1017トリニティ。 序幕を続けましょうか。しっかりと。

これは・・参った。
うち・・・こんな貴族さんとは・・・絶対ムリー!

そもそもが、海洋国家、もしくは海賊国家でもある、リムサ・ロミンサの、ギャング「チルドレン」出身。
行き場を無くした子供達は、寄る辺ない場所を求めて・・・
実際は、生きていくために。
人殺し以外、何でもやった。
でも。

胸を張った、とは言えない中。

一人の剣士が、自分に「勝負」を持ちかけてきて。

結果、惨敗。

「剣聖」を名乗る、ルガディンに付いて行き、いろんな世界と、可能性を見た。

そして・・今は。

「拳聖」を名乗ることを許されて・・

だが、今の状況は?

最低辺に居た自分に、後ろめたさなんてない。
あってはならない。
それこそが、誇りなのだから。

でも。。。

貴族階級の屋敷に入る、となると・・・さすがに尻込みしてしまう。

「エリ?」
相棒の声。
「リンちゃん・・・」
「ここ、スゴイ暖かいよ?」

「うん。だね。」

相棒?の黒髪の暗黒騎士は、余裕?を持って現状に甘んじている。

(りんちゃん・・?)
「ん?」
(いや、小声で・・・)
「ああ、うん。」
(いや、だから・・・)
「そっか。小声じゃないと、マズイね!」
「・・・!?」

(コレは・・・ウチのミス。やな・・・。この人は、「正直」なんや。ただ、「実務」に関しては、ウチ以上に「腕」がある・・。こういうのを・・・)
結論は避けたい・・・

執事が此処でお待ちください、と言われた応接室。

暖炉があり、爆ぜる薪に、散る火の粉。
いかにもなお屋敷。

が・・・

「エレディタ殿、アイリーン殿。少し、緊張をほぐされてはいかがです?」
銀髪の少年。アルフィノ。
そこに。
「でっすですー!」
全身、桃色の服に身を包んだララフェルの女性?(ララフェル族は総じて、年齢がわからない)

とりあえずは・・・
このまま・・

と思いきや。

ノックの後に、応接間のドアが開かれる。

壮年のエレゼンの男性。

「エドモン・ド・フォルタン伯爵と申す。」
腰を折り、腕を腰に回す礼。

「四家」の一、長たる、貴族が腰を折ってやってきた・・・。

呆気に取られる、執事や、家政婦。そして、オルシュファン。

「此度の件。真、心痛の極みでありましょう。我が屋敷でよければ、いかようなりとお使いくださりませ。アルフィノ殿。」

「いや・・・フォルタン伯。僕らは・・追われる身。そのような・・・待遇をされても・・その・・」
「お気に召されるな。我が家は、貴公らを客人として遇する所存。彼の地での、謂れ無き断罪にも、面と向かい、潔白を示す事に最大限の尽力をさせていただきたい。」

・・・・
「フォルタン伯。かようなご厚意に、どのように報いればいいのか・・・未だ、わかりません。ですが。この地にて、決して不利益の無いよう、謹んで行きます。」
「そうか!では。色々と厄介事はあると思うが、申し訳ない。出来る範囲で、こちらも協力を惜しまない。が、こちらも、少し厄介がある。その時には、是非、ご協力頂きたい。」
「はい。(しまったな・・・丸め込まれた・・か。)

してやられた感のある、若き党首。

(まいったなあ、あのボン。)おもわず同じ感想を抱いたエレディタ。

「それでは、一つ。」
銀髪の少年総帥。

「如何いたしましたか?」
穏やかなエレゼンの貴族に対して・・・

「この件に関わった、ないしは、関わりの無かった。が、我が名・・・ブレイブに名を連ねた冒険者達の処遇について、是非とも憂慮していただきたい。」
凛とした声。

「いいだろう。アルフィノ殿。フォルタンの名に誓い、御身達の保護を約束しよう。」
「ありがたきお言葉。」
「それはそうと。そちらの女史は冒険者では無い、と。」

「はい。」

「アルフィノ様あ!タタルは、ッタタルは・・・・もう!でっす!!」
「ああ。悪かった。しかし現状、どうしたものかまだ理解ができていない。少し頭を冷やして、鍵を探そう。手伝ってほしい。」
「あい!でっす!」

小柄な?女性を抱きしめながら、・・・
二人の女性に目配せを。

「せやな。うちらとしてはな、フォルタンはん。」
「エリ!」
「いや。構わない。レディ。続けてくれたまえ。」
「まず、何がどうなって、結果どうなん?」
「では、簡潔に。 君達、クリスタル・ブレイブ、及び暁の血盟に関与のある冒険者、と一括りにさせて頂くが、国家転覆に問われる事件を引き起こし、
ウルダハ当局からの拘束をもって、手配されている。が、ラウバーン局長の捕縛の際に少し・・いや、かなりの問題が生じてね。これは、陰謀だと。そういう説が流れてきた。」
「ほう?」
「それで、君達。冒険者達の足取りを、こちらでも追っていたら、どうにも「陰謀説」の可能性が高い。そういう見解に私は至ったのだ。」
「・・・」
「私も、自慢ではないが、イシュガルド四家の一柱。この裁定を法王猊下に無断で下すわけにもいかない。」
「なるほど・・・」
「賢明な冒険者諸君、及び、アルフィノ殿。貴公らなれば、事の顛末を解決に導いてくれると確信している。いかがか?私の考えに同調してはもらえぬか?」

