838セブンス。ある青年達の一日(の裏側?

う。
言ってしまったはいいのだが。
ある意味、やらかしたのか?
男性二人に、それも初対面、ではないが・・・手料理を振舞う、などと言いだしてしまった。
相棒の女性、エレディタは何やらニヤニヤしている。
ミーランは包丁を握るも、落ち着かない。
指に怪我くらいするかも?なんて。
「うわあ・・・。」
やっちゃったかも?

そもそも、ブレスレットを使ってPTを組み上げるシステム、コンテンツ・ファインダーなる「召喚術式」の応用で知り合った、の前に知り合ってしまって。
そこに、たまたま、その彼達が。
言う人が言えば、「運命の出会い」などと言うのだろう。
ミーランは動悸に近い、心の臓がバクバクしているのを認識・・・・
何故に「あんな事を言った」のか。
祝勝会、まではいい。どこのPTでもあることだ。
だが、手料理を振舞う、となれば・・・
あの時は、イキオイで言った、と、自分で言い訳をする。でも・・・・
「ミー、オーブン、温度上がったで。」エリから声がかかり。
「あ。うん。生地はできてるから。もう入れておいて。」
「うち、料理できひんの知ってるやろ?」とツッコミが。
「あ。そうだった。ちょっと待って。すぐに。」伸ばした生地をバットに乗せてオーブンに入れて、カウントを。小さめの時計で時間を確かめる。
まず、生地を焼き上げ、クリームを用意して、切り分けたフルーツを乗せて、チョコレートを砕いたものをまぶして、もう一度焼き上げる。
コレが今回のフルーツピザなのだが。
手順は間違ってはいない、が。
「うわ・・・大丈夫かなあ・・・?」少し不安。
宿は変わらず、溺れた海豚亭の上なのだが、ワンランク上の部屋を借りて、調理をしている。
寝泊りだけの部屋ではなく、キッチンやバスがあるので少し割高、しかもリビングもあるのでかなりゼイタクとは言える。
フルーツを切り分け終わり、クリームの味も確認、チョコも砕いておいた。後は生地が焼き上がり、仕上げるだけだ。
ミーランは心の中でとりあえずガッツポーズ。(うん、大丈夫!)

その頃、リビングで香茶を飲んでいた二人のミコッテの青年達。
「へー、リガルドさん、料理できるの?」桃色の髪のエレン。
「まあ、ね。」こちらも桃色の髪のリガルド。
「楽しみだね。何か作ってくれるの?」
「あー、まあ、時間があれば。かな。」
「今は女の子が作ってくれるデザートが楽しみだね。」
「そうだな。(ふうん、料理できるのか、彼女。)」
ミコッテの青年達は、なんとなく打ち解けてきたようだ。


「う。」(大丈夫、かなあ・・・)焼きあがったピザをナイフで切り分ける。
「なんや?焦げたんか?」相棒の声に。
「いや!大丈夫!」
「そういえば、うちの時よりフルーツ多いやんか?」ニヤ。
「あ!ちがうの!そういうのじゃないってば!フルーツあんなに買いだめしちゃって、ダメになったらもったいないでしょ?だから!」
「うちは3食フルーツでもかまわへんで?」
「いや、その!とりあえずできたから!お茶の準備しといてよ!」
「もうポットは出てるやん?何アセってんのや?」
「ち!ちがっ!」
「ほんまに、かわいいなあ、ミーは。」
「ちょっと!どういう意味!?」
「まんま、の意味や。さ。行こ。」


「これは・・・美味しいね。」真紅のローブの青年。
「うん!おいしいよ!」白魔道士の青年。
「ミー、前のより美味しいやんか。頑張り具合が違うわ。」相棒。
「え。」と「その。」・・・「ありがとう、です。」頬が赤くなるのが分かる。
ミーランは普段着に着替えてから、なのでそこそこの時間を待たせた甲斐がある、と自分で納得する。
「じゃあ、これを食べたら下の酒場でワイン、いや、ラムか。一杯やりにいこう。どう?」リガルドの提案に、「うん!いいね!ラム、大好きになったんだ!」エレンが声を弾ませる。
「ミー?どうすんの?」エレディタが振ってくる。
「あ。うん、そうね、おやつだけじゃ物足らないよね・・・。」
「いや、このピザは至高の逸品だったよ。そのための祝杯だよ?」真紅の召喚士がにっこり。
「あ、その。」(えええええ!?)パニック寸前な剣聖。
「まあ、ええやんか。行こうや。」相棒の一声。
(あ、その・・・だったら・・普段着じゃなくってもっとお洒落な服が・・・あったかな?)
実家が焼け落ちてしまい、お気に入りだった衣類も少なくて・・・
「大丈夫だよ。そのままで。」
(うわ?心読まれたかも!?)「あ、はい!」完全にパニックになる。
(可愛いね、こういう表情も。)リガルドはにっこりと。「じゃあ、行こうか。片付けができないのが残念だけど。ごちそうさま。」
「ごちそーさまー!おいしかったー!」「ミー、まあ、片付けくらい明日でもいいやん?」「うん・・。」

4人は酒場に・・・

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