876セブンス。進撃!アタック!

あれ?
既視感。デジャヴュ。
俺、ここ知ってる。か?おかしい?
ミコッテの青年はなにか暗示めいたものを。
赤黒く、その景色は溶解した岩窟。
その中に一本だけ。
大きな。一際大きな石柱。表面は平に仕上げられ、溶岩が今にも降りかかってきそうな。でも、感覚はそうじゃないと訴えている。
「これは・・」リガルドは、目の前の恋人「剣聖」を抱き寄せる。
「え?」彼女はやはり意識を失っていたらしい。
「368の貢、いや9!目の前に出ろ!タイタン・エギ!かつて滅した残像をこの手に!」
そうだ。かつて自分はまだ駆け出しだったとは言え、この蛮神討伐に加った。あの魔女共に。
当時は駆け出しにひとしい結果、今の自分からすれば恥ずかしいものだった。
が。今は違う。

「ここが腕の見せどころだよ!」ミコッテの青年が吠える。
「じゃあ、私の出番だな。」ミコッテの「無名の腕」その右腕。
「あ!」剣聖が。「ミーも本気十分ですっ!」
「まーた呼び方がガキの頃に戻ってる!ってんだ!つのっ!」

巨人にも等しい、体躯の。その大腕が振るわれ。
「舞台」と化した石柱が揺れる。
「おっととお。」範囲回復術式を揺れ動く舞台にも、苦もなく「白衣の使者」は淡い光を。
「ツルハシ、つかえねー。」なんとか言いながら、先制攻撃を仕掛けた黒髪の女性に回復術式。
「370の貢、エギ。皆を守れ。」分厚い魔道書をパラパラとめくり、次の術式を検索する召喚士。
「凍れ!そして。死ね!」連続で展開していく構成に、盾役の女性二人がまさしく凍りつく表情で。
「そんなに急いだらダメよ!」「わー、やっぱり?」二人揃って剣技で注意を引きつける。
「やっぱりなあ。お姉ちゃんの大好きな言葉、過剰死(オーバーキル)と殺戮(ジェノサイド)やしなあ。
ほんま、あらへんで。」大斧を巨人の背中に叩きつけ、さらに振り回し、二度三度。

茶色い泥水のような液体をまき散らしながら、巨人が咆哮して。

飛び上がる。

「まずい!配置を・・」青年の声に少し出遅れた恋人。
丁度、剣技を終えて、振り切った剣と忽然と消えた巨人。その認識をするための刹那の時間。
たったそれだけの時間。

巨人が降ってきた。

どがん。

音だけじゃない。

振動。圧力。揺ぎ。

その全てをいっしょくたにされて、叩きつけられて。

「あ。」ミーランは一瞬。ほんの。
時間にしてしまえば、たったの。
だが、見えてしまった。

「リ、リガ・・!」声にできたのはそこまでだけ。
「本気だしてくださいね。剣聖。」ミコッテの騎士が大きな盾で巨人の腕をしのいでいる。
「せんちゃん!」回復術式で癒されながらも、未だ損耗は激しいようだ。骨の折れる音も確かにあったはず。

(ああ・・・死が満ちていく・・)
そんな絶望感に囚われ。

(じゃあ、お前が一番最初に死ね・・)
ジュワユースと盾を縦横無尽に操り、巨人を圧倒していく剣聖。

「待て!」
「え?」

ミコッテの青年の声。
「堕ちるな。いいか?俺の女はそのくらいじゃあ。」ニヤリ。「堕ちない。だろ?」
「リガルド・・・」崩れ落ちる剣聖。
「これは、貸し。請求書は後ほど。」ミコッテの騎士が。盾で巨人の豪腕をさばきつつ。
「上等だわ!」剣聖がこたえる。
「こんな時にノロけてんじゃねえぜ?剣聖サマよおっ!」あちらこちらに氷が生まれて巨人に突き刺さって
「あー。もうやめた、やーめた。こんなダルイ仕事。終わらせるよ。せんちゃん。」
持っていたツルハシを。大きく振りかぶって。
「社長には付き合いきれません。」デュランダルを構え。
「おっさきー」鋼鉄の塊を振り回す少女。
「いいから死ね。」とんでもない大きさの氷の塊が落ちてくる。
「もう!みんな無茶しすぎー!!!」ミコッテの少女が範囲回復術式を
「たまには、ええやんけ?」ナックルを巨人の腹に埋め込みながら
「始末はつけさせてもらいます!」巨人の胸の中央に、愛剣、ジュワユースを。
「・・・の頁。焼き尽くせ。・・・・よ!」

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