1044トリニティ。 噂談はディナーの前に?

エレゼンの女性、ベリキートはとてつもなく悩んでいる。

恋に悩んだり、お洒落に悩んだりと、できればいいのだが・・・

緑生い茂る街、グリダニアにてとある事情から諜報員のお仕事に。
その事自体は、問題ない。
以前使えていた「主」から「暇を出す」と言われてここまで来たのだ。
幸い?主の妹子のお世話をするにあたっては、至福とも言える。

ただ。

今回の「お仕事」については、少々マズいんじゃないかしら?なんて・・・

だって・・・・。

「主、クォ・シュバルツと、豪商の社長が夜食を楽しむために、外的要因があってはならない、から見張ってくれ。」

ここまでなら、二つ返事でOKなのだ。

ただ・・・

ただ・・

ただ・

ね。



「海戦~♪海戦~~♪」
頭の先から爪先までブラウン色のミコッテは、リビングでクッションに埋もれながら、今夜の「カオスパーティー」の服のコーディネートをしていた。
全体的に同じ色調なのだが、瞳が碧色でヘタなアクセよりも目立つから、いろいろ考えて。

「ワイルド系かなあ?」「ううん?」「ワンピじゃないよね。」「うーん。」
裁縫の腕も達者な彼女だが、なんだか少し迷い気味。

「ベッキィ?」

「! っはい!お嬢様。」

「夕食を友人ととるなら、暗いよりは明るい方がいいよね?」
「は、はい。そのように思います。」
「だよねー。」

ベッキィは。
そう、この妹子がまさにピッタリ、その場所、時間に行くという。
もちろん、止めることもできなくは・・いや、ムリだ。
ならば・・・
せめて目立たないように・・・
自分の服を鑑みて。

給仕服。

基本的に、この給仕服を5着。普段着は「ナイ」

困った・・。
この格好で偵察・・ですか。
確か、かの食堂は露店だった・・し・・木陰なんてものを期待もできないし、そもそも給仕服でウロついていれば、銅刃隊や、ブレイブの連中に逆に問題をふっかけられそう。

が、顔には出さず、

「お嬢様は、何をお着になられても似合ってらっしゃいますから、大丈夫です。」
ギリギリ及第点?の応えしかできなく・・・

「ベッキィ?」
返してくる彼女の瞳は、「何かある?」と、暗に語りかけている。

こうなってしまっては・・・。
「実は、クォ様が商談に赴かれるのが、まさにその食堂なのです。」
「へー。」
「驚かれないんですね。」
「わっちの耳は、伊達じゃないんだよ。」
「失礼しました。」
「ただまあ、今回はさ。わっちの付き合いのある、友達との食事会だし。邪魔はしないって。」
「クォ様はそのことをご存知で?」
「さぁ?ベッキィが「知らなかった」ら、仕方ないんじゃない?」
「そうですか。   では、何時頃に?」
「んー。一刻くらい後。ベッキィは、先に行ってていいよ。」
「・・・はい。(ワタクシが出向くのも分かっていられたとは・・)」
「あ。やっぱ来るんだ。じゃあ、その服なんとかしないとね~?」
「へ?ほぁ?(カマかけ?ですって!)」
「まぁまぁ♪」「お嬢様?」「いいじゃない。」「なにが、ですか?」「お洒落をするのもいいって話だよ!」「ひぃ!」「こら!逃げるな!!」「お許しを!!」
「フネラーレの時には喜んで羽交い締めにしてたくせに♪」「くっ!」「ほれほれ、お縄につきなさい♪」「・・はい・・・」

もう、観念するしか無いのであった。



さてもう一方・・・


「うん、OKだよ。海戦で。」チョコレート色のパールを仕舞うと、明るい茶髪の彼女。
エフェメラは友人二人にニッコリサイン。
「ワタシ的には、敷居が高い気がしたんだけど。」
「そう?魔女殿のお膝元だから?」グレーの髪のミコッテ。エリス。
物怖じしないのは、立派な役職に就いているからでもあり、「魔女」には覚えがある。 と、思う。
「ボクは初めてかも。それに魔女殿は居られるのだろうか?」モスグリーンの髪のミコッテ。
本日の主賓。パニッシュ。

「あ。それは・・・」「私の知ってる限りだと、今はグリダニアに居るんだって。」「エリス、すごい。」「えへへ・・」「じゃあ、今日のところはお会いできないんですね。」
「あ。そうだね。」「ネタがあれば、来るかも?」「エリス?」「いやいやいや!」

じゃあ、夕刻にベスパーベイに集合してね。 とのショコラからの伝言をつたえ、ひとまず解散。


「海戦。かぁ・・最近、また忙しい?とのことだけど?うん?」
エリスはとりあえず事務室に戻り、書類のチェックと捺印に追われる。
(あれ。そういえばマルス社長から定時連絡ないけど・・・いいのかな?)
あればあったで、問題が大小なりとも出てきて、今後の方針にいいのだが・・・
もしかして、大口の窓口を自分で開拓してるとか!
カンのいいエリスは、この後・・・


