773セブンス。一人の・・・として。

潮風に。
黒髪がなぶられる。
懐かしい気持ちに揺さぶられ。
蒼い。蒼穹の空と、紺碧の海に見とれる。

「僕の・・」

白い薄絹をまとった少女、いや、女性。か。
流される前髪をなでつけるように、左目を隠す。
「なんとなく・・・か。」独り言を、後ろから抱きしめられ、聞かれたか。と照れる。

そんな・・。優しくしないで。
背後から回された腕を・・優しく振りほどき、照れ笑い。

「僕は・・・。」
振り向き、愛しい相手の頬をつねる。
エレゼンの男性は「知ってる。」と、微笑み。


港町、リムサ・ロミンサと、森林国家、グリダニアの二重の密偵。彼女の素性。
「今日、帰らないと。」
普段の彼女は、海賊あがりなせいか、訛りがきつい。特にグリダニアでは。
でも。
彼の前では、できるだけコモン(共通語)で喋れるように努力はしている。

太陽が昇りきる前の、この時間。リッラが一番好きな。でも・・グリダニアでは拝むことはできない。

愛用の弓を直しに、そして・・百鬼夜行の棟梁の彼。カルヴァランに逢いに。
「まったく。無粋だヨ。」拗ねる彼女に彼は抱擁を。

依頼。
彼女は、葬儀屋として暗殺を主体に仕事をしながら、情報も流している。
「フネラーレ」と聞けば、裏稼業なら当然知っているくらいの知名度だが、密偵とまではそうそう知られてはいないが・・・ニ国の間では、暗黙の了解として、処理をしている。
アスタリシア号から、彼女の出奔が決まった際に出来上がった事で、その主犯と言ってもいい彼は、その事を彼女に伝えていない・・・・

「で?」彼は優しく問う。
「ン・・スタッブ(暗殺)、いつもどおり、ね。僕じゃなくてもいいのに。」
「リッラ、だからこそ、なんだろ?」
「そうかも・・だけど。」
「じゃあ。」
「うン・・」

口づけを交わし、ベランダから部屋へ。




「キーファー?おイ?」いつもの口調。
そして「ああ、フネラーレ。帰国しましたか。」と、いつもの声。
パールのやり取りは、事務的というより、なんだかワガママお嬢様と、その召使いのやり取りのよう。
そして、大まか、というか、大体にして、その通りなので、笑えないどころか、たまに「キーさん、おもしろすぎる!」という野次まで飛んでくる始末で、どう考えても「暗殺」の話に取れない。
「今回の案件です。非常に単純ですが・・。パワ、というミコッテの頭領が率いる盗賊団の殲滅です。」
「鬼哭隊か、神勇隊にヤラせとけヨ。」
「残念ながら。神勇隊は今蛮族の問題・・蛮神対策で手一杯なんで。鬼哭隊も似たようなもので、カヌ・エ・センナ様の警護とか。
ぶっちゃけますと、フネラーレ。貴女が居ない間に問題はそれなりに貯まる、というか、のっぴきならない案件が出てきています。」
「新入りノ剣士は?」
「彼女は、今リムサに行っていますよ。こっちも外せないので。」
「ふうン。」パールから、不穏な空気を漂わせ。
「デ?全滅させればイイって?」
「それが・・。ややこしくってですねえ。」
「意味わかンないヨ?」
「これは・・貴女。フネラーレ。所属しているのが、神勇隊なのは当然ご存知でしょう?」
「アア。」
「その母体たる、弓術士ギルドの構成員のイザコザもありまして・・。」
「ハ?」
「生け捕りにしたい、らしいんです。」
「暗殺じゃなイだロ?」
「プライドが高いらしく・・自然と勝ったように・・見せかけて・・・欲しいんだそうで・・。」
「・・・」
「それができるのは、フネラーレ。貴女しかいないんですよ。わかるでしょう?」
「死ネ。」


「まったく・・僕をなンだと・・。」準備をし、出かける。


ま、そんなとこか・・・なんて、柄にもなく考えながら。

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