779セブンス。出発点との邂逅・・・か?はまだ終わらない。

「なンだ?」
朝焼けに近い明かりの下。
目の前に。いや。正確には「イージスの眼」の前。
「ターゲット」されたはずの盗賊団の女。パワ、とか言ったか。
だが・・・記されているはずの「ターゲット」は無い。
黒髪が風に揺れる。

強弓を構えた彼女は、相手の死角、もっと言えば、その前にたむろしている弓術士達、隠れている部下全てを見渡す位置取りなのだが。

目眩がする。
しかし・・。
「仕事・・・だかラね。」体を立て直す。そして、傍らには・・・・
「フネラーレ?いい?絶対殺したら駄目よ?」と。
グレイの髪の魔女が。
「チ・・。」
「今は・・・問題があるにしても、彼女達にも事情はあるわ。それを無下にすることは、あたしの目の前では許さない。」
「・・・どうセ、審議でブっ殺されるンだろ?」
「罪は償わせる。それでチャラにさせてみせる。」
「はン・・。」
「じゃあ、フネラーレ。一流の狙撃手としての腕前を見せてもらいましょうか。」



「パワ!」
エレゼンの青年。
「大人しく捕まってもらおう!そして、ルシアヌの下で弁明する機会をくれてやるっ!」
弓を。

「たかが、二人増えたくらいで。調子のりすぎ。」振り返り「お前たち。」と。
ぞろりと。
弓兵が3人、槍兵が3人、そして、術士だろうか。こっそりと見え隠れする。
「この!「白面」のパワ・ムジューク様が早々に捕まるワケないじゃないか。ルシアヌには!この「白面」の借りがある。
この傷が癒えるためには、アイツのクビが必要だ。お前ごとき、ものの数ではないと先刻おしえてやったのにな。」
女頭領が吠える。

「抜かせ!」と矢を放つ。
開戦の火蓋が切られた。


「えー。」
と。エフェメラは、困惑顔で・・・。だいたい、人に矢を浴びせるような真似はしたことがない。
隣のアリアポーは、弓を巧みに使い「まずは、回復させないように術士から!」と声をかける。
「そ、そんなあ。ワタシ!」と、声と弓は震えるばかり。
「アリアポー!そんな不甲斐ない奴など放っておけっ!」と、青年の声。
だが、賊達の攻撃はそれで止むわけでもない。
エフェメラは。言われて、やっぱり悔しいので・・「リーナさん!」と弓を構え・・矢を放つ。
ろくに狙いを定めたわけでもないのだが・・・「ぐ!」と、術式を放とうとしていたミコッテの女性が杖を手放す。霧散する構成・・・
「やった!?」
心の中で、いや、声を大にして喝采を自分に。


「チェック・シックス。(後ろにも目をつけろ)だナ。」
矢を放った黒髪の美女は、極力相手を無力化するためにだけ、細めの矢を。
「さすがね、フネラーレ。」と魔女の賞賛。
「ハぁ。僕としてハ・・。ね?」
「その件で、ひとつ。」
「ア?」
「ほら、もう一件。と。あっちのコにも。」
矢を放つ。槍を持った賊の娘の足に。こけるように姿勢を崩すところに弓術士の矢が中る。
「魔女。アンタがヤれヨ?」もう一本。
「あたしが出張れば・・・ねえ。造作もないのかもだけど・・。」
「あンだ?」
「いろんな事情が。ね。」
「あ?」
チェック・シックス。か。よく言ったものだ・・・・・・・・・
上下左右・・前。そして、後ろ。敵を警戒する時の。ダイスの「目」は、「1」の後ろに必ず「6」がある。最大の脅威。
怪訝な顔の葬儀屋を尻目に、天魔の魔女レティシアは・・・。

そして、そろそろ・・・・


「パワ!大人しく降参するんだな!」青年が叫ぶ。
周りにいた、仮面をつけたミコッテの少女達は、泉に腰をつけ矢傷に耐えている。
「そうよ!マスターとの因縁は聞いた事があるわ!ちゃんと話をつけてもらいます!」
・・・・「そ、そうですね・・・。」と、成り行き上、この場に来てしまったエフェメラ。

「ふ・・。くだらんっ!済んだ事などっ!だが、落とし前だけはつける!」
名のある弓だろう。丁寧に磨かれた弓の弦がピンと張られ、矢が。

応えて、青年の長弓にも。

ぎゅ、っと。エフェメラは目をつむり、事の経緯を見守ることも難しい。

だが。
「あ。」

一言。
それで、全てが終わったようだ。
目を開ければ、視界には矢を放つ姿勢のまま崩れるように、そして、矢は主を無くしたように。
泉に、その身を投げる。

「シルヴェル!」
ミコッテの女性、レイ・アリアポーがエレゼンの青年に駆け寄る。


青年は黙ったまま、矢を放った弓を意味なく見ていた。
「シルヴェル?」と。ミコッテの女性は怪我はないかと心配げに・・・
答える声は、空虚だった・・
「勝った・・・?」


ざわざわと、
朝になり、明るい森の一角。
「こちらに、賊の一団を捕縛したと通報があった。」とは、鬼哭隊、隊長。
「え?」「だれが・・・?」「へ?」
レイ・アリアポー、シルヴェル、エフェメラと。物の怪に尻尾を(エレゼンには無いが)掴まれたかのように。

「捕縛する。ついては後に審議にかける。異論ないな?」と隊長が。

肯定するしかなく・・・・

連中を見送ることしか・・・・

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