847セブンス。妖刀 弐

ん・・・・
長めの黒髪が枕に流れている。
「ここは?」
小川のせせらぎが聞こえている。
寝台から身を起こし、自らの格好を見る。
普段着ていたものではなく、寝着に着替えていたようだ。
それも、自分のものではなく・・・
「どういう事?」
夕鶴は、昨夜自分がどうなってしまったのか、記憶をたぐり寄せる。
「!」
そうだ。
自分は無意識のうちに人を殺めていた辻斬りだった。
そして、それを止めてくれた親友の姉の家に。
「なんてことを・・・」涙が溢れてくる。
そこに黒髪の美女がやってきた。
「起きた?」
「・・・・・・はい。」
「ま、しばらくは慚愧の念に囚われるだろうけど。」
「・・・・」
「あれは、呪いの一種だ、気にしないほうがいい。」
「・・・・・ありがとうございます。」
「それとな。」
「はい?」
「この家はなあ、過去に「天魔の魔女」と呼ばれた、いけ好かない女の家でな。」
「はあ?」
「あっちこっちに細工がしてある。なので、紐とかあっても勝手に引っ張ったりするなよ?」
「え?」
「とりあえず、玄関だけは気をつけろ。外から戻った時に横から丸太が降ってくる」
「は?」
「まあ、基本的にこっちが操作するんだが、留守の時のために勝手に落てくるようにできるからな。私が留守の時に戻ってきた時は、特に気をつけろ。」
「えええ!?」
「丸太は右から落ちてくる。そんで振り子の要領で避ければ左から。なのですぐに家に入れ。ドアは内開きだから、そのまま押し込んで入ればいい。
私がいれば、事前にノックをすればトラップをしないようにする。符丁はそうだな。ココン コン コン だな。」
「どんな家なんですか?」
「ちなみにお前が寝てる寝台だが、これもトラップでな。私が今立っている一歩先に落とし穴が仕込まれている。
寝台の下にダミーの寝台もあるが、のぞくなよ?落ちるぞ?」
「はぁ?」
「まあ、覗いてみたが死ぬようなものじゃない。不埒者を捕縛する程度のものだけどね。」
「え?じゃあ、黒雪さんは何処で寝てるんです?」
「私はまあ、言ってもいいか。お互い世間様には顔向けできない立ち位置だしね。」指を天井に向ける。
「上、だ。」
「な、何を?」夕鶴の顔がこわばる。
「暗殺、だよ。でもま、今のところ「死人」として生活してるから。もう汚れ仕事は来ないけどね。おかげで悠々自適な生活を堪能してるわけだ。」
「そんな・・・・じゃあ、わたしは・・・・」
「お前は、辻斬りの殺人鬼、として追われることになる。まあ、正体はまだ掴めてないだろうから、ほとぼりが覚めたら白雪に挨拶だけして帰れ。
この国の警護部隊、鬼哭隊はかなり優秀だ。足取りでバレる前に逃げろ。」
「そんな!」
「魔女に連絡はしてある。3日後、逃がす算段がついた。それと・・・あの刀。何処で?」
「え?一文字?あれ?何処に?」
「叩き折った。」
「へ?」
「あれは妖刀だ。人を殺めすぎて、呪いに囚われた、な。」
「・・・・あれは・・・国で・・なんだっけか・・・露店で買い物をしていたら、つい目について。綺麗な刀だな、って思ってたら、気がついたら買っていて・・・」
「妖刀ならでは、か。」
「それで、枕元に置いていたら、次の日目が覚めたら、足が凄く汚れていて。そんな事が続いて、おかしいな、って・・・・」
「女ばっかり斬っていたらしいな。多分、思うにというか、魔女の話だが。白雪を探していたんじゃ?と、な。」
「そ。そんな?じゃあ、わたし、白雪を斬ろうと?」
「まあ、あいつもそれなりに腕が立つからな。そうそう斬られはせん。」
「そう・・・・。」
「まあ、しばらくはメシくらい作ってもらうか。自炊も飽きてきた。」
「はい。ありがとうございます。」

(しばらくミッターとの逢瀬はむずかしいな・・・)

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