パニッシュは、とりあえず宿を取り、夕餉の会に何を着て行こうかと悩み中。
ひょんなことからお祝いをされてしまう、主賓になってしまい・・
「う~ん?ドレス?」
なにせ、かの食堂には行った事がない。どんな場所なのか見当も。
「う~ん?ボクとしては・・」
つい、鎧装束に目が行ってしまう。それはそれで仕方がないのだ。そう、叩き上げで戦闘技術を身につけたからには。
「主賓だよぉ。それにさ、どっかのダンジョンに行くんじゃないから。」
とはいえ。
ドレス、か。
かつてのイベントで貰った、フリフリや、東方風、は・・
「無難にいこう・・」
結局、ハーフローブにショートパンツという、とてもカジュアルなスタイルで。
(うん。ボクは、うん。このくらいで)

とはいえ、そこそこの装備なのは、周りからすれば一目瞭然で。
ソコの所がちょっと分かっていたとか、いなかったとか。


「ふにゃん。」
エフェメラは、家に戻って。
「お祝いだね。何かいいの無いかなあ?」独りごちて。
う~ん。


花火。
これなら問題ない。
あ。
しかしながら・・安価で。かつお店で盛大に使うとなるとかなりマズい。
そもそも、食事なんだし、お菓子の持ち寄りとかNGで。
う~~~ん?

そうだ。
メダリオン。
大ぶりの貨幣に見立てた装飾品。
コレに名前と、プロフェッサーの文字を入れれば!
残り時間が怪しい中、なんとか仕上げる・・・


夕暮れ時。

待ち合わせ場所に4人のミコッテが。

「わっちが、ショコラです。よろしくね。」
「ボクはパニッシュ。この度、お祝いをしてくれるらしくて。ショコラさんには、感謝です。」
「わっちがお支払いじゃないよ?」
「あああ、誤解が・・・ワタシが言い出しっぺなので・・」
「エフィ。問題ない!」
「太っ腹?」「デブじゃねえよ!」


海戦食堂にて。

「俺が居たら目立つかな?」漆黒のミコッテ。
「だな。」主人、アレッサンドロ。

「とりあえず、釣り人に徹するよ。」
「あいよ。大物揚げたら、買い取るぜ?」
「いや、その時はメインで出してもらおう。」
「わかった。他に要件は?」
「怪しいエレゼンの女が居るかもしれないが・・気にしないでくれ。」
「はあ。」
「後は、魔女殿はお帰りではない?」
「そうだな、スウェシーナ殿と歓談してるらしい。」
「そうか。」

妹の行動が気になるが・・・今のところ、グリダニアで大人しくしている、らしい。
らしい、というのも。
大人しすぎる。
(何か企んでいやがるな・・)


4人のミコッテ女子は、「海戦食堂」の席に案内される。
そこで、席の位置。

「わっちは、パニさんの席には・・」
「ボクはどこでも?」
「エリスさんはコッチで、エフィさんはこの席。」
「うん。」「いいよ。」

(この後、現れる二人に・・・)

「では、パニッシュさんの、プロッフェサー記念!かんぱーい!」

祝杯を置いた後。

見ていなかったコトにしたい面々。

一人、ショコラだけが明るく、バンバンと注文を始め・・・

「うん。おいひぃ!」
「なるほ、ど。」
「でしょー?」
「だねー。」

舌鼓を打ちつつ、件のペアにも視線がいく。

(あの、社長さんですよね?)とは、主賓のパニッシュ。
(そうなのにゃ。私も、イマイチ事態を把握してないんです。)エリスは、弱気な発言。
(わっち情報でよければ、お売りしますよ~?)
(ショコラさん~)エフェメラが茶色いミコッテに涙目線。

「いや、ここは。二人はそっとしておいて。こちらの宴を楽しもうじゃない!」
音頭を取る、エリス。
「ですよね!」「わっちは元より!」「ありがたい!」

ただ・・
気にならないわけでもないので・・・


「ホントに商談?」
「というと?」
「婚儀の持ちかけとか?」
「え~、そうなの?」
「兄、、御仁が、商談以外には無いと思う~」
「ショコラさん、他に情報ないの~?」
「有料です。」
「じゃあ、いいや。」「何が!?」「別に。」「パニッシュさん・・・」
茶色のミコッテは、少しこたえたようで。


とりあえず、エリスとしては。
パールを取り出し。
(お姉、社長が黒猫と対談してる。)
(内容は?)
(聞こえるような場所だとマズイでしょお?)
(理解ができてるようで何より。しばらく見ておいてね。)
(ふぁーい。)


社員、情報屋、冒険者、職人。

なんだか、色々とややっこしい「場」だ、と。
今更ながらに。

「社長に限って・・」
「兄様に限って!」
「ボクは聞いていないからね?」
「なんだか、大丈夫?」


コレは。
場合によっては一大事。

だけど。

各々、この二人に直接問うわけにも行かないので・・

「今宵はこれにて!」
エフェメラの一声。

「はーい!」
正直、この仕切には安堵を覚える3人。

では。お開きに。


「うんうん、なるほど。わっち的にはいい情報が多いね。」

「ボクにこんなにしてもらって。ありがとう。」

「パニさん、何いってるの~」

「エフィにしては、中々の行動力。」

「ぶふ~~、エリスめ。」



グリダニアに戻ってきたショコラ。

んーむ?まさかの兄と社長の色恋は・・無いよね。
業務提携?無くはない・・
では何故、二人だけで?
困った?かな。

とりあえず、コレは噂話としてカタを付けておこう。

給仕のベッキィがまだ戻ってきていないのが気になるけれど。



あつらってもらった服。
濃いブルーに、オレンジのあしらい。

ベリキートは、浮かれ気味でベスパーベイでしばらく・・
そして。

「あ!」

肝心な偵察を忘れていたのだった。

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