877セブンス。進撃の最中!

「くそ!」
いきなりの衝撃で吹き飛ばされ、いや。地面ごと削りきられ、石柱の外周そのものが落ちてしまい。
魔女に注意されていたのに、不覚にも「舞台」から転落してしまったミコッテの青年。
このままでは・・死ぬ。
咄嗟に魔道書を開く。
「375の頁!異形の塊を成せ!タイタン・エギ!」
崩れ落ちていく足場だが、それらのいくつかが組み合わさって石柱に張り付き出し、急場の足場を完成させて、階段状に組みあがっていく。
「なんとかなった、か。」急いで駆け上がる。
先ほど恋人が一瞬だけ見えた。
自分が落ちてしまうところを。
悲痛な表情で。
そして、名前を・・・・
その後に聞こえた恋人の獰猛な叫び声。
いけない。怒りに駆られて剣を振るうのは。「堕ちて」しまう。
何人か見たことがある。そういった者達は、常に怒りだけで武器や術式を使い、どんどん破滅へと自分から進んでいく。
それが破滅と知りながら、それを追い求めてもう止まらない「狂戦士」と化す。
最後の数段、舞台が見えた。
「剣聖」は自分が傷つくことなど全く気にする事なく、ひたすらに攻撃を続けていた。
(ダメだ!彼女が堕ちてしまう!)
「待て!」
精一杯の声で。
「え?」振り向いた彼女は、赤い髪を揺らし初めて出会った頃よりも幼い表情で。
「・・・・」音には聞こえなかったが、確かに自分の名前を。唇の動きだけでわかる。
その彼女に、土の化身の豪腕が・・

がつっ!
ミコッテの騎士がすんでのところで彼女を守る。その際に恐らく骨が折れたのかもしれない。だが気にするでもなくこっちを見て笑う。
(ああ、治療費をだせ、か)なんとなくそんな気がした。そして声を張り上げる。
「堕ちるな!いいか?俺の女はそのくらいじゃあ、堕ちない、だろ?」笑みを。

安堵のあまりか、くずれ落ちてしまう彼女にタイタン・エギを向かわせる。
ミコッテの騎士、セネリオも盾で彼女をカバーし続け、リトリーも魔力の続く限りの支援を飛ばし続け・・・
「リガルド・・・」剣聖が立ち上がると敵に向かう。なにか一言言われたようだが・・「上等だわ!」いつもの彼女に。
「ミー!」「うん!」相棒が声を。
膨大な構成を展開させながら。「こんな時にノロケてんじゃねえぜ!剣聖サマよお!」
「おっさきー!」ユーニ、ユーリ姉妹が連携しながら蛮神に攻撃を続ける。
「あー、もうやめた、やーめた。」ツルハシから杖に持ち替えてたハズの女社長が杖を放り投げ、背負っていた大きなツルハシを。
「こんなダルい仕事、終わらせるよ。せんちゃん。」振りかぶる。それを横目でチラリ、と確認する筆頭秘書。
「社長には付き合いきれません。」白い刀身の愛剣、デュランダルが光る。
次の瞬間、巨大な氷塊が落ちてくる。「いいから死ね。」
「もう!みんなムチャしすぎー!!!!!!!!!!」リトリーの悲鳴にも近い呪文で癒されていく面々。
巨人の横手からグランツファウストを脇腹に何度もめり込ませながら「たまにはええやんけ。」仕上げの蹴りも。エレディタが笑う。
「食らえっての!ウチの会社特注品だ!」ツルハシが肩口に埋まる。
「社長、使い方間違えてます。」「なーに、コイツ岩石なんだろ?」マルス社長はにこやかに。

「始末はつけさせてもらいます!」ジュワユースを巨人の胸に。ミーランは神速の剣技を。

ミコッテの召喚士は。
「999の貢。焼き尽くせ。龍の王よ。」光の筋が幾つも飛び交い、土の蛮神がそれを受け止めるために腕をあげるが、次々に焼かれ滅されていく。

「・・さすがに・・これは疲れるな。」魔力のことごとくをバハムートに持って行かれた青年が倒れる・・・



「リガルド!ねえ!返事してっ!」涙で顔を濡らした恋人のエレゼン、ミーラン。
「・・・やっと、「さん」がなくなった、な・・・」疲れ果て、魔力も使い果たし。横たえられたまま。
「よかった!生きてる!」抱きつかれ・・・
「あんまり・・はしゃぐなよ・・皆が・・みてるんだろ?」
「いいの!本当に!・・・・・よかった・・・」

「あーあ、見てられへん。ユーリ、先帰ろうか。」「お姉ちゃん、どこいく?」「せやなあ。」

「まずは報告、でしょう。」「そうだな。砂の家、か。」「社長、宴の準備は・・エリスですね。」

(ミー・・・なかようやりや。うちもどうすっかね・・)エレディタはちょっぴり羨ましそうに。

「わあ・・いいですねー。私もああいうのされたいです。」こちらは素直にリトリー。

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