1036トリニティ。 ミコッテ達の思惑だったり、違ったり。

ふにゃあ・・・・

潮風に乗せて、あくびを一つ。

昼下がりのリムサ・ロミンサは、ポカポカ陽気と潮風でなんとも眠気を誘うのだ。

私、レオナ・レオンハートはこういう時にどうするべきか知っている。

当然。

昼寝。
(ミコッテはかくあるべき!という信条がある!)


巴術士ギルド、こと「メルヴァン税関公社」をささっと逃げ出すように(メリー「どちらへ?」レオナ「お昼の時間!」)

コレでまあ、問題はない。
両親は第七霊災以降、というか、その前に「旅行にいってきま~す!」などと抜かして、トンズラ?して、恐らくは第七霊災の被害は受けていないんだろう。
だったら、連絡の一つもよこせッ! 
というのは、年頃のせいなのか。

む~ん。

リムサに居着いていた兄が召喚士になる、といったものだから(今は一人暮らしだけど・・)
私もついつい。
まあ、あれよね。
うん。巴術のナンたるか、はわかっているんだよ。うん。
こう、かわいいカーバンクル(カー君)を呼び出してですね。戯れる。素敵な術・・・
と、先日言ったら怒鳴られた。 なにも怒鳴ることないじゃん?もう。

なので、午後の授業はほったらかしで昼寝に。


広場や、波止場など、色々あるのだが、兄がもしかすれば来るかもしれない・・・・
なので、少し離れたベンチにごろり。

なんでも、かの「剣聖」と婚儀を挙げる、などと・・・正直信じれなかったが、どうやら本気らしい。

「剣聖」とは、面識はないけれど、少し年上のエレゼンだと聞いている。
でもねえ?
「剣聖」だよ?
うーん。 私の中では、「剣聖」といえば、ルガディンのおじ様だったのに。
少し納得が行かない。
もしかすれば、ウエディングドレスを着ているのは、そのルガディンのおじ様。。。

ぎゃあああああ!!!!!ないないないし!
その逆もまた、ありえない!!!!!!!断じて。

昼寝のつもりが、夕暮れに。
「あっちゃー、また明日の講義でブツクサ言われちゃうか・・」
昼寝のつもりが、妄想に陥って、頭が真っ白になりかけたのは誰にも言えない・・

私は、下宿に帰る前に、伏線を張ってから戻る。
「あ、すみませーっん。実は、その。兄が婚儀を挙げる、というんで、ちょっといろいろ。」
なかなかの言い訳だろう。実際にそうなのだから。
「しかた無いわね。リガルドさんにはよろしくね。」
うまく回避。

しかし、これをダシに出来るのも限界が近い。
式を挙げてしまえば、もう使えない。
どうしようかしら?

下宿に帰りがてら、レストラン・ビスマルクに。
此処は、兄がかつて働いていて、私も少しながら・・まあ、いまでもウェイトレスのバイトをしている。
最近は巴術の受講で、中々入れないが・・・

夕暮れの中、相変わらずの盛況さを見せる店内(裏手から)に。
「おはよーございまーす!」
私の声に予想外の声。
「おお、いいところに来た!レオナ。すぐに給仕服に着替えてくれ。」

「へ?」
ホール責任者、スターニョ。
長めの銀髪を後ろに流して、きっちり纏め、アゴ髭がインパクトのあるイケメンのエレおじ様。
普通に声を掛けられると、キュンとくるが、上司としては・・・かなりコワイ。
「ムリか?」の声に。
「あ、大丈夫でうぅ・・」  だって・・。

「そうか、なら話は早い。2秒で着替えて来い。」
「ムリ過ぎません!?」
「チッ。30秒やる。」
「は。。。はあい!」

あれ?私、何か悪い事したのかな?え?
急いで更衣室に向かい、着替えを済ませると、スターニョに挨拶を。
「おはようざいます。」
「ああ。おはよう。さて、君が来てくれたのは僥倖といえるな。」
は?
なにがなんやら?

ポカン、としていると・・「アッチだ。視線あわせるなよ?」と頭をゴキっって音がしそうなくらいにマゲられて・・
視線、以前に首。くび。クビ。死ぬ。

とりあえず、視界に写ったのは。

ミコッテが4名。
もう宵にさしかかり、テーブルにキャンドルが灯るなか。
その一卓は、確かにこう・・

この、ビスマルク。
三国一の高級レストランとして、ギルドすらも運営している。

なので、ここで働ける、というのは一つのステイタス。
もちろん、私もそれを持っている。
・・・・兄が・・・一枚、噛んでいる、のも後から知ったけれど。かと言って、腐るのは本意では無いし、誇りにすらおもっている。
実際に、高級店ならではの接客技術を教えてもらい、実践できたこと。

「ムリすぎやしませんか?ねえ?」
給仕長に無理やり視線を。

「まあな。あちらの席にはお前を近づけたくない。が、そのせいで人出が足らん。その分を補え。」
「えー!私、明日、巴術の試験あるんですよー?少しならいいですけど、長引いたら絶対ムリですから!」

少しばかりの誇大広告を交えて、なんとか早期撤退に結び付けたい・・
だって、視覚の端に映っていたのは・・・

最近、ちょっと。と、意味不明な理由で黒髪を桃色に染めた兄。迷惑千万!
しかも、テーブルを囲んでいるのは、ミコッテの女性ばかりだろう。
一体全体、何がどうなのか?
今すぐ、パールで兄に叫びたい。

