861セブンス。青年と女性が・・・3

のどかな午後を迎えつつある港を見ながら。
男女は昼食を終えようかと。そんなときに。

ぐわ~ん・・・と、余韻を残すような金属音と、ドシャっという、何かが倒れて転がった?ような音が聞こえてきて。

ここ、リムサ・ロミンサに昼食時を知らせるような鐘楼は無い。
あるとすれば、おそらくは自分の胃袋くらいだろう。

「ね?リガルドさん?今、何か聞こえなかった?」オレンジ色の髪のエレゼンの女性。
今は真っ赤に白の組み合わせのフェミニン、というよりもロリポップな感じのミニのドレス。
「ああ、確かに。あっちの方かな?」自分達が来た方とは反対側を指差す青年。薄桃色の髪、白いシャツ、ぴっちりとした黒いパンツルックの彼は珍しい事にミコッテだ。
「見に行ってみる?」背の高い彼を見上げる。
「いいけど・・ミー、この格好で面倒事だったらどうする?」自分も薄手の服装だ。後は腰にポーチがあるくらい。
「その時は・・・逃げましょ。」
「はは、ま、いいか。」

二人は慎重に。
やがて、近くまで来ると人だかりの一つでもあるのかと思いきや・・・
「や、お二人さん。」
ミーランの顔が凍りつく。
「か、母さん!?」
「え?この方が?」ミコッテの青年、リガルドが慌てて頭を下げる。「どうも。初めまして。リガルドと申します。」
「あらあら、ご丁寧に。私はこの子の母、メーヴェといいますの。よろしくね。」
「ちょっ!母さん!なんでこんなところに!?」
「お買い物よ。どうして?」
「だって、グリダニアから出ることって滅多にないのに。」
「そりゃ、私だって羽を伸ばすことくらいしなきゃ、ね?」
「あ、そうだ。さっき、この辺でなんかスゴイ音がしたんだけど・・・母さん、知らない?」
「さあ?」
「あ、そういえば母さん一人なの?」
「ミー、さっきから私に質問攻めだけど。私からもいい?」
「え?あ。うん。」
「こちらの殿方はどういうお知り合い?」
「うぇ!?ええ!あ。いや。その・・」
「わかったわ。本当にわかりやすいのね、ミー。えと、リガルドさん?」
「はい。」
「この子の事、よろしく頼むわよ。」
「はい。任せてください。」
「ミー、良かったわね。しっかりした方で。それに、その服装。それは自分で選んだの?」
「ち、ちが!?」
「エリちゃんも中々ユニークね。(くすっ)じゃあ、母さんはこれで行くわ。服も見に行かないと。」よっこらせっと、大きなフライパンを担ぎなおす。「じゃ。」
「あ。母さん。父さんは来てないの?」
「ああ、父さん具合が悪いからって、向こうで少し横になってるから。起こしちゃだめよ?」
「うん・・・(こんなところ、見つかったらなんて言われるやら・・)」
「では、母君、ごきげんよう。」手を振るミコッテの青年。
「ええ、気をつけなさいよ。」手を振り返すエレゼンの婦人。

「ねえ、リガルドさん?」「どうしたんだい?ミー。」「ちょっと。思ったんだけど。」「うん。」
「あの、母さんの持ってたフライパン。あれで何かを叩けば、あんな音になるって思わない?」「ああ、確かに。」「そして、父さんが倒れてる、ってことは・・?」
「まさか!」「ありえる・・・」「・・・そんなご婦人には見えなかったけどね。」「騙されてる・・・母さん、傭兵出身だし・・」「わっ!?そうなの?全然見えなかったよ。」
「丸くなった、とは本人談。」

しばらく歩くと、確かに壁に身をあずけた黒髪の術士が・・・(父さんだ・・)
「この人・・?」
「うん、父さん。さすがにこれ見られると怖いから、そっとしておこう・・」
「いいのかい?」
「うん・・・わたしの事、すごく大事にしてくれてるんだけど、たまに行き過ぎな所もあるし・・男の人と二人で、それもこんな格好ともなると、・・ちょっと、ね。」
「そうか。」
二人は歩き出す。

んじゃ、腹ごなしの散歩をしてから、お茶でも飲みに行こうか うん

リムサ・ロミンサの午後はゆっくりと時間を重ねていく・・・

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