控え室にて。
「ふう。」
前日とは違って、かなりオープンな蒼いドレスの女社長。
「さてと。明日の対戦だが。」
傍らには黒いドレスのミコッテの女性。
夜会も終わり、控え室にはもう一人。
白いドレスの女性も居るが、今は二人だけの会話。
「はい、社長。おっしゃるように、葬儀屋の相手をしておけば万事よろしいかと。」
秘書でもあり、参謀でもある彼女が提案する。
「そう?」疑問符はどうしても。
「はい。思うに、ですが・・・。悪運は黒猫氏に襲い掛かることはまずないと思われますし。」
「そうだな。」
「そうなれば、おそらく黒猫氏と魔女の一騎打ち、でしょうか。亡霊氏がどう動くか判りませんが、おそらくエリスの尻を追いかけるように二人でチームにするでしょう。」
「エリス・・・。」
「この場合、おそらくは一番危険なのは発火者ですね。」
「ファイアスターター、か。」
「はい。」頷く秘書。
「まずは、魔女は黒猫氏に任せるとして考慮から外しましょう。一番落としやすい呪眼から落とすのが最善ですが、こちらはあえてエリスコンビで落とさせましょう。」
「なぜ?」
「亡霊氏の銃撃。コレに尽きます。」
「なるほどな。」
「あのオトボケコンビだと、発火者の策に気がつかづ、火達磨になるのは確定ですし。」
「言うな。ということは、だ。」
社長は一息。
「私があのファイアスターターの相手、か。」
正直やりたくない相手だ。
「いえ、悪運から始末してくださるほうが楽かと。」
「そりゃそーだな。」
ただ、どうやって相手を分離するかが問題でもあるが。
「簡単な手段があります。かの悪運は、主人である黒猫に対する侮辱を看過できません。
そこを突けば間違いなく一人で、それも激昂して突っ込んできます。これほどやりやすい相手はそうそう居ません。」
さすがの参謀。
「確かにな。」
頭に血が昇ったヤツなど、ものの数ではない。
「まあ、指針は決まった、か。」
「そうですね。せっかくですし優勝でもしてもらわないと。残ったレイが可哀相ですし。」
「そんな悲惨なのか?」
「ええ、社長には多分だまっているでしょう。ですが、正直この時期物産はとんでもなく売買が進んでいて、その書類たるや。
凄まじい事になっていそうですね。エリスなら、ほいほいっと片付けていそうですが。」
「あいつのそういう所は、賞賛に値するな。」
「それしか価値がありません。」にべもない。
「まあ、レイにはさっきパールで伝心はしておいたが。」
「ええ、聞いておりました。」
「死にかけてたな。」
「そうですね。彼女にも試練は必要と思います。」最年少で「家名」を賜ったのだ。そのくらいはしてもらわないと。
「なあ、スゥ。」
グレイの髪は今は解かれて背中に流れている。
「どうしたの?レティ。」
栗色の髪を梳かしながら、隊長が鏡面から振り返る。
「いや、決勝だけどさ。」
「今更、緊張するようなタマじゃないでしょ?」
「ま、そうだけどね。」
「で?どうしたの?」
「アイツがね。」
「あいつ、って、そのクォ氏?」
「そう。」
「決勝で勝つ気があんのかな?って。」
「そりゃあ、あるんじゃ?」
「そうか・・・。」
「なにか?」
「あたしには・・・違う意図がある、と思う。」
「へ?勝つ以外に?」
「うん。」
「その・・どういった?」
「そもそも、この大会はレセプション。それも招待された人間しかいない。」
「そうね・・。」
「で、よ。葬儀屋みたいなのまでメンバーとして居るわけで。」
「ああ・・、そういえば彼女は神勇隊のイレギュラーで非公式だったわね。」
「つまりは。レセプション(見世物)。その目玉商品が欲しい連中にアピールする場。」
「そ、そんな?」
シャンが孫娘の相手をしているのを確認しながら
「そういうことよ。なら、勝つ気よりなんらかのデモンストレーションをする。」
「たとえば?」
「銃。」
「え?」
「銃、よ。エキシビジョンにわざわざ銃使いを呼び込んでみたり、亡霊と呼ばれる銃使いを招きこんだり。実際、フネラーレに銃弾ぶち込んだバカ富豪だって、元はあのクォ経由だし。」
「あんまり聞きたく無い話題ね。」
「まあ、そうね。」
「じゃあ、どうするの?」不安な顔の隊長。
「そうね、おそらくあたしの相手がクォだろう、って向うさんは勝手に決めてる、って言ったよね。ソコを突く、か。
まずは・・あの亡霊はミコッテに御執心のようだから・・・って、他全部ミコッテじゃない!」
「そうね。」
「ったく。クォの相手はアルに任せよう。おそらく、あの社長は単独で動く。フネラーレも恐らく突っかかるから、こっちから落とすとするか。」
「本当にアナタって、戦術や戦略だと性格変るわ。」
「そうかしら?」首を傾げる魔女。
夜は更けていく・・・・・・
「フネラーレ・・・・・、ちょっと今日はヒドかったとおもうの・・・。」
「あンだあ?」
ショコラの声に。フネラーレは不機嫌に。
「死ぬかと・・・・にゃ。」
「殺す気だったンだ。当然ダろ。」
「や、でも!アレは!」
某社長にケンカ、というか、宣戦布告だ。あんなものを見せ付けられたら、引きずってでも離さないといけない。
まったくこういう時に何故キーさんが居ないのか。彼に全部押し付けてしまえば楽だったのだが。目の前に広がる光景にさすがに彼を探しているヒマはなく。
結果死にかけた。本気で首を絞めてくるあたり、かなりの怒りを買ったのは分ったが・・。
それだけでもなさそうだ・・・。ドレスとか・・・・。
まあ、そっちは趣味でやってるので、文句の出所は無いのだが。
「ショコラ。」
「は、はいにゃ!」
「今日は。ゴメン。」
「え。」
黒髪の女性はそのままドレスを脱ぐと、寝台に向かってしまい
「珍しい・・・のかな?」
茶色のミコッテは同じくドレスを脱ぐと寝台に。
「おやすみにゃー。」とだけ。
----------コメント----------
さてさて、銃使いのキャラが自分を含めて
3人(?)くらい出てきましたが、はたして
クォ氏の真意はいかほどに…楽しみです!
Akatuki Reo (Durandal) 2013年07月27日 12:26
----------------------------
>レオさん、そうですねw
まあ、かの富豪(ファーネの父)は銃使い、というよりも買っただけですが。
クォはどううごきますかねえw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年07月27日 13:43