1028トリニティ。 あるいは開幕。の続き。「いろいろ・・・かも?」

それぞれ、思い返す。

ということは、いいことだ。
それは、反省を促し、成長へと繋がる。

例えば。



「っもう!」
オレンジ色の髪を肩あたりで切りそろえたエレゼンの女性。
「エリって・・・もう、ちょっとさー?」
ジロリ。
と、夫を見つめる、のではなく。
睨む。

「い、いや・・俺に言われてもだよ?」
ミコッテの青年は、普段は大人しいけれど「爆発」というか、「暴発」的に意見を述べる妻を見て。
それも、手を振りかざしてなら、たしなめるのも楽かも知れない。

この・・・・「視線」だけで、暴力を振るわれては、打つ術がない・・・・

「涙目」「キツイ眼差し」「吊り上がった眦」とくれば、怒り炸裂だ。
とはいえ、彼女はそれ以外は涙をこらえきれずに、流すしかしない。

「わかったよ、ミー。イシュガルド方面に行ってみよう。スウェシーナ隊長にも通達しておく。」
「・・・・うん。」


数日後、到着した彼の地には。


「おい。ミー。素敵なカーニバルをやってるみたいだ。」
分厚いローブのミコッテの青年と違い。
「うん。リガルドさん。」
くすり。微笑みを。
「おい、それって・・」
「いいでしょ。あの時みたいで!」白銀の鎖鎧を身に纏った「剣聖」は、一直線に巨大な竜に立ち向かう。

「あー、やっぱこうなるか。」ミコッテが回復の頁をめくっている時に。

「お。お前らも居たのか。こういうのはいいな。いいだろう?」
「ですぅ、ししょー!」

黒いエレゼンの男に付き従うララフェル。
「お気をつけて。」とだけ、召喚士。


イシュガルドが本格的に、竜族に攻めこまれている、との報を受け、各地の冒険者達や、部隊も参戦しているようだ。

なんでも「結界」が破られたらしい。

そのために、とんでもなく巨大・・彼らで言うところの「若造」が、城門を推してまかり通る、と言うわけだ。

応えて、イシュガルド教国は竜騎士団を配置すること無く、神聖騎士団のみをもって当たらせていた。

「コレはあかんのとちゃうか?」ブロンドの女性。
「そうやろか?」応えて
「ユーリ、こら、士気に関わるで。あんなデカブツ。抑え切れたらええけど・・。ああ、またアイツか。騎士サマモードもええけどな。」
「プチってなるかな?騎士さま。」
「なったらなったで、旦那がキレるやろ。そうはならんて。」

冗談抜きで、4,5人はひと踏みできる「竜」

「まあ、やらんとなあ。」「せやね。」
姉妹は分担して配置につく。



僕のお仕事ッテ、潜入・・・だッタよネ?
黒衣の弓使いは、器用に走りぬけながら、巨大な竜に丁寧に矢を撃ちこんでは、城門を目指して・・





とある執務室。
「社長。今回の書類です。」
グレーの髪のミコッテは、新入りの女性を引き連れて。

「ああ。ようこそ。アリティア産業へ。とはいえ、子会社も増えたので。ね。」
「よろしくお願いします。ユキネと・・」
「ああ。うん。悪かった。自己紹介はもうお互い済んでたよね。セネリオ?」
「はい。ユキネ、まずは社長室の配置を覚えてください。」
「はい?」
見渡す限り、行き届いた感じ・・・高級な調度品と、センスのある小物。
「これは、私が今朝。手直ししておいたもの、です。半日後には崩壊していますから、元通りにする。コレが最初の勤務です。」
「へ?」
おもわず・・・
「いいですか?目の前の魔物は、この部屋をたったの数時間で破壊するのです。それを整えてから、が私達、秘書の執務となります。
故に、私が執務に没頭できるよう、アシストをしてください。」
「・・・あ、はい・・。」ユキネは・・・

「ちょとー?せんちゃん?言い過ぎ?」
「・・・」
「セネリオ。言い過ぎ?」
「いえ。事実を認識してもらわなければ、彼女に苦痛を与えてしまいます。」
「ぐぐ・・・」
「お分かりいただけましたら、午後のお茶の準備を致します。」 「では、ユキネ。ついてきなさい。」
「はい!」

そそくさと出て行く二人。

その後に、イシュガルドの話題がパールで・・

「乗り遅れたか?」社長は先程の無駄口は何処へやら・・・
(そうか。わかった。)



奥まった一室。

とは言え、壁も天井もなく、浮島のよう。

「本日、おいで願ったのは、申しようもありません。」
グリダニア国家元首 カヌ・エ・センナは、客人を見つめながら、嬉しさと、憂いを。

「どうぞ。こちらへ。」

「いえ、カヌ・エ様。あたしみたいなのに、そんなに構えられたら困っちゃう。」
「あ、そんな・・」
「そうだ。その女は只者ではないよ。」黒いスーツ、幅広の帽子の紳士。
 
微妙な空気が漂う・・・

「あの・・。」声を上げたのは、カヌ・エ。
「そうだね。まずは、テーブルへ。どうぞ、レディ。」
「まるで、この場の主役みたいじゃない?黒衣。」
「それは大胆かつ失敬では?」
「主催者は、カヌ・エ様。あんたじゃないわ。」
「そういやそうだ。失礼。では、改めて。」

