960セブンス。もうひとつのラスト~(完結)

盛大な花火の音がここまで聞こえてくる。
今頃は、新郎新婦のお披露目パレードや、派手な食事が並んでいる頃合だろう。
「頑張れや、相棒。」
黒髪の女性は眩しすぎる景色を目に刻んで、華やかな祭典に背を向けると荒野に向かって歩みを進める。
「挨拶はナシでいいのか?」背後からの声。それも懐かしい響き。厳しい修行の頃のよう・・
「おっさん・・。」
「師匠に向かって、おっさん呼ばわりはよせと言ってるだろ。おいらも、まあ老けたかもだがなあ。」赤銅色の頬をポリポリと掻きながらユパは困り顔。
「ミーなら、もうほっといても大丈夫やろ。」
「それなら、エリ。お前は?」
「うちか。せやな。おっさんからもろた称号「拳聖」にふさわしい成果を出さんとな。そうやろ?」
「強制はしないが・・。」
「アホか、せっかくもろたんや。暴れんとな。」
「おいおい、物騒なコトを言わないでくれよ。」
「心配性やなあ、おっさん。だあれも、暴漢になるなんて言うてへんやろ?名前を売り出すだけや。」
「ふむ。心意気や、よし、か。お前らも成長したなあ。おいらはさて、どうしたものかな?」
「せやなあ。せっかくやし、あの暴力姉妹の面倒でも見たったら?」
「ユーニ、ユーリ達か。彼女達はおいらの古い知り合いの娘達だからなあ。傭兵を親に持つ、そういう意味での血統としては、これ以上おいらがどうこう言えないなあ。」
「なんや、おっさん。知り合いやったんか。」
「ああ・・言ってなかったか?」
「聞いたような、どうやったかな・・?」
「まあ、新しい人材を探すとするよ。「シーカー」としてなあ。」
「そう、じゃあせいぜい、いい後輩を探しといてや。」ニヤ。
「エリ、武勇伝を楽しみにしてるぞ。」
「まかしときや、ユパ師匠!」手を振ってエレディタは走って行った。

「アイツめ・・。」背後の祭典を振り向くと、もう一人の弟子の元へと歩き出して・・・


「ふぅ・・。」
少し走り過ぎたか。いや、いろんなシガラミや、未練を断ち切る方に少し疲れが出たのかもしれない。
近くにたまたま生えていた木にもたれ、水筒の水を飲み干す。
(水も切れたか。補充もせんとなあ・・)
勢いに任せ、突っ走ってしまったが、特にどうしようというワケでもなく、ただ目的をどうすれば果たすことができるのか?それだけが頭の中にこびりついて、自分でもよくわからない。
ただ、何となく、かもしれないし、相棒の幸せそうな笑顔が眩しすぎたのかもしれないし、或いは自分の立ち位置が変わったことに戸惑ったのかもしれない。

「せやなあ・・とりあえずは、モードゥナあたりかなあ・・・あ、コロセウムちゅうのもありかもな。」
なんだか、独り言がクセになってきたかもしれない。
そういえば、チルドレン(ストリートギャング)になる前の、親に捨てられた数日以来、常に誰かと居た。姉御、チルドレンのみんな、ユパ、ミー。そして、色々なメンバー。
様々な思い出や、情景が瞼の裏に。

ドラゴンヘッドや、レブナンツトールも移動術式で飛べば一瞬だが・・なんだか、そんな気分でもない。
「歩く、か。」幸い、このまま北上すれば黒衣森経由でクルザスまで出られる。その間に町や砦もあるだろうから、防寒着の一着でも買えばよかろう。
少し荷物がかさばりそうなのでマイチョコボも呼び出すとしよう。
「うん。」方針が決まれば、後は行動あるのみ。
一歩を踏み出す。
もう、振り向かない。
もう一度、相棒に会うときには「拳聖」の名を広めてからでないと。それこそ合わす顔がない。
「いっちょ、やったるでっー!」大きく伸びをし、気合も入れる。




晴やかな食事会に、あちこちのテーブルから呼ばれる新郎新婦。
「はいは~い!」「ミー、あんまり走ると転ぶぞ?」
(あれ?エリってば、ドコかな?)周りをキョロキョロ。エレゼンの新婦は相棒を探すものの、見つけられずに。
「あ、ユパ様!あの・・・」「ミー、綺麗だなあ。似合ってるよ。」「えへへ・・っと。エリ見かけませんでした?」少し困り顔。
「ああ。見かけたよ。」「ドコですか?」「ちょっとな・・・」「歯切れが悪いですね。ユパ殿?」リガルドは何となく思いついたのか、それだけ言うとミーランを伴って席を離れる。
「ちょっと!リガルド!?」「ミー。察してあげてくれ。」「・・・うん。」「せっかくの楽しい一日、満喫しなきゃね。」「そうね!(エリ・・頑張ってね)」



「ふー、やっとこさ森かあ。ザナラーンと違うて、涼しいわ。っと、水の補給やな・・・」
小川のせせらぎが聞こえる方に進んでいく。
一口、クチをゆすいでから、飲めると判断し、水筒に水を溜め、もう一度せせらぎから水をすくい、喉を潤す。
「こういうのも、なんか新鮮やな。後は寝床か・・キャンプがあったらええにゃけどな・・」
最悪、野宿ということもありえる。「ま、そんときゃそんときやな。」

こんな旅路もまたいいもの。
近くにある木にもたれかかり、うたた寝を・・・

・・・ミー・・・しっか・・せえや・・・・

寝言をもらしながら、気ままな旅を楽しむ余裕がその顔には。


~~~~~~~~ミーラン&エレディタ編、fin~~~~~~~


というわけで、次回からは新シリーズです!
主役は・・・・まだ内緒w
新キャラも出てくる予定ですが、古参ももちろん予定にいれていますwでは、あでゅー!

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