ジタバタする私をなだめながら、「片付けや、その他に専念してください。」スターニョは指示を出しながら、件のテーブルにワインの継ぎ足しを。

こんにゃろう・・・

しかし。
どうやら、VIP?扱いなのだろう、普段以上に給仕が貼りつている。
これでは確かに人手が足りないのはわかるけれど・・・
身内を弾くのもどう?これはこれで・・・うーん?
私としては・・
お皿を下げて、料理を出す。
の、仕事なのだけど。
ちょっと納得が行かない。

そこで。

「ねえ、チャーリス!」
会計担当ながら、古株に。
(ねえ、兄貴のテーブルって、誰が座ってるの?)ぼそぼそ。
(はあ。やっぱ、分かるか。アリティアさんトコ。好奇心でクビだけは突っ込まないでくれよ?)
(へ~い。)

はて?
ん?
アリティア産業といえば、物流を始め、かなりのやり手の企業。一体、なんで兄が?んん??
どうにも気になって仕方がない。
しかし。コレは・・・美味しいニオイがする。
どうにも、この感覚だけはハズしたことはないのが私の自慢。(親からは、ただの気のせい、兄からは、冗談抜かせ!)など、散々だが。
私はコレまでで、そういう失敗はしていない。
というわけで、あの卓にどうしても近づきたく・・・
チャンスはきっとある。

そして、チャンスはひょんなところから訪れた。

「ありがとうございました~♪」
隣の卓のお客がお帰りになり、テーブルリセットをするメンバーが自分しか居ない!
(やりぃ!)
もちろん、兄がいるなんて露とも知らず・・な感じで。
食器を片付けながら、テーブルのメンバーをちらちらと。


そして。
わかったのは。
そこに居たのは、全員がミコッテでは無かったこと。

赤毛のヒューランの女性がいて。

その次。
噂の女社長はともかく、桃色の髪のミコッテの青年。
てっきり、兄だと思い込んでいた。

けど。

にゃああああああっ!まじかっっ!!!
なんとも柔和なマスクの男性は、兄ではない。

ぽけ~・・・


「おい?レオナ?おい?」
はっ!

いかんいかん・・・私としたことが。
少し見とれて・・・いや、コレはあれだ。「ひとめぼれ」というやつだ。
兄がトボけた声で、「惚れた。」と剣聖とのことを言った気持ちが今わかった。

コレが。惚れた、か。
うん。

「おい。レオナ?」
この場では大声は出せないが鋭く届く声は耳に。

「あいにゃ。」サービスマンはいつでも沈着冷静なのにゃ。 あれ?

「大丈夫か?」と声を掛けられて、「うん。」とだけ。
「巴術の勉強帰りにイキナリだったから。」
「ああ。なるほどね。」
顔なじみのスタッフのララフェルの青年。

いや。ララフェルは抱きしめたくはなるが、恋愛対象ではない。すまん。
「それではまた~。おつかれ~」
臨時収入を得て。ホクホクするのは

このなんとも言えない出会いから・・。
うーむ。
どういう集団だったのだろう?
というか、出会いですらない。これではダメだ。
そう、「彼」に逢うための手段を講じないとにゃ。


そうだ。
兄に聞くのが一番早い。
なにせ、婚儀の会場をまさしくアリティア産業にゆだねているのだ。

今は二人暮らし、とはいえ・・兄は冒険に行きっぱなしなので。ほとんど一人暮らし。

しかし、パールを使うのも少し気が引ける。
うーん。
まず。
この動機だ。
いきなり、アリティア産業サンとこのイケメンが気になった。
いや、ムリ。
が・・どうやったら?
むぅ。
明日の講義などより、よほど気になる。

・・・
そう、そうだ。
彼はこの街に居るのだから、こっそり。
後を尾けてみるのもいい。
そう。ナイスアイデア!

明日、ちょっと授業をサボって張り込んでみよう・・・

そうと決まれば、水浴びを済ませ寝台に。

(にゅ~、逢えますように~・・・) 



「ねえ、お姉ちゃん?」
「どうした?エレン。」
「今さっき、給仕の子と目が合ったんだけど。」
「お前というやつは・・・。」
「社長。エレン氏は首輪を付けておいたほうが?」
「いや、いい。コイツは私でないと手綱が保てん。」
「ですよね・・」
「レイ、今日はご足労だった。」
「いえいえ・・」
「剣聖殿とのやり取り、実によかった。マンダヴィル殿との会談に役立つ。」
「痛み入ります。」



(にゃ~・・・麗しの殿方~~・・・・むにゃ・・・・)
夢の中の少女。


「ん?リガ?どうかした?」
オレンジ色の髪の剣聖。
「いや・・。なんとなく、背筋に悪寒が。」
「マスター・オブ・リング」の二つ名を持つ彼をして・・・
(イヤな予感は当たるもんだ・・。特に、アイツ・・・レオナ。)
「風邪?」
「いや。ミー。問題ないよ。ちょっと心当たりがあるけれど。」
「えー、ソコ黙る?」
「ああ。妹が居るのは言って無かったか。」
「初耳。」
「すまない、まだまだ修行中でというか。そそっかしいので。」
「ふうん。」
「婚儀には呼ぶから、その時に改めて紹介するよ。」
「うん、ぜひ。」



未だ、爆弾は信管にたどり着いてない。

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