857セブンス。幕間。ちょっとしたご家庭のお話。

「ねえ、シャンちゃん産気づいたって?」
ここは森の都。
その中にある一軒の家に。
ブルーグレイの髪の女性、マユは親友に子供が、という話は聞いていたが、何かと忙しく2,3度くらいしか会いには来れていなくて。
相談を受けてはいたが、パールだけだったので気にはしていたのだけど・・・

「お。遅かったな、マユ。」母が声を。
「あ、マユちゃん、ありがと。今お湯沸かしてるんだけど、タオル、ちょっと準備手伝ってくれる?」鬼哭隊隊長。初孫とあって、けっこう慌てているみたいだ。
「はあい!あ、その前に挨拶だけっと。」

部屋に入り、「シャンちゃん、大丈夫?」
「あ・・・マユ・・ちゃん・・ん・・大丈夫にゃ。まだ・・破水はしてないから・・・」
「そか。ちょっと長丁場だから・・・がんばって!」
「マユちゃん・・・二人も・・産んだ・・んだし。がんばるにゃ!」
「ヘンに力入れないようにね。可愛い子、頼むわよ?」
「もちろんにゃ!」
「じゃあ、準備してくるね。」


「あの・・大丈夫?マユちゃん。」シャンの夫、ネルケ。
「大丈夫に決まってんじゃん。心配するくらいなら、横でしっかり見てやれ!」
「あ、うん。」

「うちの娘も言うようになったわね。」魔女の言葉に。
「今は助かるわ。経験者がここに三人、とはいえ、後は産婆さんにお願いするしかないものね。」隊長。
「まあ、一晩中かかるとはいえ、産んじゃえば後は万事OKよ。」
「まあねえ・・ネルケの時は難産でねえ。痛くって死にそうだった。」
「回復術式でもしてやったらよかった?」
「そういう問題じゃないし。」
ジト目で魔女を睨み、
「あなたは?」
「ピュって出したった。」
「待て!それ待て!」突っかかる隊長。
「はいはい、このくらいのジョーク、引っかかるなよ、面白いヤツだな!」
「あんたなら、やりかねないから・・・」


「母さん、意外と気を使ってるな・・スウェシーナさん、かなり気を揉んでるのに、いつものペースになってる・・・」
マユもそれなりに気は揉んでいるのだが、今のやり取りで思わず吹いてしまった。
自分は、「ピュっ!」って出されたんかい!って。
明け方くらいには産まれるであろう、新たな生命に祈りを。



「ほぎゃああああああ!」

明朝。
新たな生命がエオルゼアに一人。
寝台の横たわるミコッテの女性の隣。一晩中彼女の手を握り続け、励まし続けた夫が。
「なんとか、丈夫な子が産まれたんじゃないかな。」優しげな顔は、以前よりはしっかりしたか。
「はあ。あー。疲れたにゃあ・・・」妻のミコッテが産婆から産まれたての我が子を抱きしめながら。
「おめでと!」マユが開口一番。
「よくやった!シャン!一番の戦果だ!」スウェシーナ。
「おめでとう。二人目もそろそろ準備する?」とは、レティシア。
「ひえええええ!」シャンは耳をピコピコさせながら、喜んだり、うろたえたり。
「ありがとう、シャン。僕たちの宝だよ。」ネルケが赤子を撫でる。
「うん。」
「そして、やっぱりミコッテなんだね。」
「そうにゃ。女の子。ミコッテだから・・男の子はなかなか授かれないんだにゃ。」
「名前は決めた?僕はミコッテ流の名前の付け方が分からないんだ。」
「あたいの好きにしていいなら・・「リル・ライアー」あたいと同じ鳥の名前を。」くたり。
「シャン?」夫が。
「疲れてんだ。そっとしてやれ。」魔女が。
「はい。」


数年後。
「こら、ターシャ!あんまり騒ぐな!」
「だって!ママのお友達のお子さんなんでしょ?」
「だからってはしゃぎすぎない。いい?学校の入学式なんだから。あんただって入学・・って、編入だったか・・。」
「べー!だ!」
「ったく、誰に似たんだか・・・あ(母さんか・・)」
「お!来たよ!ママ!」
振り返るマユ。
「シャン!それに、リルちゃん!」
オレンジ色の髪のミコッテと手を引かれて、おずおずと淡いオレンジの髪の少女。
「はい、ちゃんとあいさつにゃ?」シャンが。
「こんにちわ・・にゃ・・・」
「こんにちはー!あたしは、アナスタシア。ターシャでいいよ。仲良くしようね!」
「シャン、久しぶり。アリティア私設学校、入学おめでとう。」
「ううん、こちらこそにゃ。それにターシャちゃん、編入してすぐ首席とったそうだにゃ。さすがにゃ。」
「コイツは単にヤンチャなだけ。」
「マユちゃんがそれ言うかにゃ?」
あはは。笑い合う。


さらに数年後。
「リル!回復術式、怠るなよ!」黒魔道士の女性に。
「はいにゃ!ターシャさん!」ミコッテの幻術士。
「はあ、私すっかり肉体派よね。」敵に蹴りを叩き込むヒューランの女性。
(この女の子達、すげえ・・)なんてタンク(盾)をしている男性が。
「まだまだよ。もっと凄いの見れるから。」
え?
「・・・・・・・・・・・」
無言になった女性、何をと思っていたのだが。
空中に小さな火球が、3つ。
敵に瞬間転移して、内側から吹き飛ばす。
「ターシャ、フレア3連発、無言構成って凄すぎない?」
「こんなの、できて当然よ。今度構成教えてあげる。」
「多分、ムリ。」
「すごいですにゃ。」
(なんだ、こいつら・・)偶然出会った傭兵の男はあっけに取られ・・・

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