3人が席につく。

ここ「不語仙の座卓」には、参加者の会話と、ささやかな水音だけが続く。

「それでは・・・。」切り出す、角を持つ祭祀の主。カヌ・エ・センナ。

殊勝に聞く振りをしてはいるが、どこか遙か・・・を見ている青年。
そして。
「それは。困った話、ですよね?」決意めいた表情を浮かべる女性。

「はい。皆が・・皆、おそらく。例え、氷の巫女だとて、今回の「竜の大乱」とでも呼ぶべき侵攻は、望んでいなかった、と思います。
彼女もまた、人と、竜を繋ぐ架け橋たらんとしていたはずなのです。」
 悲しみの表情を・・

「困ったものだ。」
黒衣の青年。
「いつものセリフでしょ?」魔女が問い詰める。
「いや。俺もそこまで悪党じゃない・・・って。」
「そりゃ、そうでしょ?この女たらし。」

いつもどおりのケンカを、ハラハラしながら見つめて・・「そのへんで・・」と、だけ・・

「そうだよ。魔女殿。確かに、母御前の御霊を扱った。が、それは「影」のひとりで、「俺」では・・いや、おれか。この森は広大だ。
それを自然と分けるよう、できている、と何度説明すればわかるんだい?」
「テメエの顔、見てるだけでハラが立つ。」
「おぉ、怖ひ。カヌ・エ。 なんとか言ってくれ。」
「・・・黒衣様・・・そのような・・。レティシア。どうして・・?」

一瞬の視線のやり取り。

「取引、成立。あたしは、それに乗った。よ。黒衣。」
「ああ。了解した。カヌ・エ。森の事は俺が責任をもって守ろう。では、な。」

影に解けて消えるかのように青年は・・・

「やれやれ。って、独り言が増えたら、そろそろダメかしらね?」
魔女はグレイの髪をそっとなでながら。


「レティシア。」
声を新たに。
「わが盟友。どうか知恵を。」
目の前には、先の大戦を生き抜いた「賢者」ではなく「知恵者」。

溢れんばかりの「知識」ではなく、「手持ちの知識を、力に変える」。

雨が降れば、「雨だ。」ではなく、「濡れないようにするためには?」を最優先でできる、稀有の存在、だと思う。

「いろいろと問題がありすぎます・・・・」
もう、説明をしているだけで、どうにかなりそうなのに・・・この魔女様は・・・
「ちゃんと聞いています?」もう、涙目のカヌ・エ・センナ。


「カヌ・エ・センナ様。」魔女は、問いかけるように。促す。
「いえ、いいのです。この国、さらには、エオルゼアのために、もう少し力を貸してはくれないでしょうか?」

国家元首とは言え、先の霊戦の起こるまで眠りに就いていたのだ。
種族ゆえ、とは聞こえがいい。

故に、内部に腐敗が浸透していたとも。
その「排除」を黙認していたことも。
全てを他人任せにしていたことも。


責任を取る順番が来たのだ。
それを、果たせずして、なんのための・・元首なのだろう。

それに。

「あー。はい。いいんですけど。このくらい、ざっくりした使徒?」笑顔で「いいの?」

涙があふれるが、気にしない。
「それが、貴女のいいところなのです。天魔の魔女。」
「そっか、そう言われちゃうと。 張り切っちゃうか。ね?」

「頼りにしていますよ。」
「はぁ。こういうのに弱いんだ。あたし。」
魔女を名乗る女性は、一旦頭をうつむけ・・・
振り上げる。
「ヤル気、出るでしょ!」 不敵な笑みを。 釣られて、笑みが出る。

「ご武運を。」森の御霊達に・・ああ、さっきの黒衣は別だ・・あの・・
そこに
「そんな台詞は向いてない。」
魔女は目の前で。
こう。
唇をぐっとヨコに。
「きゃーー!がんばれーーー!  て、やんだよ?」
「は?」
「それが、ね。煽るのが一番だよ!」
「そうなんですか?」
なんだか、こう。戦意高揚の台詞や、台本の打ち合わせはしたことがあるけど・・
この、二人きりで・・・
その?
「なんだ、やらないんだ。そっか。じゃあ、行くね。」

あ。ダメだ。ダメ。
コレはやらなければ、じゃない。

やりたいんだ。
そう。

「きゃー・・・・!」できるだけ大声で・・・
「がんばれーーーーーーーーーー!!!!!!!」
もう、衛兵なんて気にしていられない。
思う存分、叫んだ。
これが、応援なんだ・・・

両手を振り回したのはいいけれど、杖を持っていたのを忘れて、・・・ぽ~んと飛んだ杖を探しにあたふた、と・・それは黙っておこう。



可愛いなあ。
移動術式の前に言った一言、覚えてるかなあ?
ま、いっか。提督によろしく・・・と
後回しで。

魔女は蒼い光に・・


着いた先には。
「また、貴女か。ちょうどいい。作戦のすり合わせをしよう。そこの黒いヤツも一緒だ。」
提督は、執務室に。

「叱られたよ?」
「お前のせいだな。俺は時間通り、だ。」
「あら。レディを待たせるつもりは無い、ですって?」
「当然だろう?人災。」
「失礼ね、黒猫。」

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