1022トリニティ。 開幕のベルの時間が・・・鳴る。 (その手前)

見つけた気がした。
たぶん。

カフェ・カーラインには、爽やかな風が吹く。

「そうだね。あ、モーニング?て言うんだっけ?」モーニングセットを注文し、カウンターに座る少年に。
女主人のミューヌ、そして、こう返す。
「エ・スミ・ヤン。さま?ええと、こういう感じでお会いするって・・?」
「カヌ・エ様が・・。あ、うん。僕に、様はいらないよ。ただの人なんだから。」
「・・・はい、モーニングですけど、サラダとスクランブルエッグ付きの、「ぷらす」があります・・。」
「じゃあ、「ぷらす」で。」
「はい。・・・・モー+、1!」キッチンに声を届ける。
その後の返事は気にせずに・・・
ホールのミコッテの少女には悟られないように、話を進める・・
「その?」
「瞑想窟には、黙ってここに。ですので、できれば・・」
「え・・・と?」
「この場では、それほど大きくは話題にはなっていないでしょう?」
「ええと?」
カフェの女主人は・・・

「知らない、とは言えない立場、もしかすれば、私達よりも情報をお持ち、でしょう?」
角を持つ、少年のような彼。

が、同じく「角」を持つ、種族が数人。
入国している。

ミューヌとしては、「種族」に囚われる事のないように、を願っている。
が、一部の偏見はある・・。
なので。
「はい。当然、情報は出します。冒険者ギルドを任されている、この免状に懸けて。」
「いいね。ただ。くれぐれも面倒は起こさないで欲しい。」
「それは、そうね。    ああ。失礼。」

「モーニング上がりました!」
「ありがと!」
キッチンからプレートが届き、いいタイミングでドリンクが。

「おまたせしました。」

カウンターの前に座る青年?は、「いただきます。」とだけ。

「おあがりませ。」
ミューヌは、巻き込まれる親友達に・・・できるだけ。

そう、できるだけ、気持ちが届けば、と。祈る。



見つけた気がした。
たぶん。

「やっかいごと。ね?」
乾いた空気、埃を孕んだ風。そして、年中、蔓延している熱気。

単に、気温や、湿度といったモノではない。「体感」できるモノ。

今、この「粘度を伴った空気」が、街中では。そう。
「充満」している。

オカシナモノは、すぐ隣にいる。

ウルダハ。

三国の一角、「商都」と呼ばれ、繁栄と挫折の天秤が「シンボル」

その中。露店での一幕。


「マユちゃん、大丈夫?」ふわっとした金髪の女性。色白、物静かな雰囲気。
「あー。こっちは色々と面倒?かも。」ブルーグレイの髪を肩で切りそろえた女性。


二人は、少しばかりややこしい関係。

まず、金髪の女性には、双子の兄が居て、向かい合う女性と夫婦、である。
で。年齢的にはふたつ下、(だった、はず)だけれど、関係上、「義姉」。
さらには。
自分も婚儀をした男性は、二人を年齢的に3つ(たぶん)上。
要するに、義兄弟、義兄妹?もう、ワケがわからない区分になって・・。
(マユちゃんは・・5つ年上の・・ファーネが義弟であって・・・兄さんは・・アレ?)

立ち位置は微妙なマルグリットだけれど・・

だからこそ?か。
「青いの対策、とか・・?」
「あー。アレか・・。この前、ブチのめしたんだけど。」
「マユちゃん!?」
「マリーこそ、気をつけないと。」
「いや・・あの・・?」
「マリー・・・、席を増やす必要がありそう。」
「え?」

そこに、ミコッテの二人連れ。
突然の割り込み。
でも、マユは動じずに。

「あ!すみません!えーっと!」
「コーラル、と言います。コーラル・ラグーン。」

「え?」
「トリコロール、と言えば早いですかね?」
「は?あ・・!」
応える「魔女の後継」は、唖然。

「事態は、少し以上に進展しています。」
「です、あ、わたしは、リトリーです。ええと、その。義妹というか・・・」
「すみません。リトリー、自己紹介は後で。」

変装した二人(しきれていないかも?)は、まず飲み物をオーダーしつつ。

「何?」
まずは、「魔女の後継」が切り出し。
「ウソ?え?本当なの?」

「ええ。核心、をついた話題でしょう。」
トリコロールが応え、「みたい。」と、リトリーが念を押す。

これは・・。動き方が変わってくる、だろう。「最善は、家庭を守る」だ。けれど。
隣を見る。
金髪の義妹は「あったりまえじゃないの?」と視線で返してくる。

そうだねえ。そうだ。母さんは、今もどこかでヤラかしているだろう。

「ドコが一番?」つい。
「マユちゃん。まずは。家。子供達が心配。」
「そか。おとなしく・・・ね。」向かいの二人に視線。
「そう。私達が接触したのは、あなた方が感情的に動かないように。」「です。」
「ほう?」
「マユちゃん?」

「暁の・・血盟が、・・その後もクリスタル・ブレイブとの連携を、信じていたのです。」
唇から・・

「ですが、連中はっ!」紅い液体が滴り・・・

「コーラル?」
「ごめん・・。なので。私達は、二人で内偵を進めてきました。」
「そして、陰謀の根源に。」
「ああ・・そうだ、リトリー。が、少し踏み込み過ぎた。」

「で?」
「私達に接触した、全てに「捕縛命令」を出そうとしている。過去に、あなた方に、この場合は、魔女関連だろう。どういう待遇かはわからない。おそらくは、軟禁、だろうけれど・・」
「貴女達は、大人しくはしないでしょう?」

それはそうだ。

「なるほど。ありがと。マリー?」
「へ?わたし?」
「大人しくしとくほうがいい、みたいよ?」
「え?わたし、すごく大人しいんだけど?」

義妹を見ながら。
「あ、あたしの娘、やんちゃだから。その辺は多めにみてよ?」

「可愛いやんちゃっぷり、楽しみにしてる。」
「ハメはハズさないでね!ほんと!」

二人は去っていく。

「クギさされちゃた。」
「あなたの場合、クギじゃなく、クイが必要だったんじゃない?」
「うまい事言う♪」




見つけた気がした。
たぶん。


「おもしろいな。」
豪奢な邸宅。


その一室。
「主」はそう言った。

でも。
セラータは、それが「正解」なのかは、・・・分からない。

ただ。

疑問は解けない。


与えられた、休憩時間。
それすらも。

自分が作ったもの。
そう。
給仕長である自分。
望めば、一月でも。

でも!

「セラータ。私は、私用で休暇を・・・そうだな、まずは2,3日。その後は仕事が入る。クォ様の身辺に関わる、だ。後々の事はまた話す。任されてくれるな?」
「はいっ!」

自分は・・・。
あの人を愛している・・・。

でも。
それは。
自分の想い。

そこに。
仕事や、別の感情を入れては、いけない。
「シックス」の一件は・・
オカシクなりそうだった。
でも、「冷静な私」を、彼は評価してくださった。

それでいいのだ。

私の・・・アドルフォ・・・。




「ああ。見つけた、と言うのかな?」
「・・どのような?」
「カギ、さ。」
「申し訳ありません。もう一度お願いいたします。」

パールからは・・・


「わかりました。では、そのように。」
「ああ。頼んだよ。」



頼りになる部下は、いい。
クォは、そう思う。使い捨てにしても、最期まで「主のため」と信じているから。

「クォ様」
「ああ、セラータ。」

執務室に声が・・

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