あいかわらず、ガヤガヤとした喧騒の中、カウンターに向かっていく。
目当ての相手はそこにいるはずだった。
「やあ、ハニー!逢いにきたよ。」
自称、吟遊詩人の金髪、黒い服の長身の男は、カウンターの中に居る濃いピンクのおさげのララフェルに声をかける。
「本日は閉店しました。」
返す言葉は、鋭利な刃か、万年雪のように鋭く冷たい。
ところが男の方は気にも留めず、ニコニコしながら会話を進めようとする。
「あんな子に任せちゃって大丈夫かな?」
渋い顔で、カウンターの中のララフェルも少し考えたようだ。だが。
「あの子、なんか吹っ切れたっぽいし。それに街中のトラブルくらいだったら、あたしでもなんとか収めれるから。
度胸つけるためにも、このくらいしないと。コレでも親心なのよー。」
「ふうん」
と。
「とりあえず、何か一杯、オゴらせてもらおうかな?」
「なんで?」
「や、ホラ。あの子の冒険の門出に二人でお祝いしたいじゃないか」
「なら、あの子が帰ってきたら誘ってどこでも行けばいいのに。」
「あはは、僕はお子様には興味はないよ。」
「で、あたし?じゃあ、そうね。リムサ・ロミンサでおいしいスイーツがあるらしいの。よろしくね!」
男はギョッとして、「ちょっとちょっと!今から?多分、僕の予想だと、この先僕の出番がありそうなんだ。
件の少女の行方がわからなくなってる。もしかしたら、外に出てる事も考えられる。小さい子が一人で出歩くには少々物騒だろ?」
と、慌てた様子で応える。
しかし。
「なーに、テレポしちゃえばいいじゃない。帰ってくるまでもののいっときもかからないはずよ?」
「ムチャいいますねwいいでしょう、そのかわり、お替わりとかはナシですよ?」
女将は満足そうにうなずいて「最初に頼んでおけば、お替わりとは言わないはずよね?」
と言いつつ、「ちょっと、カウンター誰か見といてー。今日は帰らないかもー」
「アンタ、容赦なしだな!」最初の「ハニー」はドコに行ったのやら、非難ごうごう。
「大丈夫よ、なんかあったらパールで連絡あるから。その時にあなたの出番じゃないのかしら?」
「で、テレポで飛べってか。先に僕だけ帰ったらきっと怒るんだろう?どうするんだ?スイーツパーティー。お代は・・・まあなんとかしよう。
で、帰りに間に合うほどの分だけで足りるのかいハニー?」
小さい体でふんぞり返って、「お持ち帰りできるものは全部持って帰るに決まってるじゃない」
だって。
「冒険から帰ってくる子や、件の女の子、ネコっこも、お腹すかしてるでしょうからね。ちょっとくらいは準備がいるんじゃないかしら?」
金髪の男は、まいったな、と頭を押さえながら、テレポの準備できましたよ、と小声で言った。