911セブンス。ミコッテの退屈な日常。かもしれない・・・

「うわー。ヒマだわ~」
深緑の街、グリダニア。
朝に弱いミコッテの女性、通称「ショコラ」は、茶色いチョコ色の尻尾を振りながら、
公園のベンチで先程屋台で購入した野菜と肉を小麦粉と玉子の生地を使って焼き固めた物を昼食に頬張りながら・・・
「昼寝、かあ。う~ん、場所変えようかしら。」そろそろ明け方も近い。
碧い瞳の瞼をこすりつつ、しっかり完食する。なんでも「好きに焼いた」というこの料理は最近、東方からレシピが公表された?らしい。
主人も東方出身らしく訛りもあるものの、味はさすが、というべきか。特にソースは絶品と言っていい。
そして、その横で寝そべっているミコッテの少女。
彼女とたまたまその屋台で出会って、一緒に買い食いとなったのである。で意気投合?して。
彼女は自分のことを「オーアリール」と名乗っていた。なんでもニックネームらしいのだが、誰も本名を覚えてくれないので、もう開き直っていると言う。
自分も「ショコラ」は、あだ名なので。お互い苦労するよね、なんて。
ちなみに、彼女はこの公園でいつも寝ているそうだが・・・
自分は「裏の情報屋」として活動しているので、あんまりおおっぴらにこんなところで寝ていると拉致されるかもしれないので・・・
普段なら、そんな事態になれば、色々と助けてくれる面々がいるのだが・・・
この数日はそうもいかない。
普段、安宿を転々として身を隠しながらの行動なのだが、ここ最近は「家」に間借りする感じで転がり込んでいた。
そして、そこの住人はとんでもなく頼りになる戦闘力と情報力を持っていたので、少々甘えが過ぎたのかもしれない。
自身には、戦闘力などカケラも無く、あるのは情報量とそれを支える記憶力、逃げ足の速さ。
「んー。兄様のとこ、大丈夫かなあ?わたしにできることなんて・・」
というのも、彼女の兄は大富豪。そして出奔した自分にできることが全くない。
その兄の所に「家」の給仕(自称)が出向いている。
しかも、その「家」の主であるところのスタッバー(暗殺者)が、兄の行動を監視する事になった。場合によれば、彼女は兄の暗殺も辞さないだろう。
そうなれば、給仕のエレゼンは兄を守るために彼女と敵対することになろう。この複雑な状況を上手くまとめられるとすれば・・彼女しかいない。
パールを取り出し。
(あの・・・、レティさん・・?)
(・・・どうした?フュ。)
(相談が。)
(のっぴきならないっぽいね?)
(あの。わたしじゃどうにもできない事が。)
普段、一人称が「わっち」な彼女は、元は・・良家のお嬢様でもある。
(だろうね。あたしに相談って言えばいつもの事だよ。大丈夫。相談しておくれ。)
(実は・・・)
(そう。分かった。こっちもそろそろ厄介事になりそうなの。状況が変わり次第連絡する。できるだけ間に合わせるわ。)
(いつも、ありがとう・・・)
(どういたしまして。)

「あの子の頼みじゃ、断れないわね。」
魔女は微笑んで・・・
「魔女様?」術士のミコッテの女性は隣の「天魔の魔女」に。
「何でもないわ。行くわよ。」


はふ。

隣で寝息を立てるミコッテの少女を置いていくのは少し心痛むが、大丈夫だろう。
ここは彼女のホームグラウンドみたいだし、自分が居る事でかえってこの少女に危害がある方がよほど辛い。
「おやすみ、オーア。カフェかあ。行ってみたいな。」
ショコラは「裏稼業」そして、「大富豪の娘」なだけに、あんまり顔の差す場所には行けない。なので、屋台巡りなんていう趣味と実益を兼ねた事をしている。
隣の少女も自分の出したネタを元に書かれた「この屋台はイケる!」のゴシップ誌を見たのだろう・・・
彼女の発信する情報は、いろんな意味で好評で、生活に困ることもないのだけど・・・
住処にだけは、特に気をつけなければならない。
安宿を毎日変えつつ、鍵もピッキングされないように、二重三重の安全性の高い鍵を付け直してから寝ていた。
でも・・・
「家」に居着いてしまってからは、安らかな睡眠ができるようになり、それが日常となった今、
「家」に依存しすぎて・・・そして、その「家」の住人同士で諍いが起こりそうな今。
「わたしにできること・・」
それは、やはり他人に依存する事だけと、思い知り・・・

涙が止まらない・・・・

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