958セブンス。プランニング。その10 Final

「ああ?」
黒髪の美女は、寝台から身を起こし、パールからの伝心に異論を唱える。
(なんだって?)
深緑の空気を吸いながら、黒雪は相手が本気で言っているのか、少し考え、冗談では無いと判断し(なあ、社長さん?どういうこった?)
(今、伝心したそのままだよ)
(製品開発に協力しろだ?)
(ああ。)
(わたしの今の立場が分かって言ってんだろうな?)
(もちろんだ。先立つものが要るんじゃないのか?)
(・・・・)
(要件はわかったな?安心しろ、身の安全は保証する。昼すぎには迎えを寄越すから、準備しといてくれよ)

「ああ?なんだってんだよ・・」
寝台から降りて、着流しを身に付ける。
「あー、先に水浴びかねえ。」
一度、脱いで、裏手の小川で水浴びを。
冷たい水で目も覚めた。
身体を拭いて、もう一度、着流しに袖を通す。

朝食は、昨夜の炊いた米を煮込んだお粥に卵を混ぜ、根野菜の漬物。
一人で摂る朝食にも慣れたが、やはり侘しいものだ。
「如月、来ないかな・・」
昔馴染みの女性だが、今は「アチコチみてくる」と、各地を放浪しているはず。夕霧に至っては、モードゥナという、未踏に等しい場所で開拓のリーダーをしているらしい。
「はぁ。ミッター、来ねえかなー・・・」

「よぉ!元気してるかぁ?」
いきなりな訪問に、ついお粥を吹いてしまい・・
なんせ、この「家」は「魔女の住処」
ノックも無しに簡単に出入りできるものではない。そもそも、巧妙に偽装された「家」には知らない者が気が付くはずもない。
そして案の定、馴染んだ声。
「魔女・・・・」
「迎えに来たよっと。」
「昼過ぎとか言ってなかった?あの社長。」
「ちと早かったか。ところで、懐妊したんだってな?」
「ぶ!?」
「まあ、元気ならなによりだ。」ニっと笑う魔女の笑顔は素敵だ。
「どこで・・」
「元クラック(眼役、耳役)だぜ?あたし。」
(如月か・・・あのやろう・・・)
「ま、今日のお題は楽勝さ。体力なんて微塵も使わないから。それと、飛空艇の準備もできてる。」
「なんで、わたし?」
「そりゃあ、なんだろうね?多分、手先の感覚が敏感だからじゃない?カタナの取り廻しとか。普通の剣振り回すヤツよか、かなり手先に集中してるでしょ?」
「まあ・・その・・普通の剣とか、握った事は無いけど・・」
「じゃあ、今回はアレだ。もう少しレベルは下がったかもしれないね。」
「なんなの?」
「ミコッテの尻尾を再現するヌイグルミの開発だとよ!」けらけらと笑う魔女。


「あの・・・マルス社長?」茶色い髪のミコッテ、エフェメラが恐る恐る・・・
「ああ・・・・私も少しだけ、後悔している・・・」
「あたいは・・なんとなくアキラメって言葉の意味を理解したにゃ・・・」オレンジの髪のミコッテ、シャン。
3人は揃って社屋の食堂で昼食を摂りながら・・・
一旦現場のザナラーンから本社に戻り、適任の担当を選考し、条件として「女性、手先が器用、革細工スキルがある」で、なおかつ、ミコッテではない。
とした所、思い当たったのが、かの剣士だ。
実際問題として、先行販売した尻尾は、シャン嬢をモデルとしたわけだが、触感が少し違うとターシャからの指摘もあって、できるだけ「モフモフ感」を出すために異例の抜擢と相成った。
「アイツの事だしなあ・・」なんて。
これから、一度は決闘をした相手に徹底的に尻尾をいじられるのだ・・・溜息の一つもでようというもの。(ちなみに、この人選をしたのはセネリオ女史)
あふ・・・x3

「連れてきたよ。」グレイの髪の魔女。
「来たよ。」胸元も顕な着流しの女性。
これから饗宴が始まる・・・・・


(あ、お姉?)パールからは弟の伝心。
(ん・・・・なに・・・・?)精魂朽ち果てた社長が応える。何しろ、一番念入りにいじられたのだ。しかも、魔女もついでとばかりに。
(コッチね、観覧車だっけ?アレの準備はオッケーだって。それと、ぼくのプランも採用されたんだ。褒めてよ!)
(あー、よくやった・・・)感情が一切入らない褒め言葉・・・
「社長?体調わるいんです?」筆頭秘書
「今更、聞くか?ソレ。」
「十分に休憩されてましたよね?」
「のたうち回った挙句、疲労困憊して倒れたのを休憩と呼ぶならな・・・」
「いいじゃないですか。昼寝できたんですし。こっちは書類の整理にエリスまで動員したぐらいです。」
「そういや泊まっていったな。まだいたのか。」
「いえ、無理やり押し付けました。」
「・・・」
「そういえば、弟君が準備ができた、との事ですよね?」
「ああ、そうだ。やっとあのカップルに招待状が送れるな。」
「はい。それと、招待客にも。」
「それは任せる。」
「はい。」
「未来の世代に幸あれ、だな。」
「社長も結婚されては?」
「セネリオもな。」


「リガルド?」
「ああ、その・・マルス社長からの手紙がね。」
「なんて?」
「婚儀は済ませたのだろうが、お披露目はまだだろう?準備がしてある。3日後にウルダハに来い。最高に盛り上げて魅せよう。 だそうだ。」
「わ!なんか楽しみ!」
「ミー、意外とこういうの好きだな。」
「うん!」


「よーっし、野郎ども!なかなかのデキだな。コレなら問題ないだろう!」「おー!姐さん!」
カレンは出来上がった「チョコボゴーランド」に満面の笑みを(先日の悪夢を振り切る様に励んだ甲斐があるというものだ)

「よーっし!今日はここまで!皆、飲むぞっ!」ヒゲの機工士が酒瓶を片手に大声で。
「おっしゃっー!」今夜は大宴会になりそうだ・・・
「おー!」エフェメラも今夜は飲むぞーっと・・

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