785セブンス。嵐への予感。

砂の都、ウルダハを闊歩する若者達。
街中で、名前を呼ばれたような・・・振り向いたが、相棒であるところの黒髪の女性エリ、ことエレディタの顔が。
視線に気づいたのか?彼女は他のメンバーと話をしていたらしく、いきなり話を振られたと思ったのだろう。こっちを不思議そうに。
「あ、ううん。なんか名前を呼ばれた気がして。」エレゼンの女騎士、ミーランは話を濁すような感じで振り向いた先を元に、先ほどの話を聞く。
「これから俺、いや。僕達はザナラーンのキャンプ・ドライボーンに向かうわけですが・・」
銀髪の青年サンクレッドの言葉がイマイチ入りきらない。さっき聞こえた声は久しぶりな・・
「ミー?」と相棒からも声がかかる。彼女は横手にいるハイランダー姉妹と話に興じていたらしいのだが、さっきの自分の態度が妙に思えたのか、注意を向けていたらしい。
確かに、上の空ではあったかもしれないが。
「大丈夫、よ。エリ。」「ほうか。」
姉妹とまた3人で会話が進んでいるみたいだ。どうもハイランダー繋がりで、意外と(失礼)打ち解けているみたいだ。

「ミーランさん?」青年。こちらはエレゼンで、かつてコロセウムでも活躍した漆黒の。
「は、ひゃい!?」
間抜けな返事をしてしまい、内心オドオドする。
なんせ、そろそろ子供の一人もいてもいい年頃なのに、マトモに男性と会話する事すら稀なのだ。
「オレ達は現地で別行動になる、って話だよ?聞いてたか?」「師匠、意外とやさしいですぅ。」
弟子?のララフェルの女の子が・・・
「ああああ。ハイ!とっても!」
見当違いの答えに師弟は笑いながら。「了解。」「ですぅ。」

ミーランは内心(またやっちゃった・・・)と、こめかみを押さえる。


しばらくすると、チョコボ屋が見えてきて
「それでは、チョコボをレンタルしていきます。キャンプ・ドライボーンですからね。ミーランさん?いいです?」とサンクレッドに念押しまでされた。
「・・・」(はい)と返事したのだが、声は届いただろうか・・・・


見た目は光の加減で赤にもオレンジ色にも映える髪。今でこそ短めにしてしまったが。
白い肌は瑞々しい。いかにもお嬢様と言われそうだが、生まれは一般家庭だ。
小さなおとがいと、澄んだ瞳は誰にも好感を抱かせるだろう。そして、性格も。
正義感が強く、間違っている事には堂々とした態度で。そして、優しさも。
銀色に煌きく鎖鎧と、佩剣「ジュワユース」そして、最近手に入れた盾。魔法の火を内に秘め、短剣がついている。
以前の盾は方形だったが、この盾は丸く、あしらう際にも攻撃にも使えるという。
師であるルガディンからの贈り物。「手を切っちゃったらどうしよう?」と情けない声をあげたものだが。
ともかく、ミーランとはそんな容姿が騎士としてとても似合っている、と。皆は内心思っている。


「では、出発です!」サンクレッドの声に。「応!」と
チョコボ達は一斉にウルダハを発つ。

「なあ、アンタ。」黒い「亡霊」とあだ名されるエレゼン。その横、というか後ろにしがみつくララフェルの少女?
「なんだい?」応える青年。
「なんで二手に分けた?」
「それは、役割が違うから、ですね。」
揺れ、地表を削るように走るチョコボの騎乗中に出来る会話、というにはいささか難しいがふたりは意に介さず。
「貴方のその武器。」
「亡霊」の亡霊たる所以か。
四角く、黒い箱にも見える。
だが、一度両手にはめれば・・・
そして。
「銃。」
ホルスターと呼ばれる革の袋に収まったそれは、知らない者が見ればなんだかわかるまい。いいところ水筒ぐらいか。
が、その威力は先だっての「コロセウム」で拝見した。
「今回は裏方に回りましょう。彼女達の動き次第で、我々の動き方も・・。」
「ふうん。あっちにはミコッテのお嬢さんが居ないからなあ。ま、いっか。」
「師匠!何言ってるか聞こえませんですぅ!!!」
「いい話さ。」腰にしがみついている弟子に聞こえるように。
「てぃんく、期待してますぅ!」


「なあ、お姉ちゃん。」長身の女性。
「なんや?」小柄な姉。
「うちら、出番としてはなあ?」
「あるやろ。不滅隊とかいう連中がしっかりしとったらええねんけどな。」
「ない、って?」
「ああいう連中は、大体どっか抜けてるねん。おもろいくらいにな。」
「へー。んじゃまあ。暴れるって事でええねんな?」背中の斧の重みを確かめ。
「そらそやろ。」杖に手を。
姉妹が物騒な会話を、並走するチョコボの上で。


「ミー!」黒髪の女性。
「なに!?エリ!」応える女性の髪はオレンジ色に萌えている。
「気を抜きなやっ!」
「え?なに?」
「いつも通りにしとったらええ!」
「わかった!」

(そうやな。ミーはいつも通りでええ。)エレディタは、それ以上言わずにチョコボに身を任せる。

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