」
「では、後で。」
「それならいいのにゃ。」と席を立つミコッテ。

(そういえば、あの子も演説聞きに来てたなぁ・・。どこに入るんだろう?)


夜、近くの屋台にて。

「で、なんだったのかにゃ?」とミコッテが串焼きを頬張りながら訊ねる。
「いえ、実はカンパニーに所属しようかと・・。」
「アチッー・・・まだ熱いにゃ・・・。」
「聞いてます?」と少年。
「料理は熱いうちに食べろっていうにゃ。」
「はぁ?」
「あたいには無理だにゃあ。」
「は?」
「ネルケ君は、熱い気持ちがあるうちに行動する気があるかにゃ?」
「あ!」
「そういうことにゃ。」
「ありがとうございます!先輩。」
「じゃあ、ここはネルケ君のオゴリだにゃあ。」
「えー。」


家にて。
「母さん。」
「何?こんな時間までやってたの?」と栗色の髪の女性。
「いえ、相談があります。いえ、お願いです。」
「改まってどうしたの?」
「その、双蛇党に参加したいんです!」
「ダメ。」
「何故ですか?」と食い下がる。
「まだまともに任務に行けないような若造が、何を言うか。」
「しかし、カヌ・エ・センナ様の下、頑張りたいんです!」
「ふうん・・。」
「ダメですか?」
「いいよ。」
「え?」
「行っておいで。」
「いいんですか?」ときょとんとした顔の少年。
「世間を知るのにもまあ、いい機会かしら。」
「はい、ありがとうございます。」



パールで伝心をする。
「マユちゃん?僕、双蛇党に参加することにしたよ。」





ベッドで寝転がっていた少女はいきなりの伝心に。
「は?」

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