783セブンス。幕間(sometime

ウィステリアはウルダハの街を一人、散策して・・
少しばかりの不安と期待を込め。

彼女は、今年で13になるが、すでに将来については不安はない。
名高きアルダネス教団の学院にて、常に主席を誇ってきたのだ。この年にして。
アイツに出会うまでは。

その名の由来ともなった、薄い紫色の髪は、今はペイルグリーンに染めて。
なにせ・・・アイツ。
「主席」を横から平然とかっさらっていったあの「魔女」
彼女の淡いグレーの髪と色が似ているからといって、後ろ姿で間違われてしまうなんて。
母の反対を振り切って、染めた色合いは自分では気に入っている。
友達連中は「負けたんじゃない?」「似合ってるよ。」と賛否両論だ。
ああ。そう。
負けたつもりはない。
ただ、似てる、と言われたくはない・・・けど。「負けじゃないよね・・」

必死に勉強して、ここまで来たのだ。「ウィッチブラッド(魔女の血統)」だからといって、年下の、さらには生意気極まりない・・・アナスタシアになんて!

秀才として認められているはずの彼女の、唯一の欠点とも言える負けず嫌いが一番出てしまう結果には・・。


そして。

「お嬢ちゃん、お家の帰り道はわかりますか~?」と。
物思いにふけりながら歩いていたせいか、こんなチンピラが・・
3人の男達は、逃げ道を作らせないように囲みにかかる。

そういえば。
先日の安息日に、アナスタシアがチンピラに同じく囲まれ・・・母である「魔女の後継」が一網打尽にしたとか。

自分ならば。
やれる。

ウィステリアは母の顔を思い出し、深層の令嬢であった母では到底そんな真似はできないだろう、とも。
見た目は・・・身長こそ、それなりにあるものの。
逆に、長い目の四肢は華奢とも取れる。
彫りは浅いが、整った顔立ちは上品さを。
そして。
か細い木の枝で作られた杖を、もどかしく取り出そうとして。
「ナニしてんだ?お嬢ちゃん?」と男に杖を蹴り落とされる。

(かかった。)

エサに釣られた男は、足をそのまま掴まれ転ばされる。
倒れた時に受身を取れなかった、いや、取らさなかった転ばせ方の後、即頭部に蹴りを。
少女は長い髪を揺るがすことなく、次の獲物に取り掛かる。
「こ!の!」と、男が呆気に取られているのを尻目に、もう一人の方に。
二人目の男はナイフを出そうとしていたようだが、片手が背後にある上、上半身がガラ空き。
軽く頭で胸をこついてやる。
まさかの事に、ろくに反応できない。
「ばーか。」と、足の甲を踏んでやる。
いきなりの重心の変化に対応できず、そのままひっくり返る男。

二人も仲間を倒され、少女に・・・
「てんめえ!」
悪態に。
「ホライズンの名をナメてんじゃないわ。」
男の顔が青ざめる。
伝説級の暗殺者・・でも・・・
「このガキ!騙ってんじゃねえ!」殴りかかる。
あの暗殺者はララフェルだ、とかエレゼンだとか。ただ、目の前の少女はヒューランなのだ。嘘に違いない。

が・・
「残念。ひいお祖父様は籍だけお入れになったの。その術を受け継ぐ者にだけ、ホライズンを名乗っていいって。」
男の拳を右手ではじき、左手で脇下に手刀を入れる。
一瞬の痺れを伴う攻撃に付け加えて、相手の利き腕を背後に回すように抑え、締め上げる。
「終了。」

少女はさして嬉しそうでもなく。
ごき、っと関節だけ外して不滅隊を呼び出す・・・。

眼光鋭く。
「次、来れば・・・殺すのよな。」
一言だけ。



ふう。脅し文句が利けばいいんだけど。
震えていたヒザをなだめつつ、露店でお菓子でも・・
ウィステリアは、学友であるところの「魔女」もこういうのには慣れてるのかしら?なんて。

「まあ、いいわ・・。」



(ハク姉ちゃん・・・綺麗だな・・・)
少年は・・・・

・・・・つづく。

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