956セブンス。プランニング。その8

!?!!辛いっ!!!!

久しぶり?に食べるこの女性の煮込み料理は、なんというか。
美味しいのだが、後味にくるこの刺激的な辛さは、以前よりも・・・・

「ミー?」ブルーグレイの髪を肩口で切りそろえたヘアスタイルは以前のままだが、落ち着きが増した分だけ、女性らしさがとても出ている。
「マユさん・・美味しいんです。でも・・・・」汗がじんわり・・・
「あは♪辛すぎた?」とイタズラっ子のようだ。
隣では、この辛さと熱さに倒れ伏しているミコッテの青年が。ミーランは、心配げに見ていたが、ムクリと復活を遂げると、猛烈な勢いで食べ始めた。
「リガルド?」
「いや、うまい!けど、辛い!!!」もう一度倒れる・・・
少しポカンとした視線を投げて、自分も、はくり、と一口。
「マユのカリーはウルダハで一番かもな。」ははは、とは、彼女の夫。
「ママのカリー、美味しいよ!」娘と、「ぼくにはまだ早いって・・」息子。
「アクィラは、ミートボールだけでじゅうぶんよっ!」姉からの叱責。
「ターシャ、まあまあ。」マユが
(ああ、いいな。幸せな家庭ってこういうのかな。)ミーランは、憧憬を見る少女のような・・

「ん?」マユにパールから。
(いきなり失礼します。マユ殿。実は折り入ってお話が・・・)
相手は・・
(セネリオさん?お久しぶり。どうかされました?)
(すみません、時間的にお食事中かと思ったのですが、早めに連絡をしておきたいと思いまして。)
(はい?まあ・・確かに食事中ですけど(空気読まない発言は彼女の得意とするところ)なにか?)
(・・・いえ、今進行している事業なのですが、ご協力をお願いしたく。もちろん、報酬も出させていただきます。)
(なるほどー。で、どうすれば?)
(実は・・・・)

明けて翌日。

「せんちゃん。」オフィスにて。
「・・・・」無言の筆頭秘書。
「せねっちー」
「・・・・」
「セネリオ?」
「はい。なんでしょう?」
はぁ・・「あのさ。コレ。今日のスケジュールの中の、この異常に長い間取りって何?またどこかダンジョン行くの?」
「いえ。それには私も同行します。お気になさらず。」
「場所はここ(社内)だけど・・会議室で二人?」
「いえ。協力をお願いしている方をお呼びしています。」
「え?」
「行けばわかります。では、とりあえず昨夜処理しきれなかった分の書類から、お願いします。」
ドサっという音が出そうな勢いで、デスクに紙束が置かれる。
「うげ・・」
「件の書類、まだできてませんね?そちらも今日中に。私は、レイの所に行ってきます。昼前には戻りますから、その時には全て終わらせてくださいね。」
「せんちゃん~・・・鬼・・」忙しく書類に目を通していく・・・


「レイ。どうかして?」
グリダニアにある、アリティア・サービスのオフィス。
「あ、セネリオさん。実は・・」
「ああ。なるほどね。イドゥンが今回、例の新会社の社長抜擢だったから。」
「はい。エリスさんの秘書に、ウチの兄貴を紹介してるんですが、2回も選考落ちしちゃいまして。」
「何が気に入らなかったのかしらね?」
「それが・・・個人の記入情報以外に、ヘンな噂、というか・・・事実なんですけど・・・」
「は?」
「かの剣聖に、背後から忍び寄って、イタズラを。それも何回もという・・・」
「ミーちゃんに!?」
「いえ、先代のユパ様です。」
セネリオは顔を覆って「なんだって、こう・・・問題児だらけなんだ・・・」
(まあ、逆の発想でいえば、だからこそ短期間で発展できる社ができたのかもだが)
「わかった。ええと・・」
「ルセア、です。兄は。」
「では、ルセア殿に秘書になってもらえるよう、エリスには打診しておく。(もしかすれば、すでに採用しているかもしれないが・・・レイの事だから・・・)」
「はい、ありがとうございます。それと、資材、人員関係ですが、なんとかできそうです。問題はキャリッジですね。ウルダハ管轄ですので、私では申請しても。」
「そうだな。こちらでも申請が通らない。が、だ。裏ワザを使って通せるようにした。」
「へ?」
「魔女様にお願いしたんだ。」
「えええ?通ったんですか?」
「ああ。それも女王陛下のお墨付きだ。」
「なんて人・・・」
「ただし、この事は内密だ。絶対に誰にも話すなよ?」
「はい!」
「では私は帰るが、なにか案件はあったか?」
「いえ。キャリッジと、兄くらいですか。」
「では、仕事に励んでくれ。期待している。」「はいっ!」


陽が中天に差し掛かる前「ただいま戻りました。社長、仕事の方は?」
書類全てに承認、未承認のスタンプを打ち終わって、只今、例の書類の執筆中らしい。
「あと、四半刻(30分)ほどですね。頑張ってください。あ、確認もしますので、もう少し早めに。」
必死の形相で羽ペンを振るう社長を見て、ランチは何がいいかなあ?とか。
セネリオはこれから来る災害に備えて、というか、ご褒美は先にもらっておくべき、とか、思考がそっちに流れていく・・・・
「ビスマルクで贅沢しようか・・・」
「え?」
「あ。」つい言葉に出てしまった・・・


「モフモフまだー?」とある一家で
「あはは、ターシャ。ちょっと待って。お昼ご飯まだでしょ?」
「や!マユちゃん久しぶりにゃ!」
「シャンちゃん!」
「なんだか、およばれに来ちゃったにゃ。何の用なのかにゃ?」
「あー・・まあ、定番?」
「げ!」
「大丈夫。今回はちゃんとお給金も出るし、その・・・うん!」
「マユちゃん?」
「あ、まあ今からお昼ご飯だから。一緒に。あ、ネルケは来てないの?」
「うん。なんだか、また不穏な空気が出てるにゃ。だから、そっちの警備で忙しそう。」
「そっか。一端の戦士になってきたわねー。」
「まだ、あたいからは一本もとれないにゃ。マユちゃん相手だと、一生ムリにゃ。」
あははははは!二人で笑い合う


「あ、お姉?呼んだ?」「あ?」「いや、セネリオさんがさパールで。」「ん?」
「あ、そっか。食事のお誘いだったのかな。イドゥンさんに言って、昼過ぎには行かせてもらうよ。」「ああ。」
ん?

もう少しで小悪魔の饗宴が始まる・・・

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