・・・・・四家において、発言権を得たい・・・そのための・・・

「ええ。僕は、いえ。私は、今回の騒ぎ。終息を望んでいます。そのための努力が、フォルタン家と同調するのであれば、断りようもありません。是非、共に手を取り合いましょう。」

・・・・・小僧、手駒が無いわりには、最大限の譲歩案を引き出してきたな。 やりおる。

「いいだろう、この件に関しては、先の竜族の撃退もある。こちらも出来うる限りの援助をしよう。」

「ありがとう御座います、フォルタン卿。」



別室にて・・・

「はー、ほんま。どうなることやら。」黒髪の女性。相棒の同じく黒髪の女性に。
「エリ。貴女の方こそ。あの場面で口出しはダメですよ?」
「せやかてなあ。」
「わかりますが・・・。大人しくしているのも仕事です。」
「報酬があればなあ・・・」
「わたし達の身の振りどころが保証されたんです。十分でしょう?」
「りんちゃん・・・。まーそういやそーなんだけど。」
「まだ言い足りないんです?」
「いや。あの筋肉バカの居場所がなあ。」
「オルシュファン卿、ですか?」
「せや。アイツがおらんかったら、うちら終わってた。せやのに・・」
「貴族ゆえの・・・」
「綿に包む言い方は、あの兄ちゃんも望んでないやろ?」
「・・・」
「うちはさ。まあ、捨て子やねん。」
「!」
「ええわ。その後、転がるように・・せやな。子供だけのギャング「チルドレン」になった。」
「・・・」
「でもな。いい人に見つけ出してもろうた。後から聞いたんやけど、うちのおったギャングは、そのオッサンが責任持って、更生施設に入れたんやって。」
「エリ・・・」
「まあ、どうでも・・いいのかもしれへん。でも。」
・・・・そう。
「当時のうちらは、てっぺん登るんが、一番やと思うとった。」
「エリ?」
「ギャング、ストリートチルドレンが、ギャングのてっぺん、なんて、アホやろ?」
「・・・」
「でも。ギャングスターに、なりたかってん。」
「・・・そう・・」
「あはは!さすがに今はそんなん、あらへんで?むしろ、やめとき!って言う方や。」
「だよね・・。」
「せやけどな。」
「うん?」
「今は、あの時の感覚が・・・思い出してんにゃ。」
「へ!?」
「あの、上に噛み付く反骨精神ていうん?ムズカシイのは良う分からへん。でも、無体なコトには、徹底的に歯向かってやろう、ってね。」
「そっか。エリ。あのね。」
「うん。リンちゃんに乗っかってくれ、言うてへん。好きにしてや。」
「混ぜてくんない?」
「え!?」正直、ここで解散と思っていたのに・・・
「あたしさ。不条理って事が、一番。一等。大嫌い。それを叩き潰す。」
・・・・(あの・・・性格・・・変わってる?)
「なので、エリ。あたし。この件に関しては、譲れない。相手に思い知らせてくれる。」
「あ。うん。・・・その?」
「問題、ある?」
「ない・・・」けど・・・コワすぎる・・・・眼の色が・・・

「あの・・・・」控えめなエレゼンの少年の声。
「ああ。大丈夫やでー。少し、今回の件で興奮してるだけやから。」
「・・・でしたらいいのですが。この後、フォルタン家のご子息達と懇談会があるそうです。」
「あー。もらった服でええんかいな?」
「ええ。それは・・・私には・・・」
「ほうか。わかった。準備しとく。」
「お願いします。」
今まで「居なかった」感の少年は席を外し、隣室へと・・・

「彼女達の腕を信じないわけでもないが・・・」
(異邦人は。信じても大丈夫なのだろうか?)



(ふん。聞いてはいたが・・・実際に試してみると興味深い。)
改めて、自分の四肢を眺める。
腰に吊るしたホルスターから、銃を。
(楽しめそうだ。)
一人のアウラの青年。
「ガンスリンガーとしては、な。」



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「んじゃ、今夜はここまで、ね。」
黒髪をポニーテールでまとめた女性。
「はーい!またです。先輩!」小柄な後輩が手を振っている。

店を出て、一人別方向に歩いて行く女性。
どこか、憂いを持っているのだが、それが本当に憂いなのか・・?

「送りますよ。」茶色ロングヘアのモデルみたいな女性。
「いいよ。凛子ちゃん。」
「危ないですよ?」
「それは、お互い様?」にひひ。
「先輩、は、確かに。暴力沙汰になりかねない程の「しつけ」をされてると聞いてますが・・」
「貴女ほどじゃないよ。」
「わかりました・・・くれぐれも、お気をつけて。」
「もちろん。」

街路灯の影に紛れて、人影は消えていく・・

「菖蒲。帰るよ。」
「ふぁい。」

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