129書き物。対戦?

スウェシーナは考えていた。

ライバルと見た少女に全く勝てない。
向うの方では父親と、ライバルの少女の師匠が談笑なんぞをしている。

目の前には、グレイの長い髪の同い年くらいだろうと思っていたが実は一つ二つ上だった少女が拳を構えている。

今でこそ、一緒にこの鍛錬の後にカフェに行く仲だが、勝負とは別物だ。
第一、勝てばお小遣いが増えるとの話し。真剣勝負。

まず、突きにかかる。槍としては基本的な攻撃。
理由は簡単で、長い得物は取り回しが不自由だ。動かす範囲の少ない「突き」がまず基本の牽制になる。が。
「点」での攻撃ゆえ、先読みされやすいのとうかつに出すと払われて、接近されてしまう。

逆にいい点は、この牽制をメインの攻撃に切り替えるタイミングを読まれにくい事。
突き出した槍をそのまま左右に薙ぎ払えば十分な打撃になる。
踏み込みがしっかり合えば決定打になるし、そうじゃなくてもフェイントとして使える。

が、相手は格闘。

それだけならば、突きによる牽制だけで距離を取れば負けることも無い。
のはずなのだが。

間合い。この詰め方が尋常ではない。以前など、突いた槍を踏んでそのままやって来た。
槍の柄に乗って。耐え切れず槍を落とした時点で負けが確定。
そう思って、次回は下段に突くのは控えてみたが、
今度は上段に突いた槍を打ち抜いた拳で飛ばされてしまった。負け。
試しに薙ぎ払ってみたが、あっさり近づかれて殴られた。
どうにも読まれている?

「ホラン師。お見事ですな。」
「なに、子供のケンカの域をでてませんな。」



突いてからの動きには二通り。引き戻すかそのまま払うか。
だが上段につけば払うことは出来ない。まず当たらない。
下段につけば左右に払えるが、かわしやすい。飛べばいいのだ。
となると中段で払う、以外には引き戻すしかない。
引き戻すともう一度突きができるし、速度を速めれば突きだけで倒すことも十分に出来る。が。

当たらなければ意味がない。

相手の少女は、フェイントの突きをかるくかわし、
本命の突きを目を疑うような動きでかわして、引く手と同じ速度で距離を詰める。


「お父さん・・・。今日はこれで終わり。」
「まあ、しょうがないな。」
「一勝取れたら、俺が好きなものを買ってやるのな。」
「師匠!あたしには何もくれないのに!」
「食事に問題あったかな?」
「いえ。ありがとうございます。」
「まあ、皆で食事に行きましょう。最近この子達が通うという、か。まあ定番のカフェにでも。」

「ミューヌも居るかな?」
「ちょっと遅いけどね。」
「大丈夫じゃない?」
「そういえばウルスリを見なくなったね。」
「親戚のところに行くって、ミューヌが言ってたよ。」
「そっかあ、元気だといいね。」


「なあ、隊長。本気で「航路」で行くつもりをしとるのかな?」
「詳しくは聞いていないが・・一便がフェリードックに着いた、とは聞いた事がある。」
「あの辺りは海が続いてるとはいえ、「航路」なんぞ無いみたいな話なのよな。」
「みたいだが、なにもすることができんからな。」
「まあ、何事もないことを祈るのよな。」
「そうですな。」

「あ、着いたよ!」
「いらっしゃいませー!」
「ミューヌ、こんばんは!」
「ミューヌひさしぶりー!」
「って、昨日も来たじゃないですかレティシアさん!」

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