858セブンス。刀の主とは・・

「おい、ミッター?何をそんなにしげしげと見ているんだ?」
茶色の髪を少し伸ばした青年は、床の間?に飾ってある刀剣を眺めていて。
「いい加減にしとけ。見初められるぞ。」
長い黒髪に着流しの美女。

「村正」と銘打たれた刀は、東方からの輸入だ。
「魔女の家」のリビングに適当にあつらえた「床の間」に飾ってある。が。
こちらは、実はフェイク、といっていい。
「本物」は、この腰に差した「脇差」と呼ばれる「小刀」
もちろん、床の間の刀も真剣で使い物にはなる。だが、「妖刀」と恐れられたのはこっちだ。
「お前な。」
恋人でもあり、弟子でもある青年に。

「ああ、ごめん。」
「まったく。この前の事件みたいになったらどうする気だ。その雨の叢雲すら、妖刀にはなってないんだぞ?」
「うん。」
人を殺めすぎた刀は、血を求めて妖刀になるという。
確かに、天の村雲も人を殺める仕事に使ってきた上に、過去にも戦役だとか、色々あったはずだが、未だ「妖刀」には堕ちていない。
刀鍛冶の想いがそれを上回っている、とかなんだか。
だが。
この腰の佩刀、「村正」は紛れもなく、「妖刀」
先の事件、「一文字」なる名刀ですら、妖刀になったのだが、これはその比ではない。
二本、対で送られたのだが、この脇差は本物の妖刀だ。

東方の剣術では、大きな太刀で戦場に行くが、はっきりいってこれは単に目立つとか、名だたる名刀の所有者であることの自慢しかない。
ほとんどは、槍か弓。刀で武力を誇示しようとなると、相当な場合、あるいは決闘しかない。
なんせ、刀など、2,3人も斬ってしまえば、脂が乗って、さらに斬り合いになろうものなら、刃こぼれが激しく、使い物にならないからだ。
なので、最終的には「突く」事によって、武器とする。
鞘には短刀すら付いていて、これで敵の首をかき斬る。
が。
この「妖刀」は、ハナから剣技を披露するためではなく、「突き殺す」事と、「首を掻き斬る」ために鍛造された、正真正銘の「妖刀」
話では、戦場では幾度も目にされて、数百人の血を吸ったとも。

「見とれるなら、こっちを見ろ。」
少し着物をはだけてみせる。
「ぶ!黒姉ちゃん!まだ朝!」
「先日は朝から襲い込んだくせに。」
「な!だって!」
「ま、いいどさ。」

(まったく。あの社長もいい趣味してる。私にこんなもの・・暗殺稼業じゃいいかもだけどさ。もう隠居もいいところ・・・待て。よ?待て。もしかして?)
「ん?どうかした?」抱きつこうとして手を止めたミッターク。
「いや。なんでも。」逆に抱きつく。

(そうか・・・私が引退して、こんな物騒なモノの「置き場所」として丁度いい、って事か。高く買われたものね。)
「ん!」
くちづけされ、思考が止まる・・・

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